「パラサイト 半地下の家族」のネタバレ感想と考察【金持ちに寄生する貧乏人】

  • 2020年12月12日
  • 2021年10月19日
  • 映画
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本記事は、映画「パラサイト 半地下の家族」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

パラサイト 半地下の家族

2019年、ポン・ジュノ監督によって制作された、韓国のブラックコメディ作品

アジア映画の数々の賞を総ナメにした、人気作品となった。

上映時間は131分。

あらすじ

舞台は韓国、父、母、息子、娘の四人家族の「キム家」韓国の社会的カーストの象徴ともなる「半地下アパート」に住んでいた。

カビと便所コオロギに囲まれながら貧乏で薄暗い生活を送っていたが、長男ギウの友人ミニョクの提案により、ギウは高級住宅地に暮らす「パク家」での家庭教師として雇われることとなる…。

ここからキム家のパク家への「パラサイト(寄生)生活」始まることとなる…。

出演役者

本作の主人公は「キム家」の4人、一家の大黒柱、父のギテクを演じるのが「ソン・ガンホ」

韓国の中年の俳優でありながら、数々の韓国映画に出演している。

泥臭いブラック系の映画へのキャスティングが多く、本作の監督のポン・ジュノの他の作品にも出演している。

 

一家の息子、浪人生のギウを演じるのが「チェ・ウシク」

韓国系の顔立ちであるが、国籍はカナダの俳優。

登場する作品数はまだそう多くはないが、演技力の高さに絶大な定評が付く俳優である。

 

妻のチュンスクを演じるのが「チャン・ヘジン」

韓国の女優で、主に恋愛作品へのキャスティングが目立つ女優だろう。

本来であれば慣れないようなジャンルの作品への出演であるが、違和感を一切感じさせない演技力でキャラクターを演じてくれた。

 

キム一家の娘であるギジョンを演じるのが、「パク・ソダム」

今をときめく29歳の韓国の女優で、映画のみならずドラマや舞台などの数々の作品出演している実力派女優である。

また、韓国内でも数々の女優賞を受賞している。

ネタバレ感想と考察

韓国の現状を正面から皮肉った脚本。

起承転結がぶっ飛びすぎて物語の本筋を有耶無耶にしてしまうような展開が続くが、一貫して筋が通っているテーマ一つ存在している。

それは韓国の「格差社会」テーマとして描かれている事だ。

日本以上に貧富の差が激しい韓国では、これをテーマに描かれる作品は感じ得ることの無い勇気が必要だったはずだ。

そんな「映画のテーマ」から見ても、本作品では随所随所に貧富の差を描く演出組み込まれていたのだ。

主人公であるキム家の人間たちが住まう「半地下」の世界。

これは韓国で実際に存在するマンションである。

高いマンションの最下層、ギリギリ窓が出る部分に作られた一室、逆流を起こさないように上部に配置されたトイレ、東京における「ボロアパート」のような位置づけとして利用されている部屋だった。

またそれ以外にも、「貧困の差」を描く要素が無数に組み込まれている。

映画の撮り方もテーマに沿っていた。

半地下の部屋、高級住宅地、その地下室、キャラクターが物語を繰り広げる舞台として使われた大きな場所がこれらだろう。

本作品の大きなテーマ、「格差社会」を描くツールとして一番大きく描かれていたのが「物理的な高低差」であった。

半地下では臭くカビだらけ、雨が降れば汚水と一緒に水が家中になだれ込んでくる…

一方、高級住宅地では全てが安全に、平和に暮らせている。

そして高級住宅地の地下にも同じく「寄生(パラサイト)」した人間が住み着いている。

また、階段を真横に見た、高級住宅の広い部屋のシーンでは、上階、下階の高低差を使いながらテーマを体現していたようにも見える。

伏線の張り方が絶妙すぎる作品。

そんなテーマに関係しながら進む物語であるが、後半に進むにつれいくつもの伏線が貼られていたことに鑑賞者の皆さんは気がついただろうか?

アジア内で数々の賞を受賞した本作品、漏れなく「人気映画」の部類にカテゴライズされる作品であるが、そんな作品達に共通する項目として「伏線回収」が面白い作品というポイントがある。

本作でも期待を裏切らない伏線回収が行われるが、気を付けて鑑賞していても気が付かないような細かな伏線が、多く張られているところが見どころのひとつだろう。

本作の伏線の細さは初見では気が付かないような伏線も多数張られている。

パク家の息子ダソンが見た「おばけ」の正体は、パク家の家政婦ムングァンの夫グンセ。
・パクの「ムングァンは人の2倍食べる」という発言は、地下の夫に食事を与えていたため。
・家の前で小便をする酔っ払いに対して「大洪水だ!」と投げかける言葉は、後の大洪水への伏線。
・キム家とパク家の人間が対話する時、必ず窓枠であったり柱であったりが、「境界線」となるカメラワークとなっている。
これは貧富の「格差社会」を表す演出。
・要所要所に「便所コオロギ」の表現が出てくるが、誰もいないパク家で飲み明かした際、「ここで急にパク社長が帰ってきたら ゴキブリみたいにササーっと
 隠れるんだろう」というセリフがあるが、ギテクがこれ通りの地下生活を送るようになる。
・要所要所でギテクの「半地下の匂い」を指摘するシーンがあるが、物語の終盤、グンセ(地下に住む家政婦の夫)の遺体に鼻をつまんだドンイクを衝動的に殺害する。
・グンセが地下暮らしとなった要因として、「台湾カステラ」のお店を失敗したことを語るが、他ならないギテクも、台湾カステラ店の経営を失敗していた。

※台湾カステラとは2016年に韓国で大ブームとなったスイーツ。日本のタピオカブームの比にならない規模となり、各国中にカステラ店が乱立する騒ぎとなった。
しかし、化学添加物の混入の指摘等により、ブームは一瞬で去ってしまうこととなった。リアルでも同じく破産を余儀なくされた人は多い。
・ダソンの「自画像」として紹介された絵は、実は地下から出てきたギテクを描いたもの。
また、映画序盤で血だらけの男性が包丁を持って芝生に立つ絵も登場する。これはラストでの展開を示唆している。

・パク家の息子であるダソンは「インディアン」にハマっていたが、これは、もともとアメリカ大陸に住んでいたインディアンが、ヨーロッパから来た白人たちに土地を奪われた歴史があり、「侵略される者」の、象徴となっている。
侵略されるも者の定義においては、パク家でもキム家でも当てはまることから、鑑賞者の想像に身を委ねたカラクリであると考える。
・また、「ボーイスカウト」にてモールス信号を覚えたダソンは、センサー照明がモールス信号であることに気が付くが、一切の興味は無し。
一方で地下にいるギテクが送ったモールス信号は、外にいるギウに届くこととなる。
同じ階層に住む者だからこそ伝わった描写となっている。
・ドンイクを刺殺した後、外に逃げるふりをして車庫へと逃げていくが、これができたのは「監視カメラ」が起動していなかったから。
ムングァンがパク家を尋ねた際に、「監視カメラを切っておいた」との発言がある。

これ以外にもメッセージ性のある描写は多く、大きな本筋の中にも細かな伏線を張っては回収を繰り返していく面白さが沢山詰まっていた。




謎の石の正体とは…?

物語を一見してみて、最後まで疑問として残ったのが、友人のミニョクから貰った山水景石の存在だろう。

物語の序盤から後半まで登場するこの石であるが、翻弄されるキム家の環境を描くツールとして機能していた。

まずは石を貰った段階で、キム家の運命が動き出し、「大切なもの」としての石の立ち位置がある。

そして中盤、計画の狂い始めなどによって次第に「重荷」となってくる石の存在、そんな中雨が降り注ぎ、なんと石が浮いてくる。

石は「空洞」だったのだ。これは幸せが「偽物」であることを暗示していると考える。

その後も「石がへばりつく」と語るギウだが、物語終盤でギウは不幸にも石を落としてギテクに存在がバレ、そのことがきっかけで大惨事となる。

ギウは石で頭を殴られることとなるが、死ぬことはなかった。

なぜなら、石は「空洞」であるから…。

石の存在に助けられつつ、貶められつつ、キム家を翻弄する象徴とされた石の存在であるが、パッケージ左下に、静かに置いてあるのも目視できる。

パッケージに込められたメッセージを紐解く。

本作のパッケージ、出演役者の数々が並んでいるパッケージとなるが、色々な情報がこのパッケージには隠されている。

まず気になるのが、左下の足。

キム家とパク家の人間以外にも、他の人間が登場することを示唆している。

そして左下の山水景石や、奥の壁のダソンの絵など、本作のキーアイテムとなる物が隠されている。

また、パク家の人間が皆、靴を履いているのに対して、キム家の人間は皆、裸足であり、左下に見える足も漏れなく裸足である。格差社会の構図を表した表現だろう。

更に、パク家を取り囲むように立っているキム家の面々まさにキム家への「寄生」を立ち位置でも演出しているのが面白い。

こうした細かすぎる演出の数々が、大ヒットの秘訣となっていたのだ。