「夜は短し歩けよ乙女」
2017年4月、湯浅政明監督により世に放たれたアニメーション映画。
「サイエンスSARU」と「ナカメの会」2つの制作会社も携わった。
一人称の呼び方が特殊な形で、主人公は「先輩」、
そしてヒロインが「黒髪の乙女」と呼ばれる恋愛アニメーション映画である。
今作品の原作は2006年に「森見登美彦」により出版された同名小説の映画版である。
上映時間は93分。
あらすじ
今作の主人公は2人、大学に通う「先輩」と、
同じ大学の後輩である「黒髪の乙女」である。
2人は共通の知り合いの結婚式に参加していた。
先輩は好きである彼女に振り向いてもらうべく、
「ナカメ作戦(なるべく彼女の目に止まる)」を日々実行していたが、
想いに気がついてもらえない現状に苦しんでいた。
そんな2人は結婚式の後、一年にも感じられるそれぞれの奇妙な一夜を過ごす。
「先輩」の想いは「黒髪の乙女」に伝えることができるのか?
出演キャラクター
大学生の男、「先輩」(cv.星野源)
今作のヒロイン「黒髪の乙女」(cv.花澤香菜)
「先輩」の学友でもある「学園祭事務局長」(cv.神谷浩史)
「天狗」と自称する謎の人物「樋口師匠」(cv.中井和哉)
樋口師匠と行動を共にする「羽貫さん」(cv.甲斐田裕子)
その他、多数の登場人物も登場し、
「ロバート秋山」や「ロッチ」などの芸人も声優に参加している。
見どころ①「森見登美彦の人気を爆発させた不朽の名作が映画化」
今映画の原作である同名小説は、約10年前の2006年に書かれたものであるが、
当初から「森見登美彦」の名を日本中に認知させるきっかけとなるほどに大ヒットした。
森見登美彦の執筆する世界観として、「京大生」や「鴨川」「古本市」など、
「京都」から着想を得る作品が多いが、
それぞれの小説で出てくる、環境、場所、組織、登場人物にも同じものが使われることが多い。
今作で出てくるキャラクターも彼の過去作品に何度も登場しているキャラクターが多く、
京大と思わしき場所での「学園祭」や、
「納涼古本市」など、実際の京都の行事も数多く登場する。
そんな「森見登美彦ワールド」を全面に押し出した今作、森見登美彦の別の作品を知っているからこその楽しみ方もできる作品である。
見どころ②「キーワードはお酒と古本!?京都の町で呑み歩く一夜の物語」
幻の名酒「偽電気ブラン」
これを追い求めるチャプターもあるほど、「お酒」は重要なキーワードとなっていて、
ここまで「お酒」にフォーカスした作品はとても珍しい。
ストーリーの中、結婚式での酒の席、その後の居酒屋、BAR、
色々な所で色々なお酒を呑み歩く「黒髪の乙女」だが、
その描写がとても魅力的且つ美味しそうに見えてしまうのも本作の見どころである。
また「夜は短し歩けよ乙女」の聖地となるBARも、実際の京都には存在していて、
そこで「偽電気ブラン」も商品として味わうことができる。
更に存在するのはBARだけに飽き足らず、
作中の納涼古本市も実在する。
そんな古本市のシーンでは、知る人ぞ知る名作から、マニアックな書物まで、
様々な書物の描写が細かく描かれている。
読書好きな人にとっても、この映画は興味深い作品となるだろう。
見どころ③「原作を読んでいても楽しめる脚本構成」
今作の映画、原作とは大きな違いがある。
原作小説では「一年間」で起こる出来事が、
小説では「一晩」で纏められているのだ。
小説版「夜は短し歩けよ乙女」では、春夏秋冬による四篇構成で、数々の出来事が起きるが、
映画版ではなんとたった一晩の出来事である。
一見かなりの早足ストーリーに感じられそうではあるが、そんな違和感を感じさせないのも、
湯浅政明監督の技量の賜物であろう。
小説、映画、それぞれの良さがあり、どちらも楽しめる。
そして、どちらかを読むか観るかした後も、
「比較」として楽しんだり、「別作品」として楽しんだり、様々な楽しみ方ができる作品となるだろう。
配信コンテンツ
そんな「夜は短し歩けよ乙女」は、今現在、
Netflix、等で配信されている。
そして、「夜は短し歩けよ乙女」の前身となる作品、
連続TVアニメとして放送していた、「四畳半神話大系」というアニメも存在する。
「お酒」と「古本」と「京都」の恋愛ストーリー。
皆さんも一度、お酒を片手に視聴してみてはいかがだろうか。