廃墟探訪日記【Part.1】廃墟アミューズメント施設~後編~

前回のあらすじ

廃墟探訪に赴いた僕。

その西部チックな施設でゆっくりと練り歩きながら酔いしれ、舌鼓を打っていた。

ぼくは施設の「ゲームコーナー」に差し掛かる。

その無人と化したゲームコーナーを抜けると、目の前には衝撃の光景が広がっていた。

人形だらけの屋敷

同じゲームコーナー内に待ち受けていたもの、それはおびただしい数の「人形」であった。

 

ステージにお邪魔してみる。

これで僕も「登場人物」の一人だ。

 

恐らくであるがこれは「射的場」

台の向こう側からこれらの人形を打ち抜き、得点を競う。

壁に貼り付けられたカウボーイがニヒルな笑みを浮かべている。

 

いくら人形とは言え、「人の形をしたもの」を打ち抜く射撃場は、日本には多くは無いだろう。

 

明らかに悪者そうな人相の人物もいれば、「これを打ち抜いてプラス得点になるのか?」と、疑問を抱くような老婆や少女もいる。

悪役の鑑のようなおじいさんの足元には、ウイスキーのビンが転がっている。

人の手によるものだとしても、これは違和感がない。

 

打ち抜いてしまえば確実にゲームオーバーになりそうな老婆。

 

この手のゲームのイメージであるが、一瞬で「善人」と「悪人」の判断する道徳的能力も競われている気がする。

「加点か減点か?」わからないトランペット吹きが、高らかに楽器を吹き鳴らす。

 

どこかの大道芸人かもわからないトリックを披露する老婆は、虚無を前にしても笑顔を忘れていない。

 

若き探索者によって「首吊りの刑」に処された男性も、笑顔を忘れない。

…いや、これは苦悶の表情だろうか?

 

とにかく、数々の人形がぼくの前でおどけてみせていた。

 

唯一の無表情を貫くのは彼女だけ。

それでも凛と立ち続けるだけ、今までも、これからも。

 

若き探索者たちは最後にぼく達に「メッセージ」を残した。

「マルボロはうまい」

そんなことはわかっている。

コンセプト迷子のアトラクション

その後に訪れたのは、「トリックアート」のような建物。

傾く地面と建物で、ぼくは異世界感を感じていた。

 

奥に進むと「人為的配置」であろうイスが置いてある。

上部からの光で、舞い上がる埃が照らされていた。

 

電灯に置かれた「手」にはビビらない。

ぼくは訓練されている。

 

更に進むと、動物の剥製が置かれるビリヤード台。

コンセプトが迷子になりつつあるアトラクションの全盛期が気になってしょうがなかった。




タワーオブテラー

暫く進むと、今度はまたまた巨大な施設が現れる。

まるでディズニーランドのタワーオブテラーのようである。

 

早速ここに侵入してみる。

入ってまず出迎えてくれたのが、この人形の頭

侵入者を見つめるその顔には不敵な笑みが宿る。

 

更に進むと、中には大量のぬいぐるみが放置されていた。

彼らもまた、主の帰りを待つ者だったのだ。

 

綿が散乱する広場の中央に、やさぐれたぬいぐるみが一匹。

ぬいぐるみが自殺を試みる場合、このような方法なのだろう。

 

奥の君たちは、まだ生きているみたいだね。

 

若き探索者たちはどうやらここにまで開拓してきていたらしく、見たことのない銘柄のビール瓶が放置されていた。

 

二階への階段を上がろうとすると、目の前に今までで一番大きなぬいぐるみが現れる。

自分の体を支えきれずに、上半身部分は不可抗力のお辞儀で出迎えてくれる。

 

二階、三階と上がると、そこには各民族の生活感が広がる。

 

閑散としている世界観で、ぼくの足音だけが響いていた。

 

その階には「お土産コーナー」もあった。

そんなお土産コーナーで、不思議な商品に目が留まる。

これは…アメリカの…マウントラッシュモア…?

不思議に思いながら建物を後にする。

マウントラッシュモアの正体

建物の裏手に出てみるとここにも「ヒーローショー」を行うような施設が点在していた。

 

やはりこちらも、ステージの規模にそぐわない客席の広さ。

コロナでなくても無観客である。

 

最後尾まで足を運んでみると、何やら妙な標識がある。

マウントラッシュモア??

 

後ろを振り返ってみると、ようやくその正体がわかったのであった。

 

なんという大胆なモニュメント。とてつもなく「バブル」を感じる。

そして、こういったものにこそ「廃墟」としての価値を感じるぼくであった。

探索の終わり

以上で、今回の探索は終わることにする。

独特の空気感を噛みしめながら、ぼくは廃墟を後にした。

やはり帰り道も人に会うことは無かった。

「人形」にだけ、挨拶を済ます。

いつしかこの施設が、何かしらの形で復旧の目途が立ってくれることを心から望んでいる。

そして、その時までは今の形を保ちつつも、止まった時間を維持し続けてほしいとも…。

 

最後に、自身では慣れない「パノラマ写真」で幕を引く。

いつまでもこの時間を。