「凶悪」ネタバレ感想と考察【実際にあった猟奇的殺人事件】

本記事は、映画「凶悪」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

凶悪

2013年、白石和彌監督によって描かれた作品。

1999年に、実際に起きた殺人事件「上申書殺人事件」について、「新潮45」という雑誌の特集により暴かれた事件であり、今作では「雑誌に掲載されるまでの経緯」を映画としている。

上映時間は128分。

あらすじ

舞台は現代の日本、スクープ雑誌「明朝24」のジャーナリストとして勤務する「藤井修一」の元に、とある一通の手紙が届く。

差出人は「死刑」が確定している囚人「須藤純次」であった。

過去に幾度となく犯してきた殺人について、自分の罪を認めると共に、「もう一人の犯人について、記事にしてほしい」と、語るのだった。

日本中のまだ誰もが気がついていない、闇に埋もれた事件を、藤井は掘り起こしていく…。

出演役者

本作の主人公、ジャーナリストである「藤井修一」を演じるのが「山田孝之」

 

事の発端となる死刑囚「須藤純次」を演じるのが「ピエール瀧」

 

須藤の共犯者である「木村孝雄」を演じるのが「リリー・フランキー」

配信コンテンツ

「凶悪」は今現在、Amazonプライム、NETFLIX、U-NEXT、dTV、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

ネタバレあらすじを読む
舞台は現代の日本、スクープ雑誌「明朝24」のジャーナリストとして勤務する「藤井修一」の元に、とある一通の手紙が届く。差出人は「死刑」が確定している囚人、「須藤純次」であった。

過去に幾度となく犯してきた殺人について、自分の罪を認めると共に、「もう一人の犯人について、記事にしてほしい」と、語るのだった。

日本中のまだ誰もが気がついていない、闇に埋もれた事件を、藤井は掘り起こしていく…。

須藤から得た情報を元に、「スクープ」として上司に提出するが、信ぴょう性の無さから記事として取り扱ってもらうことができなかった。

個人的な興味から藤井は捜査に乗り出すこととなるが、次々に隠されていた「事件」が明るみになっていく。

須藤は、今回の事件の共犯者であり、不動産ブローカーである「木村孝雄」がもう一人の犯人であると、声高らかに叫ぶのだった。

そして、須藤が自白した事件の数々は、非常に残忍かつ、極悪非道な事件だった。

とある男性を絞殺し、その遺体をバラバラ解体し、焼却炉に放り込んだこと、

また別の男性を、空き地に生き埋めにしたこと、

経済難に陥る牛場家の父であり、牛場電機設備の経営者である「悟」を家族に頼まれ、殺したこと。

中でも、牛場悟の殺害に関しては、アルコールを大量に飲ませ、スタンガンなどで痛めつけ殺害するという極悪非道ぶりだった。

そして、それらの被害者全てに、「保険金」が掛けられ、それを求めての犯行だったのだった。

元、ヤクザの組長だった須藤は、部下を引き連れ、組を抜けることとなるが、その部下に裏切られたことから殺害に及び、逮捕されたという経緯だった。

藤井は、捜査に走る自分のせいで壊れていく家庭環境を傍観しながらも、捜査を辞めることは決してしなかった。

認知症の母親の介護に疲れた妻は、ついに「離婚届」を藤井に叩きつけるのだった。

「木村孝雄」の存在と居場所がわかり、ついに「事件」が、雑誌に取り上げてもらうことが決まるのだった。

そして、木村の存在が明るみになったことをきっかけに、木村の逮捕と裁判が行われることとなる。

裁判では須藤も、藤井も証言台に立ち、木村の犯行を証言するのだった。

木村は刑務所に入り、藤井が面会に訪れることとなる。

「正義感」に取りつかれ、事件はまだ終わっていないと言い放つ藤井であったが、木村は「俺を一番殺したがっているのは、事件の被害者でも、須藤でもない。」と吐き捨て、藤井を指さすのだった。

ネタバレ感想と考察

実力派役者たちの凄みのある演技が光る

今作の作品を描くのは、暴力や血の多い作風が光る監督、白石和彌監督であった。

警察やヤクザ、銃や暴力と言った血の気の多い作風で、今作も描かれるが、そんな脚本にマッチする役者としてキャスティングされた役者達こそが、本作の見どころであるだろう。

今作の作品以外でも、「アウトレイジ」シリーズを初め、数々の暴力映画に出演する「ピエール瀧」「リリーフランキー」「山田孝之」など、実力派とされる役者たちのオンパレードの作品となった。

実話であるとは思えない残酷さ

本作を鑑賞する人々や、鑑賞した人々にまず知っておいてほしいこと、それは「今作の物語は全てが実話であること」だろう。

1999年に起きた「上申書殺人事件」がベースとなる今作、事実であることが信じることができないような残酷なシーンに、鑑賞者は度肝を抜かれることとなる。

焼却炉に遺体を入れる犯行、生き埋めにしてしまう犯行、アルコールを大量に飲ませる犯行、全て本当にあった事件である。

今作で登場する、藤井の務める編集社「明朝24」も、「新潮45」という実際に存在する編集社が記事にしたことまで本当のことである。

事実を元に描かれていても、フィクションが多く入り交じる映画が多い中、今作のような残虐な作品が100パーセントの事実で描かれることに、とても驚きを覚えると同時に、とても斬新な作品であるとも感じたのだ。

そんなリアルを知った上で鑑賞すると、また違った角度で作品を鑑賞することができるだろう。




秀逸すぎるキャスティング役者たち

数ある映画の中でも、特に「暴力的」であり

血の気の多くなった今作、そんな作風を得意とする白石和彌監督の世界観をより引き立てるために、キャスティングされた役者たちは、とても秀逸なキャスティングだったと言っていいだろう。

今では「実力派」の名前を欲しいままにする名優「山田孝之」が本作の主人公を務めあげ、数々の暴力映画で引っ張りだこの「ピエール瀧」そして「リリーフランキー」と、迫力のある役者たちが出揃うのだった。

「ピエール瀧」や「リリーフランキー」、暴力的な一面を観せるのには際立った才能を発揮する役者たちであるが、この二人に秘められた才能であり、求められていたのは「サイコパス感」だっただろう。

とにかく「笑顔」がとても多く、無垢な笑顔の中にも「狂気」を感じてしまうような、役者の選出であり、タイトル通り「凶悪」な立ち回りを魅せてくれたのだ。




「恐怖」を「笑い」とした作品だった。

本作で描かれる「狂気」、言い換えれば「恐怖」

残酷なだけの作品だと思って鑑賞を始めたが、一通り観てみると、ブラックな笑いが入り交じる、シニカルな作品である側面も見えた

殺人を犯すことを「ぶっこむ」という当人たちでしかわからない造語、そして「先生」という、由来のわからない学生のようなあだ名、「殺し」を楽しんでいる描写に至るまで、全てが「ギャグ」として機能しているのが、本作の面白さでもあるだろう。

物語の後半、須藤は「キリスト教」に目覚めることとなるが、それすらもギャグに見えてきてしまう。

鑑賞者たちの「狂気」を引き出す作風

人間誰しもが内に秘めている「狂気」、ピエール瀧の出演する作品には、いつもこんな狂気を引き出させるような描写が多い印象を持っている。

本作においては、計画は木村であり、実行が須藤という役回りで犯行は行われていくが、そのどちらの目線でも、内なる狂気が目覚めてしまうような迫真の演技をしてくれていた。

これから殺す人の前であろうと、関係なく木村は冷静な声で、「遺体を処理する段取り」を組み、須藤はなんの躊躇いもなく「仕事」を始める。

思わず目を伏せたくなるような描写の多い作品であると共に、言葉では表現出来ないような「快感」を感じてしまうような鑑賞者も確実に居るだろうと思う。

お酒を大量に飲ませて殺すシーンが印象的に感じたのは、ぼくだけでは無いはずだ…。