「パスワード:家」ネタバレ感想と考察【新感覚AIスリラー作品】

  • 2021年3月14日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「パスワード:家」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

パスワード:家

2018年、マノロ・ムンギア監督によって製作された作品。

サイコスリラーでありながら、「AI」を題材とした新世代スリラー作品。

上映時間は104分。

あらすじ

一組の夫婦、ダビッドとサラ、ダビッドの大学時代の旧友である

ラファに誘われ、当時の友達との同窓会に招かれた二人であった。

合計9人の男女が集まり団欒を楽しんでいたが、主催者であるラファが唐突に、「ハッキング」に成功し、「とあるアプリ」をインストールしたことを話し始める…。

出演役者

本作の主人公であるダビッド

スマートフォンやタブレットの開発に携わる仕事をしている生粋のITマン。

同じくITの知識に長けた大学時代の旧友に誘われ、妻のサラとラファの家に訪れる。

本作の物語は彼を主人公として進行していく。

 

妻のサラ

ITのことに関しては一般的な知識しかなく、今回集まるメンバーの皆とは初対面である。

 

今回の会を催したラファ

ダビッドの旧友であり、本作のキーマンとなる人物。

パスワードのハッキングなどの法的にグレーな仕事をしており、その技術も高い。

今作では彼を中心とした物語が展開される。

また、日本版パッケージに描かれているのも彼である。

 

同じ旧友の一人であるモニカ

幼いころから「プログラミング」を得意とし、「IT」や「AI」について多大な興味を示す女性。

ITについて、ラファやダビッドと同等のレベルの話ができる人物である。

 

その他5人の旧友が集まり、物語は進んでいく。

ネタバレ感想と考察

好きな人には刺さる!新感覚「AI密室サスペンス」

密室ミステリー、こういったジャンルの作品は過去にも数々の作品が描かれているが、本作のような描き方がされた作品は後にも先にもこの作品だけであろう。

本作品では、現代のテクノロジーを最大限に応用したスリラー作品として話題となった作品だった。

パッケージからもわかるような不安感の中に、「密室である」という設定、そして年頃の男女が集まるとなれば、確実にスリラー映画への扉は開け放たれている。

本作ではそんなスリラー要素として、「アプリ」が用いられているのが、とても新しい脚本となっていた。

スマートフォンのカメラを通して映された映像を、リアルタイムで加工していくアプリは現代にも存在しているが、そんな現代の技術を生かし、「過去や未来の映像が見える」ツールとして作り上げられた。

終焉のような「未来」を描いたうえで、「なぜこうなってしまったのか?」探っていく構成こそが、本作最大の見どころだろう。

斬新すぎる映画の構成と伏線

本作では、IT技術に疎い人なら観るのを放棄してしまいそうなほどな技術的会話が織りなされるが、なんとそんな会話に40分近く割かれていたことに皆さんは気が付いただろうか?

本作のキーマンとなったラファにより「スリラー作品」への入り口が開かれるが、それまでの会話への時間のかけ方も、意味のある演出の一つとなっていたのだ。

その正体は「鑑賞者への理解」これだけスマホが復旧している現代、知らぬものはいないほどのツールとなった、「Twitter」「フェイスブック」文字が飛び交うシーンであるが、物語が限りなく「現代」そして、鑑賞者目線の「等身大」で、描かれていることが明らかとなった導入となっていただろう。

本作の「スリラー要素」の本質はズバリ「鑑賞者の身近にある恐怖」であり、これから発展していく「AI」そのものを「恐怖」として認識させるための道具ともなっていた。

冒頭の「監視カメラ」に気が付くシーンや、ダビッドとラファがパスワードを言い当てるシーンなど、「伏線」であり「恐怖」の助長をする描写の一つとなっていた。




「今いる空間」がリンクする恐怖の仕掛け

スマートフォンで過去や未来を映し出し、その原因を究明していく物語が本筋であるが、そんな「カメラ越し」に全く違う空間が広がっている恐怖こそが、この感覚の正体である。

今いる空間とは全く違う景色が数日後には確実に訪れ、スマートフォンを横に構える人たちはさながら「その時の場所」に居るかのような描写として描かれているのも、この感覚を感じさせるためだろう。

ラファがスマホを持つシーンでは、「未来のラファ」とお互いの存在を認知し、画面越しのチャットを行うシーンすら登場する。このシーンに、今まででは感じたことが無い鳥肌を感じてしまったのは僕だけではないだろう。

「パラレルワールド」の存在を身近に感じさせ、「パラドックス」の存在を得体の知れない怖さとして描いた描写は大変面白いものであった。

また「未来のラファ」による、「スマホの電源を切れ!」のメッセージも、画面を飛び越え、鑑賞者の僕たちに語りかけるような、リアルな恐怖を煽る演出の一つとなった。

映画の冒頭、まずは鑑賞者に向けられ、「スマホを切ってください」との注意喚起がされるのもなかなか面白い演出だった。

そもそもなぜあんな「未来」になってしまったのか?

本作で描かれる未来、部屋に置かれた像の位置が変わっていたり建物自体が無くなり炎上していたりと、予想だにしない未来が描かれていたが、いったいなぜこのような未来が訪れてしまったのだろうか?

まず作中で語られるのが「AIに乗っ取られる」という状況設定。

全ての電子機器がオンラインで繋がる「5G」の時代、「AI」には自我が芽生え始めるという過去にも描かれたこの設定こそが、根底にある考え方である。

そんな「自我」を持ったAIがいる前提の話になったとき、「伏線」として機能していた描写がいくつもあったのである。

まず、ダビッドが「監視カメラ」の起動に気が付いたシーンである。

密室とはいえ、あれだけの話をしていたら、確実に監視カメラには残ることとなるが、映画序盤にラファが話していた「技術」について思い出してほしい。

将来、どんな機器も「WiFi」を持つようになれば、いかなる情報も筒抜けになることが彼の口から語られたが、そんな「監視カメラ」危機となり得る道具だろう。

そして何より、女性メンバーによる「音声データ」の録音だろう。

「各超現実」を可能としたアプリが披露されたとき、マンバーである女性の一人がトイレに駆け込み、「すごいものを見た、大金持ちになれる」データを送信する。

誰一人気が付くことのなかった彼女の行動が、暗い未来に結びついていることは火を見るより明らかだった。

テクノロジーが飛び交う中、人間的なパニックホラーらしいシーンとなっていた。

もったいなすぎる邦題とパッケージ!!

テクノロジー作品であったりサスペンス作品が好きである人々であれば、本作はより楽しめる作品に仕上がっているだろうが、なぜかそこまで有名にはなっていない印象を覚えた。

確かに作品の終わり方としては、まとまりのない「B級感」溢れる終わり方となってはいたが、「シリーズモノ」として今後の展開を描いていっても、ボリュームのある作品として作れるだろう。

そんな本作であるが、何より邦題が「もったいない」一言に尽きる。

原題は「h0us3」であるが、邦題やパッケージからは、ストーリー内容が全く想像できないような作品となってしまっていた。

話のあらすじがもっと周りに認知されたとき、本作の人気は爆発するのかもしれない。