映画「ゾディアック」ネタバレ感想と考察【暗号を使いこなすシリアルキラーを追う】

  • 2021年6月17日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「ゾディアック」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

ゾディアック

2007年、デヴィッド・フィンチャー監督によって製作された作品。

実際にあった事件「ゾディアック事件」を追う、一人の記者の物語。

上映時間は158分。

 

あらすじ

舞台はアメリカ、1968年、カリフォルニア州バレーボで、若いカップルが射殺される事件が発生する。

その後もカップルを狙った数々の事件が起きる中で、新聞社にそれらの犯行についての「犯行声明文」が届く。

新聞社で漫画を描く仕事をしていたロバート・グレイスミスはこの件について興味を示し、届いた暗号を解読するが、相手にしてもらうことはできなかった。

その後もゾディアックによる劇場型犯罪が繰り返される中で、ロバートは独自にゾディアックの正体について調べ始める…。

出演役者

本作の主人公、ロバートを演じるのが「ジェイク・ジレンホール

数々の映画作品に出演する俳優であり、映画監督の父や脚本家の母、女優の姉など、一家そろって芸能関係の仕事である。

サスペンスやドキュメンタリー映画に数多く出演し、その演技の高さが評価されている。

様々に役柄を演じることからカメレオン俳優とも評され、パパラッチの仕事を描いた「ナイトクローラー」では、本策とは正反対のキャラクターを演じている。

また、あの「スパイダーマン」シリーズにも出演している。

 

ゾディアック事件の担当刑事となったデイヴ・トースキーを演じるのが「マーク・ラファロ

彼もまた、数々の作品に出演し様々な役柄を演じている俳優であり、「コラテラル」「シャッターアイランド」などのサスペンス作品から「アイアンマン」などのアクション作品にも出演している。

 

ロバートの仕事仲間であり、敏腕記者として働くポール・エイヴリーを演じるのが「ロバート・ダウニー・ジュニア

あの「アイアンマン」、そして「シャーロック・ホームズ」の主演でも有名な超人気俳優。

それ以外でも映画やテレビなど、様々なメディアで活躍し、いまだ人気は衰えない。

彼ほどの人気俳優が、本作でサブキャラクターを演じていること自体に違和感を覚えてしまう…。

配信コンテンツ

「ゾディアック」は今現在、Amazonプライム、Netflix、U-NEXT、等で配信されている。

ネタバレ感想と考察

実際にあった事件を独自調査して本にしてしまう!?

前述したように、本作品はアメリカで実際に起こった劇場型犯罪の事件であるが、その捜査はなんと50年以上も行われ、今現在も新たな発見がされるほどの事件である。

この「ゾディアック事件」、アメリカでは非常に有名な事件であり、本作品以外でも数々の映画作品が本作をプロットに作品を書いたり、本作をモデルに作品を作ったりしている。

そんな中でも今回の作品は、他の作品とは少し違った切り取り方で描かれた作品である。

それは「ゾディアック事件」ではなく、ベストセラー本「Zodiac」が発行されるまでを描いた作品だったことだろう。

今作の主人公、ロバート・グレイスミスも例外なく実在する人物であるが、本作のプロットとなるのが1986年に彼が書い「Zodiac」という本だった。

彼はこの「ゾディアック事件」が風化していく中で、一般人ながらも一人で独自の捜査を続け、彼の書いた本はベストセラーとなるまでに成長する。

映画としての切り取り方の中心に「ゾディアック事件」ではなく、書物である「Zodiac」がフォーカスされていた点は、非常に特殊で面白い要素となっていただろう。




暗号を紐解くミステリー作品としての一面

本作品は事実に基づいて製作された作品であるが、その事件を知っている人、知らない人、どちらもが最大限に楽しむ工夫がされた作品となっている。

知っている人は本作をある種の「ドキュメンタリー作品」として鑑賞することができるが、知らない人は本作を「暗号サスペンス作品」としても鑑賞できる。

本作で描かれるゾディアック事件では、犯人による「犯行声明文」が大きく絡んでくる「劇場型犯罪」としても有名であるが、この事件がここまで有名になり、また映画の題材として取り上げられたのもこの内容のインパクトの大きさがきっかけだろう。

この犯行声明文では「○○を殺した」といった報告や「次は○○を殺す」といった犯行予告はもちろんであるが、解読が困難な暗号文が送られていたことでも有名となっていた。

これを解読しながら、事件の真相に近づいていくロバートの奮闘を楽しみながら鑑賞することもできる。

ベストセラーとなった書物「Zodiac」の発行に至るまで全てがノンフィクションで展開される中、実際の映像や人物が作品に登場しない点において、本作における「物語」としての見方を提唱しているしているのが本作の特殊な描かれ方だろう。

また、本事件が「未解決事件である」という事実も含めて、ワクワク感を感じることもできる効果が生まれている。

そんな作品の二面性が、事件を知っているアメリカ国民ならず、日本の鑑賞者にも評価された大きな要因となっている。

実際の「暗号」ってどんなもの…?

本作の重要なキーポイントとなっていたこの「暗号文」であるが、今現在でも様々な説が議論されるほど質の高い暗号文となっている。

本事件におけるゾディアック暗号であるが、大きく二種類の文章が有名である。

一つが最初の暗号、「Z408」と呼ばれる、408文字のアルファベットから構成された暗号で、

もう一つが「Z340」と呼ばれる、340文字のアルファベットから構成された暗号である。

暗号文を含めた犯行声明文の中で、「おれはゾディアックだ。」と名乗ったことから、事件の名前が「ゾディアック事件」となっているわけだ。

また、映画のタイトルにも含まれている「ターゲットのようなマーク」もここで登場し、「ゾディアック」の意味は黄道12星座の「黄道帯」を意味し、マークは「ケルト十字」であると言われている。

そして、作中でもこの二種類の暗号の解読に奔走するロバートの姿が描かれているが、「Z408」の暗号に関しては、1969年に高校教師のドナルドとベティのハーデン夫妻によって、解読されている。

「俺は人殺しが好きだ。
森で動物を狩るより興奮する。
女とセックスするより楽しい。
死後の楽園で俺に仕える奴隷を狩るのは最高だ。」

完全無欠のサイコパス…といったような文面であるが、そんな過激な文脈からも今回の事件がいかにインパクトがあるか伝わってくるだろう。

 

そして、残りの一つ「Z340」の暗号であるが、なんと2020年にオーストラリア・ベルギー・アメリカの数学者やプログラマーが解読に成功した。

「俺を捕まえようと楽しんでくれているかな?
テレビ番組に出て、話しているのは俺ではない。
俺をすぐに天国へ送ってくれるので、ガス室は怖くない。
俺には奴隷がいる。他の人たちには天国に行っても奴隷が居ないから、彼らは死を恐れている。
死んで天国に行けば安らかな生活を送れることがわかっているから俺は恐れていない」

こちらも十分にサイコパス…。

実に51年もの歳月をかけて解読に成功した暗号であったが、様々な数式や配列によって規則性のもとに作られた暗号であり、解読は非常に困難だったとされている。

また、今回の暗号文の解読について、オーストラリアの数学者「サム・ブレイク」さんが自身のアカウントでYoutubeに動画としてアップしている。

実際の事件と連動している映画作品は、こういうことが起こるからいつでもワクワクしてしまう。

ノンフィクションとしても映画作品としても、後世にまで語り継がれる怖くも面白い事件となっている。