本記事は、映画「ブラック・ボックス」の
ネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、
注意して読み進めてください。
ブラック・ボックス
2020年、
エマニュエル・オセイ=クフォー監督により
制作されたホラー映画。
Amazonプライム限定公開の作品となった。
上映時間は100分。
あらすじ
とある黒人男性、ノーランは、
交通事故により妻を無くし、
自身も記憶を無くしてしまっていた。
愛する娘だけに心の拠り所を見つけるが、
日常生活に支障をきたすレベルで
物忘れをしてしまうこととなる。
そんな現状を打破するべく、
病院に赴き、「リリアン医師」の
療法を試すのだった…。
出演役者
本作の主人公「ノーラン」を演じる
「マムドゥ・アチー」
アメリカの黒人俳優で、
本作のようなサスペンス調の作品以外にも、
SF、コメディ、ヒューマンドラマなど、
数々のジャンルの作品に出演している俳優である。
ノーランの娘「エヴァ」を演じるのが
「アマンダ・クリスティーン」
子役であるが、本作以外の出演作品はないようだ。
ノーランの主治医である「リリアン医師」を
演じるのが「フィリシア・ラシャド」
以外?にも、数々の作品に出演するベテラン女優であり、
ボクシングのシリーズ作品「クリード」や、
アニメ作品への声の出演など、
多彩な才能を発揮している。
ネタバレ感想と考察
「潜在意識」に切り込んだ「インセプション」のような作風。
「潜在意識」と聞いて
まず思い浮かぶ作品、
鑑賞者の中には
クリストファー・ノーラン監督の
「インセプション」を思い出した者も
多数居ただろう。
今作では他者による
記憶を抜き取る作業でなく、
自身の失われた記憶を取り戻すために
使われる方法となっていた。
一見、テーマの似ている2つの映画でも、
「インセプション」はアクション要素が
色濃く、華やかに描かれたのに対し、
「ブラック・ボックス」では、
どこか陰鬱で
ダークな雰囲気の作品となった。
「夢」の中でありながら、
「トラウマ」を要所要所に織り込んだ
演出がとても多く、
流石「ホラー映画」と謳うだけある
完成度となっている。
主人公の「ノーラン」という名前からも、
インセプションのオマージュであった
可能性もゼロではないだろう…。
「伏線」と思わせながら裏切る、新しい手法
今作の前半、
いわゆる「ノーラン」のパートでは、
交通事故によるトラウマを
夢の中で主に描き出す。
全身がバキバキになった化け物が
夢の中で襲いかかるが、
これを「ノーランの事故」と勝手に
結びつけてしまっている鑑賞者が
殆どであっただろう。
「ノーランの過去には何があったのか?」
そんなことを究明していくような
作風に作られながらも、
結果としては
赤の他人の記憶であるというオチ。
そんな「映画の本筋」をも覆してくる
脚本にはいい意味で裏切られる作品だった。
サイコパスなキャラクター設定
本作における「悪人」として
仕立てあげられた「リリアン医師」という
キャラクター。
今作では、
彼女の息子への異常な愛情表現こそが、
本作の裏のテーマとなっているような
印象を受けたのだ。
どこか「マッドサイエンティスト」的な
サイコパス感が備わったキャラクター、
今作の陰鬱な雰囲気を作り上げるのに
一役買って出た役作りとなっていた。
物語の最後、
「トーマス」の記憶の
復元が描かれるシーンでは、
「次の犠牲者」がまだ出るであろうことを
示唆しつつ、
パーフェクトなハッピーエンドとしない
終わり方が心地よかった。
「ホラー映画」としての本作品。
Wikipedia先生の今作のジャンルの振り分け、
「ホラー映画」とはなっていたが、
実際に鑑賞してみると
違うジャンルの映画にも見えるだろう。
それは「SF」であり
「ヒューマンドラマ」でもあり、
ホラー映画たる「怖さ」は
あまり感じられなかった作品に
仕上がっていた。
本作のホラー要素として
一番大きな要因となっていたのが、
映画の細かな演出と雰囲気だっただろう。
物語の冒頭、暗い部屋にノーランの
上半身のみが映るシーンであったり、
まるでのっぺらぼうのように、
顔だけがボヤけるシーンであったり、
数々の要素がじっとりとした恐怖を
与えてくる、
斬新な演出の多いホラー映画となっていた。