本記事は、映画「スノーピアサー」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
スノーピアサー
2013年、アメリカ・フランス・韓国の合作映画。
監督はあの「パラサイト」を制作したポン・ジュノ監督が務め、原作はフランスのコミック小説である。
地球温暖化によって住めなくなった地球上で、列車の中で生き続ける人間たちの物語。
上映時間は125分。
あらすじ
舞台は2031年の地球。
地球温暖化の影響によって気温が急上昇した地球は、化学薬品CW-7によって世界の気温を下げる計画を実行した。
ところが、気温は下がるどころか氷点下の「人間が生存することが困難な世界」となってしまう。
唯一残された、永久機関によって動き続ける列車「スノーピアサー」の内部にてのみ残された人類だったが、列車内でも「貧富の差」は存在するのだった…、
出演役者
本作の主人公カーティスを演じるのが「クリス・エヴァンス」
主にアクション作品に多数出演し、あのアベンジャーズシリーズでも「キャプテン・アメリカ」を演じている。
物語のキーマンとなるミンスを演じるのが「ソン・ガンホ」
同じポン・ジュノ監督の作品である有名映画「パラサイト」でも主演を務める韓国の名俳優である。
ネタバレ感想と考察
「生への執着」を逆説的に捉えた作品。
世の中には「死」が前提として設定され、密室空間で描かれた作品が多々存在する。
日本で言うならば「進撃の巨人」や「約束のネバーランド」などがそれに該当するアニメであるだろう。
この二作品の人々は、皆が「生きるために」巨人や鬼との戦いを描く物語であるが、本作スノーピアサーでは「必要最低限の生活」がすでに確保されていることに実は皆は気がついていない。
何の仕事をしていなくても「プロテインブロック」と呼ばれる寒天のような食料は供給され続け、気温も問題無く、寝床もある。
「生きていくこと」に関してだけ言えば、最低限の環境は整っている。(疫病などが流行れば一撃で滅亡であるが…。)
そう、本映画は「貧困からの脱却」を賭けた物語である。
貧民たちによる徒党「レジスタンス」のリーダーであるカーティスは「自身の正義」を振りかざして、数々の仲間の犠牲を払いながらも列車の先頭車両に乗り込む。
そこで彼を待ち受ける運命や「虚無感」こそが、本作を有名にさせたきっかけとなった要因となっていたのだ。
カーティス以前のリーダーを務め、命の恩人でもある老人ギリアムは、貧民たちの悪とされていた先頭車両のトップ、ウィル・フォードと綿密な連携を保っていたことこそが、この「虚無感」を生み出していた。
その場で大人しく過ごしていれば救われた命が、カーティスの反乱によってどんどんと失われていく展開に「カーティスの正義」が徐々に歪んでいく展開は、これまでに感じたことの無い感覚を覚えるだろう。
このワクワクの原因は…?もちろん「スチームパンク感」!!
本映画の舞台となるのがとある列車の中。
列車を題材に描かれた作品では「鬼滅の刃」が記憶に新しいだろう。
そんな男心をくすぐるツール、それが「列車」である。
映画内での設定は「永久機関」によって走り続ける列車「スノーピアサー」の物語であるが、そんなSFチックな世界観こそが、魅力の一つでもある。
終末の世界、描かれる数々の機械や道具は、さながら「AKIRA」を彷彿とさせるスチームパンク感を感じさせてくれる。
プロテインブロック この世界の貧民層の唯一の食料。 17年間、これを食べて生活していることから、腹持ち、栄養価共に、生きていくうえで問題は無いようである。 原材料はゴキブリのような生物であり、これを知っているのは製造者とカーティスのみである。 列車に乗り込んでから最初の一か月では、食料が全く供給されず、 「食人」も行われた地獄絵図がカーティスの口から語られる。
クロノール この世界における「麻薬」のような中毒性のある嗜好品の一種。 匂いを吸引することで幻覚を見ることができる。 ちなみにこの世界で「煙草」は、ミンスが所持するモノが最後の二本である。
音声変換装置 多国籍の人間が乗り込むこの列車において、違う言葉を話す者同士のコミュニケーションに使われる道具。 アメリカ人であるカーティスと韓国人であるミンスの会話の際に使われていた。 また、列車内には日本人も乗車し、日本語で「なにすんだ!馬鹿野郎!」などのセリフも聞き取れる。 主人公のカーティスはこれに両手を合わし、「スイマセン」と日本語で対応している。
また、そんな油や汚れた世界観こそが、今作の監督を務めたポン・ジュノの本領でもあるのだ…。
あの「パラサイト」の監督がアクションに切り込む。
本映画の二転、三転とする大どんでん返しの脚本は、さすがあの「パラサイト 半地下の家族」の監督を務めたポン・ジュノの監督作品であると言える。
そんな秀逸な脚本に加えて、やはり「ポン・ジュノらしさ」が冴え渡る作品となっていた。
「パラサイト」でも本作でも、どちらもテーマとして掲げられているのが「貧富の差」の問題である。
実際、韓国ではまだまだ色濃く残る問題の一つであり、そんなリアルをSFの世界に投影した作品であると言ってもいいだろう。
また、「貧民」としての描かれ方もジュノ監督らしさが存分に冴え渡っている。
その汚れた環境や、体、顔、さながら「半地下」に住まう人間そのものとして描かれていた。
アクション×半地下×スチームパンク
あらゆるジャンルを取り入れ、見事なSF作品へと昇華させるジュノ監督の力量には今一度拍手を送りたい。
なんとドラマがある!?スノーピアサー!
実は本作のスノーピアサー、ドラマ化もしているのはご存知だろうか?
こちらはアメリカで放映されているシーズンモノのドラマであり、製作総指揮としてポン・ジュノも名前を連ねている。
物語の時系列としては実際に繋がりがあるようだ。
2013年に公開された本作、映画「スノーピアサー」では、地球凍結から17年後が描かれているのに対し、2020年に公開されたドラマ版「スノーピアサー」では、地球凍結から7年後を描いた物語である。
原作となるフランスのコミック小説作品も含めたところで、全ての「スノーピアサー関連の作品」が繋がりを持つ世界観で描かれている。
ドラマ版スノーピアサーも、シーズン1.2がNetflixにて配信済であり、シーズン3の制作も決定している作品である。
今後のスノーピアサーの世界観も期待して待ちたい。