「Diner ダイナー」ネタバレ感想と考察【殺し屋専用レストランの抗争】

  • 2021年1月30日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「Diner ダイナー」の

ネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、

注意して読み進めてください。

Diner ダイナー

2019年、蜷川実花監督によって制作された

アクションスリラー作品。

「殺し屋」だけが集うレストラン、

Diner ダイナー」で働くこととなった

一人の女の子の物語。

上映時間は117分。

 

あらすじ

舞台は日本、

普通の女の子「オオバカナコ」

両親に捨てられたことから、

「自分がこの世に必要の無い存在である」

考えつつも、

特技である「料理」だけを支えに

今まで生きてきた。

 

そんなある日、

メキシコのグアナファトに行きたいという

願いを叶えるため、

「日給30万円」という

怪しいバイトに参加したことをきっかけに、

殺し屋に殺されそうになる。

 

「料理が得意であること」を話すと、

殺し屋専門のレストランである

「ダイナー」で、ウエイトレスとして

働くことを強要されるのだった

 

出演役者

本作の主人公、レストラン「ダイナー」の

料理長ボンベロを演じるのが

「藤原竜也」

誰もが知る実力派俳優で、

彼の演技の前には、他の俳優の誰も

真似することの出来ない

圧巻の演技力がある。

藤原竜也はやはり、どの映画でも

「藤原竜也」である。笑

 

本作のもう一人の主人公、

ダイナーで働くこととなった

唯一のウエイトレス、

オオバカナコを演じるのが

「玉城ティナ」

次世代を担う、若き黒髪の女優である。

これまでの作品では

ポップな恋愛ヒューマンストーリーへの

出演が多かったが、

本作の「ダイナー」を皮切りに、

「惡の華」AI崩壊」などの

サスペンスやホラージャンルへの

出演も多くなってきた印象があるだろう。

 

レストラン「ダイナー」の常連客である

殺し屋の青年、スキンを演じるのが、

「窪田正孝」

彼も国民の人気を集める、

イケメン俳優の一人であるが、

その実力は折り紙付き。

 

本作でも圧巻の演技力と

アクションを見せてくれたが、

映画版「東京喰種」の主人公を

演じていたこともあり、

どことなくその面影が浮かぶのも

一興である。

 

その他も「斎藤工」「小栗旬」

「金子ノブアキ」などの大物俳優や

「土屋アンナ」「真矢ミキ」などの

実力派女優も数多く出演する。

 

ネタバレ感想と考察

蜷川ワールドで描かれる「アクション映画」の形。

本作の監督を担ったのは、「さくらん」

「ヘルタースケルター」でおなじみの監督、

蜷川実花である。

 

ポップでサイケな色合いの世界観と、

独特すぎる、グロテスクな演出や

心理描写が本作でも描かれていた。

 

これまでの蜷川監督のファンであれば、

「彼女の作品であること」

一目でわかるような

作風となっていただろう。

 

しかし本作、

これまでの蜷川監督が描いた

世界観とは少し違う、

「アクション要素」

ふんだんに取り入れた

作風となっているのも

蜷川監督の新しい試みの作品であった。

 

本作の登場キャラクター、

ほぼ全員が「殺し屋」である上で、

ナイフ等の武器を用いた殺陣

ガンアクションが多い作風に新風を感じた

鑑賞者も多かったと思う。

 

本作の出演役者達も、

「藤原竜也」「窪田正孝」などの

「アクション」が似合う

俳優のキャスティングが多く、

女優でさえ「土屋アンナ」

「真矢ミキ」などの

アクションに違和感を感じさせない

キャスティングとなっていた面でも、

「アクションを描くこと」に関しての

蜷川監督の心意気を感じただろう。

 

また、本作でより力の入れていたのが、

アクションシーンでのCGである。

スローモーションを駆使した

アクションシーンに、

飛び散るガラスやネオンの輝きが

蜷川ワールドを感じさせる

アクションシーンとして

絶妙なバランスを生み出していた。

 

彼女でしか描けないアクションの形が

本作で描かれたことが

とても面白い作風となっていた。




原作とは似て非なる映画オリジナルストーリー

本作の映画、原作となる媒体は

しっかりと存在している。

2009年に平山夢明氏が書いた

同名小説である。

 

本作の映画では、

このストーリーがベースとなり

物語が進行する作りとなってはいたが、

ざっくりと端折りつつも、

オリジナル性の溢れる作品として

仕上がっていた印象を受けた。

 

まず、主人公である「オオバカナコ」の

設定が大きく違っていること。

映画では25歳の女の子が主人公であったが、

原作小説のオオバカナコは

30という年齢で、

なんと「殺し」の経験もある

女性であったこと。

本作よりも芯の強い女性としての

キャラクターで描かれていた。

 

そして、原作小説で登場した

キャラクター達が登場しなかったこと。

中でも、ボンベロの弟子である

「炎眉(えんび)が登場しないことや、

その他の数々の殺し屋が、

映画作品には登場しないで終わっている。

 

元となる小説「ダイナー」には

かなりの数のキャラクターが登場するが、

それを117分の映画に収めることは

やはり容易ではなかったことを

物語っている。

その他も、作品のキーポイントとなる部分や

結末さえも、映画とは違う物語として

書かれた小説版、

本作の映画とは似て非なる

原作ブレイカーとしての一面には、

小説のファンから見れば賛否両論も

あったようだ。

 

小説の「映画版」と言うよりは、

「完全にオリジナルの作品」として

鑑賞することが、

より楽しむ秘訣となるのかもしれない。

 

一方で小説版「ダイナー」では、

全体的な構成や雰囲気で言えば

確実に映画よりダークな世界観

物語が描かれ、

映画版が合わなかった人も

小説版は面白く感じる

作品となるかもしれないだろう。

本作のオリジナル設定、グアナファトが物語のカギとなっていた!?

原作では描かれることのなかった

オリジナルの設定の一つとして、

オオバカナコが、

メキシコの「グアナファト」

行きたかったという設定が

大きなオリジナル要素として、

映画に組み込まれていた。

 

一見、映画とは何の関連性も感じさせない

スポットチョイスにも見えるが、

実は本作のテーマに

大きく絡んでくる

要因ともなっていたことに、

皆さんは気がついただろうか?

 

思い返せば、レストラン「ダイナー」に

囚われる前のオオバカナコ

アルバイト中にグアナファトの写真を

貰ったことから、

グアナファトへ行くことを

強く熱望するところから

物語は始まっている。

 

毎日をただただ繰り返す、

モノトーンの景色の日々に

彩りをもたらしてくれることを夢見て

行きたいと願ったわけである。

 

そして序盤、

殺し屋である「スキン」に対して、

「お母さんの編んでくれた

体操着袋みたい」と、

感想を述べるオオバカナコであるが、

フラッシュバックさせるシーンの体操着袋、

色彩がグアナファトにそっくりである。

「母親が編んでくれた体操着袋」という

重要なファクターをそのまま

投影した場所こそが、

メキシコのグアナファトであり、

物語の「きっかけ」として描かれた

重要な演出であった。

 

更に、そんなグアナファトの

年に一度のイベント「死者の日」

住民たちが髑髏などの仮想を施して過ごす、

世界的に有名なお祭りであるが、

このお祭りの日の由来は

「故人が一年に一度帰ってくる日」という

意味がある。

そして映画のラスト、

「ボンベロ」が、オオバカナコの経営する

「ダイナー」に訪れた日は

なんと「死者の日」であった。

 

原作小説の相違点として描かれた

数少ないオリジナル要素は、

物語の最初から最後までが

重要な伏線として機能していたのだ。

 

 

グアナファトが影響した要素は

物語の脚本だけに留まることは無かった。

本作の監督である、蜷川実花の描く、

赤やピンクを基調とした、

極彩色や蛍光色の強い世界観の作風

思い出して欲しい。

 

本作で描かれる世界観も、

また同じくカラフルなネオンで彩られ、

蜷川監督の独特な色彩が織り成す世界観が

造られている。

 

それと比例するように、

本作の重要な場所として描かれた

「グアナファト」の街並みもまた、

世界有数の観光地であり、

そのカラフルな街並みから

「世界遺産」への認定

されているほどである。

 

本作「ダイナー」の世界観、

強いては、「蜷川実花」の世界観を

投影するような街並みすらも

キーポイントとなっていただろう。

 

映画には映画でしか

表現することの出来ない面白さがある。

原作小説では感じることのなかった

面白さを存分に引き出させ、

見事に作り上げられた作品だった。