本記事は、映画「#生きている」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
#生きている
2020年、脚本マット・ネイラー、監督チョ・イルヒョンのタッグによって製作された作品。
韓国の団地の一室に住まう引きこもりの青年が、大量のゾンビから逃げるスリラー作品。
上映時間は98分。
あらすじ
舞台は現代の韓国。
引きこもりの青年オ・ジュヌはいつも通り学校へ行かず、自室でオンラインゲームを楽しんでいた。
その時、何やら外で騒がしい音がしているのに気が付く。
外ではなんと一般市民が「ゾンビ化」し、次々に住人を襲っている。
団地の上階に住まうジュヌは、その光景を眼下に見下ろし、「ゾンビサバイバル」へと発展していく…。
出演役者
本作の主人公ジュヌを演じるのが「ユ・アイン」
韓国で有名な若手俳優で、数々の映画作品やTVでも引っ張りだこの俳優である。
同じ生き残りのユビンを演じるのが「パク・シネ」
韓国では相当に有名な女優。
映画作品よりも「韓国ドラマ」への出演が多く、「天国の階段」や「美男<イケメン>ですね」などの有名作にも出演している。
配信コンテンツ
今現在「#生きている」は、
NETFLIXのみで配信されている。
ネタバレあらすじ
- ネタバレあらすじを読む
- 舞台は韓国のとある団地マンション。引きこもりであったジュヌは、今日も学校へは行かず、ひたすら自室でオンラインゲームに明け暮れていた。
目を覚ました時には、家には家族は皆外出中で、母親からは「姉さんと一緒に何か買って食べて」と書き置きとお金が残されていた。
「外へ出ること」を面倒くさがったジュヌは、冷蔵庫に入っていた飲み物を飲み干して、オンラインゲームを始める。
ゲーム仲間たちとしばらくゲームを楽しんでいると、ボイスチャットを繋いでいる仲間の一人が突然「嘘だろ?」と言い出す。
それは「凶暴化した人々が住民を襲っている」というもので、韓国中で流れているものだった。
ジュヌもテレビを付けてみると、同じ緊急速報が流れていた。
その時、窓の方から悲鳴が聞こえてくることに気がつくジュヌ。
マンションの上階に住むジュヌは、ベランダから外を見下ろすと、逃げ惑う人たちとそれを襲う人のゾンビを目撃してしまう。
母親を探していた少女は、母親と抱き合った直後、「ゾンビ化」して母親に噛み付く光景にジュヌは身震いしてしまう…。
その時、更に今度は廊下の方から悲鳴と物音が聞こえてくる。
そっとドアを開けるとその瞬間、隣の部屋の人がが飛び込んで来てしまった。
ジュヌは怪訝そうな表情を見せるが、仕方なくトイレを貸すこととなった。
ニュースでは「謎のウィルスに感染し凶暴化した人間が食人行為をしている」と報道がされている。
凶暴化した人物の特徴として「目の充血」が挙げられると知ったジュヌ。
トイレから出てきた隣人であるが、何故か首を抑えている。
思わず包丁を取り出し、追い出そうとするジュヌであるが、話している最中に様子が急変する隣人。
どんどんと目が充血し、最後はジュヌに襲いかかる。
何とかドアから廊下に追い出したジュヌだが、隣人が他の住民に襲われるところを目の当たりにするのだった。
その後も家族と連絡を取ろうと試みるが、全く通信が機能していない。
母親も父も、姉も帰らない中で、冷蔵庫で玄関を塞ぎ込んで、自体の収束を待つことにした。
嗜んでいたドローンを駆使して、一時は父への電話が繋がるも、すぐに圏外になってしまう。
その時、やっとメッセージが母親から届く。
一斉に届くメッセージは「家に向かっている」や「今は帰れない」と母の軌跡と状況を知らせ、「ジュヌ、生き残って」と最後にメッセージを受け取るジュヌ。
メッセージを受け取ったジュヌは家族写真にに「生き残らねば」と書き込み、便箋を貼り付ける。
これからどれだけの引きこもり生活になるかの検討もつかないジュヌは、とりあえず今ある食料を机の上に置く。
そして、母からのお金で買い出しに行かなかったことを深く後悔するのだった。
ネットの通信も次第に弱くなる中で、SNSで助けを求める多くの投稿を見つけたジュヌは、自分も助けを乞うために、住所を書いて投稿しようとする。
しかし、自身の長い住所を書くのをやめ、「#生き残らねば」とだけ書いて、投稿するのだった。
他の人のそんな助けを乞う動画を観る中で、「電波」を得るために「自撮り棒」を駆使して危険な行為に及ぶ男性の動画を見るジュヌ。
嗜んでいたドローンを駆使して、一度は父に電話が繋がるも、すぐに圏外となってしまうのだった。
夜、警察官の女性がゾンビに追われ、ジュヌのマンションの眼下で襲われる姿を目撃する。
声を出すも、女性は無惨にもゾンビの餌食となってしまう。
その時、家の玄関から物音がする。
振り返ってみると、冷蔵庫の隙間に中年のゾンビが隠れていた。
突然ゾンビに襲われるジュヌだったが、ゾンビをベランダに落とすことで事なきを得る。
ベランダの柵に捕まり安堵するジュヌだが、先ほどの女性警官がゾンビとなって歩いている姿に身震いするのだった。
家に籠ってから7日目。
以前TVは付いていたが、流れてくる情報は代わり映えのしないものばかりだった。
そんな中、「インスタントラーメン」のCMが流れてくる。
ジュヌはその衝動に駆られ、「最後の晩餐」と決めていたカップ麺を食べてしまう。
そして、父親が大事にしていたウィスキーにも手を付け始めてしまい、精神的にも肉体的にも追い込まれ始めた…。
10日目。
スマホを「ラジオ変わり」として利用する手段を見つけたジュヌであるが、それには有線のイヤホンが必要であった。
しかし、「ワイヤレスイヤホン」しか持ち合わせていないジュヌは、落胆しながらも音楽を聴くことで気を紛らわす。
その時、突然に家族が帰ってくる。
変わり映えしない家族の姿に安堵し、母親と抱擁するジュヌ。
そんな幻覚も見てしまうほどに疲弊しているのだった…。
その時、奇跡的にジュヌのスマホにメッセージが届く。
しかしすぐに電波が途切れてしまう。
気をもんだジュヌは、以前に動画で見た「自撮り棒」を使った電波受信方法を試すことにする。
眼下ではジュヌの肉を求めて、無数のゾンビが迫ってくる中で、見事に母親からのボイスメッセージを受け取ることができる。
母親たちは家族で父の会社へと逃げ込んだ事を聞き安堵するが、その直後、ゾンビに襲われる音声までもが録音されてしまっているのだった…。
憤怒したジュヌは、ゴルフクラブを持ち、廊下に出ると、廊下はゾンビだらけだった。
クラブでゾンビを滅多打ちにするとまた歩き始める。
そして、階段の踊り場付近でとあるゾンビを目撃する。
それは、初日に家に上げた隣人のゾンビだった。
直後、すぐに無数のゾンビがジュヌ目掛けて襲ってくる。
エレベーターの中までもゾンビで溢れかえる中、なんとか自分の部屋に戻ることができるのだった。
20日目。
完全に電気が途絶える。
「もう終わり」と諦めたジュヌは、「首吊り自殺」をしようと縄に首をかける。
足を離し、首が締め付けられる中で、突然レーザーポインターが胸に当てられる。
そしてポインターは壁にある「NO」の文字を指し示す。
なんとか縄から抜け出し、一命を取り留めたジュヌはレーザーポインターの方角を見ると、向かいのマンションに女性の生存者を見つけるのだった。
彼女は「翌朝7時に話そう」とメッセージを残すのだった。
翌朝、ジュヌがスマホの画面で自分の名前を伝えると、彼女もiPadで名前を「キム・ユビン」と教えてくれる。
彼女もまた1人で部屋に籠り、キャンプの道具を駆使してここまで生き延びてきた1人であった。
後日、空腹に耐えかねたジュヌの姿を見て、ユビンは食料をジュヌに送ろうと考える。
2つの部屋の間にロープを繋ぐために、紐を括りつけたボールを投げるが、もちろん届くはずもなく地面に落ちてしまう。
そこでジュヌは、自分のドローンにロープを繋ぎユビンの部屋まで飛ばすことで、ロープを繋ぎ、食料をわけてもらうことができるのだった。
その時、ユビンのボールのロープをゾンビが発見し、それを登ってきてしまう。
ユビン自身も弾き飛ばされ、気を失ってしまうピンチとなるが、ジュヌがドローンを駆使してユビンを救出するのだった。
ユビンの存在に「生き残れる可能性」を感じ始めたジュヌは、とある夜、道具と食料の調達に部屋を抜け出すこととなる。
眠る隣人のゾンビからカギを奪いその部屋に侵入すると、少しの食料とトランシーバーを入手するのだった。
翌日、今度はジュヌの方からトランシーバーと食料をユビンに送り、ユビンはこれに感謝する。
ジュヌ自身も「自殺を止めてくれた」と感謝をユビンに伝えるが、ユビン自身も自殺をしようとしたこともあったために、何も言えなかった。
その後、2人はトランシーバーで話しながらインスタントラーメンを調理する。
お互いのクセや境遇、ラーメンの作り方を話しながら囁かな談笑を楽しむのだった。
2人は、「このままでは埒が明かない」として、違う棟へと2人で逃げる計画を立てる。
これは「その棟の8階にはゾンビが居ない」というユビンが見つけた情報によるものだった。
そしていよいよ計画を決行する。
意外にも機敏なアクションを見せるユビンに驚きながらも、目的の8階にまでたどり着く。
しかし、その8階には無数のゾンビが隠れていた。
しかも、空いている部屋も無い。
一巻の終わりを迎えようとしたその時、後ろの部屋が急に開き、中の男性が救ってくれる。
助けてもらったことへの感謝もあるが、何よりも「まだ生存者がいた事」に対して驚く2人だった。
飲料水と食料を大量に分け与えてくれる男性だったが、ユビンはなかなか食料に対しての警戒を解かない。
黙々と食べるジュヌの姿を見て食べ始めるのだった。
男性が席を立った時、ユビンは違和感に気がつく。
それは哺乳瓶などが置かれている事だった。
「お子さんが居るんですか?」と尋ねると、男は「いや、だが子供が2人来た。」とだけ答える。
その瞬間、ジュヌが眠りに落ちてしまう。
同じくユビンも体が麻痺してしまう。
食料に何かが盛られていることを意味していた。
男はユビンを別室に運ぶと、バインド線で両手を固定する。
ユビンが目を覚ますと、目の前には一体の女性のゾンビが居た。
瞬間、ゾンビが襲ってくる。
男はゾンビを手綱で操り、「こうしないと妻は飢え死にしてしまう」とユビンをゾンビに食わせようとする。
絶体絶命のユビンであったが、拳銃を持ってジュヌが時間を稼ぐと、見事に妻のゾンビに男を襲わせることに成功する。
妻のゾンビに首を噛まれると、「これで良かったんだ」とゾンビを抱き寄せる男。
そして諭すかのような表情をユビンに送ると、ユビンは2人を射殺するのだった。
しかし、これで完全に逃げ場が無くなってしまった。
死を悟った2人であったが、ユビンはジュヌに「自分を殺すこと」をお願いする。
最初は拒否するジュヌだったが、最後にはその気持ちを汲み取って拳銃を構える。
まさに殺そうとした瞬間、どこからかヘリコプターの音が聞こえてくる。
2人は最後の力を振り絞って屋上へ上がることを決意する。
ゾンビが犇めくマンションの中で、必死に屋上へ向けての歩みを進める。
そしてとうとう屋上へたどり着くのだった。
しかし、屋上にはヘリコプターの姿や音さえも聞こえなかった。
そして次々とゾンビが追ってくる。
拳銃の銃弾も切れたその時、最後からヘリコプターと軍隊が2人を援護する。
マシンガンでゾンビを一網打尽にすると2人はヘリコプターに乗せられ、無事に救出される。
ヘリコプターの中で安堵と空虚の表情を浮かべる2人だったが、一斉にスマホの通知音が鳴り始め、笑顔で顔を見合わせる2人だった。
ニュースでは「SNSの救助要請に従って救助を進めている」と報道する。
そしてその救助のためのハッシュタグはジュヌが最初に始めた「#生き残らねば」となっているのだった。
ネタバレ感想と考察
擦り尽くされたジャンルで描かれる最大の仕掛け…!
現代の映画史においてこすり尽くされた映画のジャンル…それが「ゾンビサバイバル」である。
「アイアムレジェンド」そして「ウォーキングデッド」など、世界での認識となりつつあるジャンルであるが、それが描かれた本作「#生きている」だ。
一見何の変哲もないゾンビサバイバル作品に見えて、実は新しい感覚を纏った作品になっているのが今作だろう。
それは、今回の映画が「非常に現代的に描かれていること」である。
舞台は韓国、それは先進国である国々と同じ水準で日常生活が送られている中で繰り広げられる。
主人公のジュヌは「引きこもりのニート」であり、ネットゲームに染まった生活を送っていた。
マンションの上階で、ネット環境も整っている…そんな「限りなく現代に近い日常」で描かれるゾンビサバイバルこそが、本作の醍醐味と言っていいだろう。
次に描かれるのが「ドローン」の存在である。
これは本作の脚本において、映画としての面白みを加える重要なツールとなっていた。
ネットに生きる若者が、自身の持つ現代的能力を駆使して打開していく脚本も、目が離せない点となっているだろう。
そしてその逆である「電波が届かない」や「電池が足りない」といったデメリットも、より詳細的に描かれる作品となっていた。
ゾンビスリラーとは思えない!?オシャレすぎる伏線回収とラスト!!
より「現代的」に描かれたゾンビスリラー作品ではあるが、そんな現代的な要素は本作の最重要テーマとしても織り込まれている。
それは「#(ハッシュタグ)」という概念だ。
facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)などでよく見るこの光景、利用したことがある鑑賞者の皆さんも多いのではないだろうか?
この#(ハッシュタグ)が付けられた投稿だけを拾うことができる機能であるが、本作はなんとそのハッシュタグ自体がタイトルとなっている。
もちろん作中でもこのタイトル「#生きている」は、ハッシュタグとして利用され、本作の一番の伏線になっている。
物語の中盤、主人公のジュヌが思い付きで作成したタグであるが、映画の最後ではこれがバズり、救助要請の手段として機能していたことは、思いがけない伏線回収となった。
もちろん本作でもそうであるように、「現代的ツール」は「サバイバルでは役に立たないもの」として描かれることが多いが、最後はそんな「現代ツール」によって助けられるサバイバルは本作以外に無いだろう。
敵は「ゾンビ」ではなく「孤独」だった。
物語を形成するもう一つの重要な要素、これが「孤独との闘い」だろう。
主人公ジュヌは、物語の中盤まで残り少ない食料で籠城し、「家族が帰宅する幻覚」まで見るようになってしまう。
そこに加えて、「家族の訃報」とも思われる生々しいメッセージ…最終的に「首吊り自殺」を実行しようとしてしまうジュヌの気持ちも痛いほどわかってしまうシーンとなっていた。
そして本作のヒロインである「ユビン」の存在。
彼女の登場によって、「孤独」からの解放と「生きる意味」を見出すきっかけにもなっていた。
トランシーバーを用いたユビンとの会話の際、ジュヌは「ユビンに命を救われた」と語るが、ユビン自身は「あなたに『生きる意志』があっただけ」と返している。
そしてユビンの部屋にも「首吊りロープ」がぶら下がっていた。
ジュヌが自殺を実行しようとした際に、すぐさまに気が付いたユビンは、恐らくジュヌの生存を以前から認知していたと考えられる。
そんなユビンもまた、向かいマンションのジュヌを発見することによって「孤独感」から解放され、自殺を抑制する子ができていたのかもしれない。
また、本作最後に登場する「ゾンビとなった妻を匿う男性」も、「孤独」にならないために妻を生かしていたのだろうか…?
以外に多い!?その他の伏線の数々。
タイトル自体が伏線となっている本作ではあるが、それ意外にも伏線が潜んでいるのに皆さんは気が付いただろうか?
・ドローンの高さで「電波の入る位置」を図っていた!?
ジュヌがスマホを括り付けてドローンを飛ばすシーン、そのシーンで電波が届く位置が判明するが、ジュヌ自身が「自撮り棒」によってスマホを伸ばす行為は「8階の高さ」まで到達させるためだったとも考えられる。
・「ゾンビの行動は習慣化する」というテレビの報道。
テレビのニュース番組で「生きていた時の習慣が抜けないゾンビが居る」という報道がサラッと流れるが、実はこれも伏線となっていた。
物語冒頭にジュヌの家に逃げ込んできた隣人は、ジュヌの部屋付近で常に徘徊していたのだ。
更には、ジュヌが隣人の部屋に侵入した際に後ろからも襲い掛かる。
そんな伏線が張られながらも、作品としての「ツッコミどころ」も多いせいか、まだまだ「B級映画」としての評価が多いようであるが、ゾンビサバイバルを鑑賞する段階で、そんなことには触れないほうがいいだろう…。