本記事は、ドラマ「サンクチュアリ-聖域-」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「サンクチュアリ-聖域-」
2023年、江口カン監督、脚本が金沢知樹によって制作された邦画ドラマ。
一人の相撲取りの半生を描いた物語。
全8話のストーリー。
あらすじ
舞台は日本、北九州の小さな町に生まれた「小瀬清」は、柔道をたしなみながらも荒んだ学生生活を送っていた。
実家の寿司屋が潰れてからというもの、弱気な父親と飲んだくれの母親、そして借金に追われる生活で腐りつつあった。
そんなある日、東京、大相撲の「猿将部屋」から「相撲取り」としてのスカウトを受ける。
最初は全くやる気が無い清だったが、親方の手にする大金を見ると心が揺れ動く…。
出演役者
本作の主人公、小瀬清(猿桜)を演じるのが「一ノ瀬ワタル」
猿将部屋と深い関係を持つ関東新聞社の記者、国嶋を演じるのが「忽那汐里」
猿将部屋の呼出、正喜を演じるのが「染谷将太」
猿桜の師匠に当たる猿将を演じるのが「ピエール瀧」
猿将部屋の女将、花を演じるのが「小雪」
配信コンテンツ
「サンクチュアリ-聖域-」は今現在、Netflix、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
世界に向けた「相撲ドラマ」
Netflix、Amazonプライム…「サブスク動画配信サイト」の戦国時代と言ってもいい昨今、日本でも数々のドラマが配信されている。
その作品の多くは「24」「プリズン・ブレイク」など洋画が中心である中で、日本から一つのドラマが生まれたのが本作だ。
今回描かれるのは「相撲」という日本の伝統的スポーツカルチャーで、タイトルが横文字であることからも「世界へ向けて発信された作品」であると考えていい。
考えてみれば…海外でも数々のドラマは存在しているが、そもそも「スポーツ」を題材とする作品はあまり多くない印象を受ける。
外国人が思い浮かべる「日本のカルチャー」と言えば、寿司、富士山、そして相撲などがあり、そんな相撲にスポットライトを当てた作品は斬新な面白さを与えてくれた。
「相撲」は意外とドラマティック!?
ドラマや映画作品において「相撲」が選ばれることの面白さは、実は相撲のその「システム」にあると筆者は考えている。
例えばテニスであれば、世界ランキング1位、2位…であるように「数字での格付け」が行われるのに対して、相撲は相撲でしか使われない表現がされる。
それが「番付」というものだ
・横綱
・大関
・関脇
・小結
・前頭
これが他のスポーツで言うところの「ランキング1位〜5位」となる。
そしてこれがテレビ放送される「幕内」という部類の大相撲だ。
その下にある「幕下」という部門がある。
・十両(「関取」という括りでは上位、幕内の下であり幕下には属さない)
・幕下
・三段目
・序二段
・序ノ口
これらを「力士養成員」と呼び、今回猿桜たちが戦うのがこの舞台だ。
ランキングが順位で表されず、「番付」として表現される縦構造の世界観がとてもドラマチックではないだろうか?
これまでに「大相撲」に全く興味が無かった人も多いと思うが、今作をきっかけに新たな「相撲ファン」も登場するだろう。
キャスティングが絶妙すぎる!?
今回の映画、どっからどう見ても相撲取りだけの世界観が描かれるが、彼らを演じるのは一体何者なのだろう?
実は本作、「本物の相撲取り」は数人程度で、ほとんどが俳優たちの「肉体改造」によって体を作り上げている。
彼らは専門の指導の元で約1年間の相撲の稽古を行い、今回の撮影に望んだのだ。
今回の主人公である「一ノ瀬ワタル」は俳優でありながら「元格闘家」の経歴を持つ役者であり、過去にも「CLOSEクローズ」シリーズなどにも出演している。
また、役中の猿桜は「福岡県北九州市出身」という経歴のもと役を演じていたが、実際の一ノ瀬も「福岡県久留米市」の生まれとなる。
劇中の彼の九州弁全開のセリフは、生粋のモノなのだろう…。
相撲の黒い部分と「根性論」について。
日本で大衆的なスポーツとして嗜まれる二大巨頭と言えば、間違いなく「野球」と「相撲」となるだろう。
そしてその二つの競技に共通している要素がある。
それは「賭けや八百長問題がある」ということだ。
本作は相撲120%の全力投球青春ドラマではなく、「相撲」というスポーツのリアルな闇も入り込む世界観である。
フタを開けて見れば「金」「女」そして「酒」…欲望の入り交じる世界観での夜の東京が描かれるのもなかなかリアルな要素だろう。
事実、主人公である猿桜も、相撲を始めるきっかけは「金」であるのだ。
そして本作品には、海外では到底理解し難い価値観もテーマとなってくる。
それが「根性論」というものだ。
猿桜の師匠である猿将親方を演じるのは「ピエール瀧」であり、2010年「アウトレイジ」や、2013年「凶悪」での印象が強い極悪キャラクターとなっていたが、そんな彼が竹刀を片手に相撲取りの稽古で扱き(しごき)倒す世界観は、海外の人々にはどう映るのだろうか…。
また、そんな「根性論」をより際立たせるキャラクターが忽那汐里演じる「国嶋」というキャラクター。
帰国子女で生意気で、パワハラやモラハラに敏感な現代の若者目線が入っているのが、「根性論」を意識させている何よりの証拠だろう。
日本での田舎のヤンキーカルチャー、そして「根性論」という価値観が海外に一体、どのような影響を及ぼすのか?
この先の評価が楽しみだと感じた。