ミスト【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

ミスト

2007年、フランク・ダラボン監督により制作された作品。
1980年にスティーヴン・キングにより発行された小説「霧」を原作として制作された。
霧が覆う町で人々が次々に襲われるSFホラー作品。
上映時間は125分。

あらすじ

舞台はアメリカの小さな町。
画家として生計を立てる一家のドレイトン家、大黒柱の「デヴィッド」が主人公。
小さな一軒家がある日、大きな嵐に見舞われる。
史上最悪規模のその嵐はすべてを巻き込みドレイトン家も大きな被害を受けた。
家の立て直しのために、一人息子の「ビリー」と共にスーパーに買い物に行くが、
スーパー内で今までに見たことのない濃霧に見舞われる。

怪しげな雰囲気の中、濃霧の中に消えていく人々もいたが、
霧の中からは悲鳴が聞こえ、その人たちは戻ってはこなかった…。

出演役者

今作の主人公であり、一家の父のデヴィッドを演じるのが「トーマス・ジェーン」

 

スーパー内で出会う女性のアマンダを演じるのが「ローリー・ホールデン」

 

デヴィッドの一人息子であるビリーを演じるのが「ネイサン・ギャンブル」

見どころ①「フランク・ダラボン監督が描く、ホラー作品の形」

本作の監督を請け負うフランク・ダラボンはアメリカの誇る、
映画の名監督である。
かの有名な「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」などの彼が描いている。

「ヒューマンドラマ」を描いているイメージが強いフランク監督が今回描くのは、
なんとSFホラー作品。
どのような描写で鑑賞者を楽しませるのか…期待が膨らむ作品であったが、
我々の期待通り、通常のホラー作品とは一風変わった脚本となった。

見どころ②「「鬱映画」の代名詞、「ラスト15分の衝撃」の名は伊達じゃない!」

品策の公開時のキャッチフレーズは「ラスト15分の衝撃」
その言葉通り、ラストの展開は全く想像がつかないラストとなっていた。
また今作は「鬱映画」としての評価も高く、このワードで検索をかけるだけで、
トップに躍り出るほどの有名作品である。

その「衝撃のラスト」にあなたは耐えられるだろうか?

配信コンテンツ

「ミスト」は今現在、
Amazonプライム、Netflix、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。

Amazonプライムで30日間お試し無料登録

U-NEXTで30日間お試し無料登録

Huluで2週間お試し無料登録




ネタバレあらすじ

舞台はアメリカの小さな町。
画家として生計を立てる一家のドレイトン家、大黒柱の「デヴィッド」が主人公。
小さな一軒家がある日、大きな嵐に見舞われる。
史上最悪規模のその嵐はすべてを巻き込みドレイトン家も大きな被害を受けた。
不幸中の幸い、家族にケガは無かったが、嵐により家のそばの巨木が倒れ、
一階の窓ガラスが割れてしまう。
窓ガラスの補修のため、妻のステファニーを残し、
一人息子のビリーと共にスーパーに買い出しに行く。
その際、隣人であるブレントも車に同乗し、スーパーへ向かう。

嵐の影響で店は混雑する中、
買い物を悠々と済ますデヴィッドであったが、店外ではパトカーや救急車が走り回りサイレンが鳴り始める。
そして、突如スーパーの周りは、今までに見たことのない濃霧に見舞われる。

店の中から様子を見るデヴィッドだったが、その直後、鼻血を流した男性が店内へ逃げ込み、
「霧の中に何かがいる!」と叫ぶ。
店内の一同が戸惑う中、不安に駆られた客たちは店内へ閉じこもった。
自宅に2人の子供を残してきた女性は家に帰ることを言い出し、誰か一緒に付いて来てくれるように懇願したが、
皆に拒否されたために「全員地獄に落ちればいい」と言い残して1人で霧の中へと出ていった。

そんな中、デヴィッドとビリーは教師のアマンダと仲良くなる。
デヴィッドはメカニックのマイロン、ジム、ノーム、そして副店長のオリー・ウィークスと共に、
倉庫を調べ、店外の排気口の様子を見るためにシャッターを開けるが、
そこから謎の触手が侵入してきてノームが連れ去られてしまう。

デヴィッドたちは店外に謎の生物がいることを皆に伝えたが、
ノートンをはじめとする懐疑的な者たちは救助を要請するために脱出することを主張するのだった。
デヴィッドは彼らがどこまで行けるのかを調べるため、外出する1人の男にロープを結びつけ外出してもらった。
ノートンたちが霧の中に消えロープは少しずつ引き寄せられるが突然ロープがとても強い力で引っ張られる。
ロープを引張ていた力がなくなりたぐり寄せると、男の下半身だけが帰還した。
夜になると、店内の光に寄せられて巨大な羽虫翼竜のような怪物が窓を破り店内に侵入し、
デヴィッドたちは辛くもこれを撃退するが店内でかなりの犠牲者が出てしまう。

店内にはユダヤ教の狂信者であるカーモディが居たが、
その混乱を受けカーモディの狂信的発言を信じる者が現れ始める。
そんな中、デヴィッドたちは負傷者を助けるため隣の薬局へ医療物資を取りに行った。
薬局内は蜘蛛の糸に覆われており、デヴィッドたちは柱にくくりつけられた軍の人間を発見する。
謝り続ける軍の男の体から無数に出てくる蜘蛛のような生物の襲撃を受けたデヴィッドたちは犠牲者を出しつつも店へと逃げ戻る。
店に戻ると、3人の兵士のうち2人が自殺していた。
残り1人のジェサップ二等兵「軍が異次元を観察する『アローヘッド計画』を実行している」という噂について問い詰められたうえ、
そのことをカーモディの信者となったジムに聞かれてしまう。
カーモディは「ジェサップに責任がある」と演説し、彼は店内の人々にナイフで何度も刺され、
生贄として店外に放り出され何者かに霧の中へと連れ攫われる。

カーモディとその信者たちを恐れたデヴィッドと一部の生存者たちは物資をかき集めて店外への脱出を計画する。
夜が明けてデヴィッドたちは動き出すが彼らの前に立ちはだかったカーモディは「ビリーを生贄に差し出せ」と要求する。
信者の男たちとの戦いのなかオリーがカーモディを射殺し店内の脱出に成功する。
店から車へ向かう最中、三人が怪物の餌食となり一人は間に合わず慌てて店内に引き返した。
結局、デヴィッドの車に乗り込めたのは彼とアマンダ、ビリー、ダン、アイリーンの計5名であった。
信者たちが静観する中デヴィッドの車は走り去っていく。

霧の中、デヴィッドは自宅へ辿り着くが妻のステファニーは屋外で糸に巻かれて死んでいた。
悲しみをこらえ南に向かったデヴィッドたちは生存者に遭うことも無く、崩壊した街の風景や何百フィートもある巨大な怪物を目撃する。
そして、ついにデヴィッドの車はガス欠となり、濃霧のど真ん中で行き場を失う。
彼ら4人の大人は、眠ってしまったビリーの横で生還を断念する。

オリーが怪物に喰われる際に落とした銃をデヴィッドは持っていたが、それには弾丸が4発しか残っていなかったため、
彼は「自分は何とかする」と述べてビリーら4人を射殺した。
半狂乱となったデヴィッドは車を飛び出し「自分を殺せ」と叫ぶ。
だがその直後、霧の中からは現れたのは戦車や火炎放射器で怪物たちを焼き殺す兵隊たち、
そして霧が発生してすぐに店を出ていった女性と彼女の2人の子供を含む生存者らを載せたトラックだった。

判断を間違え、無駄に命を散らしてしまったデヴィッドは霧が晴れていく中、後悔の念にかられて絶叫し続けた。

ネタバレ徹底考察

「主人公こそ正義」という概念を打ち砕く異質な作品

「鬱映画」の名を欲しいままにする今作、
その呼び名には偽りない衝撃のラストとなった。

主人公が生き残っていながらも、ここまでの「バッドエンド」は経験したことが無い。
…いや、寧ろ主人公も一緒に死んでしまったほうがハッピーであったと言えるだろう。

主人公であるデヴィッドは、映画の冒頭から主導権を握り、
謎の触手も撃退し、店外に薬も取りに行き、
生き残っているメンバーの中では間違いなく「頼れるリーダー」として機能していた。
これまでのホラー映画のパターンからも「彼の判断に従っていれば、まず死ぬことは無い」と、
鑑賞者でさえも考えるだろう。

確実に生き残るであろう人物の死、そして主人公の判断ミスには誰もが驚愕したラストであり、
映画を振り返り、「あの時逃げていなければ」「あの時銃を拾っていなければ」など、
後悔の念は拭うことができない。

極めつけは、最初に出ていった「死亡フラグ」が完全に成立していた女性、
彼女の生存を確認させるところに、フランク監督の性格の悪さ…基、才能を感じる作品である。

SFホラーに見せかけたサイコスリラー作品

物語の本筋に食い込んでくる数々のモンスターたち、
そんなモンスターと戦っている恐怖もさることながら、
最大の恐怖は「人間」であり「集団心理」だと感じた。

外に出ると死の危険が迫り、外部とも連絡を取ることができない密室空間で、
人間たちが陥るパニックがリアルに描写されている。

その中でも集団心理の中核を担った狂言者のカーモディ。
じわじわと人々の心を掌握し取り込んでいく群衆の姿にこそ、本作最大の恐怖を感じたのだ。

原作小説の違うラストと今作に込められたメッセージ

原作小説であるスティーヴン・キングの「霧」では、
今作の映画とは違った結末となる。

車でスーパーを脱出するところまでは同じだが、
最後は雑音だらけのラジオから、とある街の名前と「ホープ(希望)」という言葉を聞いて終わる。
映画よりは少しだけ救いのあるような終わり方である。

今作の映画のラストシーンの描き方について、スティーヴンに聞かせたところ、賞賛し、
「ホラー映画を見に行く人たちは、必ずしもハッピーエンドを望んでいるわけではない」
とコメントしたという。

そんな「救いのない」映画のラストではあるが、
逆説的に紐解いてみると、「諦めたらそこで終わり」というメッセージにも取れる。
事実、あの状況で「自殺」を選ばなければ全員が生還できた未来があり、
外に逃げる手もあっただろう。

「名誉ある死」を選びたいあまり、生き残るチャンスを逃してしまう、
人間としてのプライドが伝わってくるシーンとなった。

監督「フランク・ダラボン」と小説家「スティーヴン・キング」の関係

監督のフランク・ダラボンは、原作小説であるを読んだ際、
これの映画化で監督デビューをしようと考えていた。

結果、フランク監督の初監督作品は「ショーシャンクの空に」となったが、
これも原作となる小説はスティーヴン・キングが描いたものだった。

ちなみに、同じくフランク監督の「グリーンマイル」も、
原作小説はスティーヴンの書いたものである。