「日本で一番悪い奴ら」ネタバレ感想と考察【実際にあった警察内の闇を描く】

本記事は、映画「日本で一番悪い奴ら」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

日本で一番悪い奴ら

2016年、白石和彌監督により制作された作品。

原作は稲葉圭昭による『恥さらし ―北海道警 悪徳刑事の告白―』であり、実際にあった「稲葉事件」という事件をモチーフに作られている。

ちなみに「恥さらし」の著者である稲葉圭昭は、実際の稲葉事件の中心人物だった。

上映時間は135分。

あらすじ

舞台は日本、北海道。

大学時代に柔道の日本チャンピオンとなった諸星要一は、卒業後、北海道警察に入り、機動捜査隊に配属となった。

荒くれ物が集まる中、デスクワークばかりを担当し、なかなか結果が出せずにいた。

そんなある日、上司である村井に諭され、「点数稼ぎ」をすることが仕事であることを教えられる。

今まで、真面目な青年だった諸星は、これに感化され、変わることを決意するのだった。

出演役者

今作の主人公「諸星要一」を演じたのが「綾野剛」

 

諸星の上司であり、敏腕刑事とされる「村井定夫」を演じるのが「ピエール瀧」

 

諸星とつるむことになるヤクザ「黒岩勝典」を演じるのが「中村獅童」

配信コンテンツ

「日本で一番悪い奴ら」は今現在、

Amazonプライム、NETFLIX、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

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舞台は日本、北海道。大学時代に柔道の日本チャンピオンとなった諸星要一は、卒業後、北海道警察に入り、機動捜査隊に配属となった。荒くれ物が集まる中、デスクワークばかりを担当し、なかなか結果が出せずにいた。

そんなある日、上司である村井に諭され、「点数稼ぎ」をすることが仕事であることを教えられる。

今まで、真面目な青年だった諸星は、これに感化され、変わることを決意するのだった。

ヤクザやチンピラに自分の名刺を配り歩き、歯向かう相手には腕っぷしでねじ伏せるのだった。

ヤクザとの繋がりができたことにより、彼の元には犯罪情報がどんどん舞い込んできた。

いつしか彼は「道警のエース」と呼ばれるようになっていた。

諸星は、ヤクザの親分「黒岩勝典」

麻薬の運び屋「山辺太郎」

盗難車の転売屋「アクラム・ラシード」の三人とチームを組み、情報を掴んでいくこととなる。

その後、彼はその「拳銃」の押収率が認められ、「銃器対策課」に配属となる。

毎月の「銃器押収率」を警察内で競い合う競争に巻き込まれ、彼は自身のコネを使い、拳銃をどんどん挙げていくのだった。

「銃器対策課」を名乗る以上、数を挙げなくてはいけないと考えた諸星は「ロシアから拳銃を密輸し、そのまま警察に届ける」という作戦を刊行する。

しかしこれは失敗し、大量の麻薬の密輸を許してしまうという事態になるのだった。

いつしか彼は「麻薬取引」にも手を出し、「拳銃」を挙げることに血眼になってしまうのだった。

結果が出せなくなった諸星はやさぐれ、ついには自身までもがクスリに手を出してしまう。

そんな矢先、彼に言い渡されたのは、「生活安全課」への転勤だった。

数年後、大人しく働いていた諸星だったが、夕張の町で、細々と生活しながらも、クスリだけは辞めることができなかった。

そんな彼に「逮捕状」が出されることとなる。

また、時を同じくして、昔つるんでいた「山辺太郎」も逮捕され、獄中で自殺をしてしまう。

牢屋に入れられた諸星は、腐っていた道警の体制管理について弁護士からも話すよう促されるも、笑顔で道警を擁護していたが、山辺の死亡を知ると、一変して道警の組織犯罪を認めるのだった。

ネタバレ考察

社会の闇がコメディチックに描かれる

実際に発生した「稲葉事件」その事件の立役者である稲葉圭昭の半生を綴った映画であるが、事件の内容としては、正直、重い。

しかし、拳銃、女、クスリ、ありとあらゆる「日本の闇」が描写される中で、今作はとてもコメディチックに描かれた作品となったのだ。

今作の事件、そして映画に落とし込んでの描かれ方、役者陣の演技、暴力的でありながらもどこか笑ってしまうような作風こそが、今作の見どころだろう。

今作はベースとなる物語がある。

今作の原作となる小説は稲葉圭昭という人による「恥さらし―北海道警 悪徳刑事の告白―」という小説が元となっている。

そしてこの原作者である「稲葉圭昭」こそ、北海道県警で起きた実際の事件「稲葉事件」の立役者であるのだ。

この本を元にしたノンフィクション小説として「織川隆」の「日本で一番悪い奴ら」という小説があるが、今作のタイトルはそこから付けられた。

実際の事件をベースに描かれているとは言っても、今作ではフィクションとなる部分はとても少なく、リアルに描かれている印象を持った。

当時の道警の内部事情のリアルな部分や、それらをベースにした白石和彌監督の演出などが本作の見どころであるだろう。




ドロドロな物語をキャッチーに描く作品。

物語の内容は、リアルであることを含めて鑑賞しても、かなりドロドロした物語であるだろう。

そんな物語を見事にキャッチーに描き上げ、「コメディ映画」のような演出で世に放ったのは、なかなか面白い試みだっただろう。

日本に存在する「事件」が映画に絡んできた時に、こんなにもポップに描かれる作品はそう多くはない。

ドラッグや拳銃、そしてセックスのシーンなど、あらゆる箇所で「笑い」を取り入れた作品に仕上がっていて、普段は泥臭い映画を好まない人でも、低いハードルで鑑賞できる魅力がこの作品にはある。

そして今作のキャッチーさは、キャスティングされた役者にも仕掛けがある。

濃いキャラクターを見事に演じた役者達。

このような作品の主演を務める役者、普段の映画であれば、男らしく昭和を匂わす役者が抜擢されそうなものだが、そんな想像を容易に裏切るキャスティングとなった。

主演は今を担う名役者「綾野剛」どちらかと言うと若者人気が強く、サブカルチャー向けのキャラクターを持つ彼が主役に当てられた。

一風変わったキャスティングに感じたが、これまたそんな期待を裏切るような演技を彼は見せてくれたのだ。

真面目な青年期から、段々と黒く染っていく変わりよう、どこか危険な香りが漂う笑みや、その立ち振る舞いに、「綾野剛らしさ」は感じることが無かったのだ。

彼の「役者」としての底力を垣間見た作品であり、こんなにも諸星を違和感無く演じてくれるとは思わなかった。

そして諸星の右腕、ヤクザである「黒岩」を演じるのが、「中村獅童」

これは正直にハマり役だった。

彼の持つ独特なキャラクターと、安心感すら与えてくれる演技力は、見事にヤクザの親分を演じきってくれたのだ。

さらに、今作の登場人物は皆が濃いキャラクターを持ち、作品を盛り上げてくれるが、その中でもずば抜けて異彩を放っていたのが、「ピエール瀧」だろう。

北野武の「アウトレイジ」でもヤクザとして出演するほどの演技力を持ち、今作の彼は警察側の人間としての登場する。

彼自身の持つキャラクターと、演技には思えないような演技力にも要注目だろう。