本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
ロシアン・スナイパー
2015年、セルゲイ・モクリツキー監督によって
制作されたロシアの戦争映画。
第二次世界大戦にて活躍した
ソ連の女性狙撃手
「リュドミラ・パヴリチェンコ」の
半生を綴ったストーリー。
上映時間は123分。
あらすじ
時は1974年、
アメリカの大統領婦人である
「エレノア・ルーズベルト」が
ロシアに赴いた際、
一人の女性兵士と出会うこととなる。
彼女の名前は「リュドミラ・パヴリチェンコ」
彼女はソ連の軍人「狙撃手」として、
309人を射殺するという大きな記録を持っていた。
女性のか弱さを一切見せることなく、
また少しも笑みを見せないその姿に、
エレノアは彼女自身に興味を持っていく…。
出演役者
本作の主人公「リュドミラ・パヴリチェンコ」を演じる
「ユリア・ペレシルド」
アメリカの大統領婦人、
「エレノア・ルーズベルト」を演じるのが
「ジョアン・ブラックハム」
見どころ「リアルで存在した伝説の狙撃手」
タイトル通り、ソ連の狙撃手の話であるが、
この「リュドミラ・パヴリチェンコ」は
実際に存在した人物だった。
第二次世界大戦の最中、
ソ連の栄光のために数々の働きを見せた
リアルとは思えないような
彼女の仕事ぶりが描かれるのが
本作の見どころだろう。
「死の女」と呼ばれ、
史上最高の女性スナイパーと呼ばれた
彼女の人生をリアルだと感じながら
鑑賞してほしい。
配信コンテンツ
「ロシアン・スナイパー」は今現在、
Amazonプライム、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
時は1974年、
アメリカの大統領婦人である
「エレノア・ルーズベルト」が
ロシアに赴いた際、
一人の女性兵士と出会うこととなる。
彼女の名前は「リュドミラ・パヴリチェンコ」
彼女はソ連の軍人「狙撃手」として、
309人を射殺するという大きな記録を持っていた。
女性のか弱さを一切見せることなく、
また少しも笑みを見せないその姿に、
エレノアは彼女自身に興味を持っていく…。
時は遡り1937年、
大学生だったリュドミラは
普通の成績優秀な女学生だった。
友達とアミューズメントの「射撃」に出かけた際、
男子たちを圧倒する成績を残すのだった。
その成績はすぐに大学、更には軍の射撃舞台にまで広まり、
「女性兵士」を育成する射撃訓練に
大学を休学し、参加させられるのだった。
訓練を終え、再び大学生として生活を始めた1941年、
医師を志す「ボリス」に誘惑されながらも、
戦争に赴くのだった。
ドイツ兵とのオデッサでの戦争の際、
「狙撃手」として優秀な功績を収め、
「トカレフ半自動小銃」を送られる。
「100人のファシストを殺す」と誓うリュドミラだった。
その後、優秀な成績を収めながらも、
リュドミラは一人の隊長に恋をすることとなる。
初めての恋に焦がれるリュドミラだったが、
「自分に誓った」と語る隊長にはいい返事を貰うことが
出来なかったのだった。
敵の爆撃を受けた際、
リュドミラは負傷を負ってしまうこととなる。
隊長に担がれ医者の元に運ばれるが、
その担当医師は、
今では「戦場の医師」として活躍するドリスだった。
故郷にて、傷を癒した彼女は、
戦地に赴いていた仲間たちを迎え入れる立場となるが、
隊長の自動小銃を受け取ることとなる。
これは「隊長の死」を意味するのだった。
完全回復したリュドミラは再び戦地に赴くこととなるが、
新しい隊長とコンビを組み、ロシア兵たちを次々に打ち倒していく。
いつしか新たな隊長との間にも恋愛関係ができていた。
二人での故郷と戦地の往来が日常と化したある日、
リュドミラは体調に対し「子供を作りたい」と述べるのだった。
二人で戦地を闊歩していたある日、
敵の罠にかかり、爆撃を受けるリュドミラと隊長。
隊長がリュドミラを庇い、死亡してしまうのだった。
再び自軍にて、ドリスの治療を受けるリュドミラだったが、
「もう戦地には行きたくない」という意向を示す。
しかし、リュドミラにしか成し遂げることができない
狙撃任務を言い渡され、「二人の愛する人の死」を考え、
涙を流し、これを受けるのだった。
ドイツ軍の名狙撃手との一騎打ちとなったリュドミラは、
我慢に我慢を重ね、何日間も狙撃体制の根競べを続ける。
結果、これを制したリュドミラは、
ドイツ軍兵士の懐の家族写真を目にすると、
兵士の目をそっと閉じる。
最大の任務を成し遂げたリュドミラは、
ドリスに再度告白され、これを受け入れるのだった。
ドリスの計らいで帰国することが許されたリュドミラであったが、
ドリスは一緒には帰らなかった。
愛する人を失う恐怖から、「帰りたくない」と叫ぶが、
ドリスを残し、リュドミラは帰ることとなる。
そして、ドリスは帰ってくることは無かった。
舞台は再び1941年、
大統領婦人と良好な関係を築いたリュドミラは、
大衆やメディアを前にして、
「ロシアの英雄」としてスピーチを行うこととなる。
「私は309人のファシストを殺しました。
あなた方は長い間、私の影に隠れてはいませんか?」
その後、彼女は戦地に戻り、狙撃教育隊の教官となる。
国家最高の勲章である「ソ連邦英雄」を授与される。
そして1957年、モスクワ。
大統領婦人とリュドミラとその息子は、
オペラを鑑賞するのだった。
ネタバレ考察
戦争映画じゃないような戦争映画
「ロシアン・スナイパー」
タイトルを見ても、ジャケットを見ても、
確実に「戦争映画」であることが
わかるような今作であったが、
初めて鑑賞してみて、
「戦争映画」ではなく、
彼女自身の「伝記映画」としての面が
大きく作られた作品だと感じたのだ。
血なまぐさい戦争シーンだけではなく、
リュミドラの学生時代、訓練時代などの
人生そのものが描かれ、
彼女自身の心境や葛藤を描くことに
時間を割いた作品であることが、
新しい形の「戦争映画」だと感じたのだ。
同じジャンルの作品で、
あの「クリント・イーストウッド」が手がける、
「アメリカン・スナイパー」という映画があるが、
殆どが「戦争シーン」などで構成された
作品であり、
同じ「伝記、戦争映画」であっても、
全く違う作りとなる作品だったのだ。
女性主人公ならではの作品だった。
通常、「戦争映画」と言えば
屈強な男が主人公となる作品が多いが、
今作の主人公は屈強ではあっても
「女性」だった。
戦争映画において女性が主人公となるのは
かなり珍しいパターンの作品ではあるが、
そんな女性を主人公とした映画の描かれ方は
なかなか斬新な演出も含まれていた。
今作は他の映画ではあまり見ない、
「戦場での恋愛」が
描かれる作品だったのだ。
ただただ明るい恋愛映画ではなく、
しっかりと環境や空気感を壊さない上で
展開される、キャラクターたちの関係に、
今まで感じたことの無い感情を覚える作品だった。
映画の色合いの使い方が特殊だった。
本作の数々のシーン、
特に戦場でのシーンでは、
通常描かれる映画では
見られない趣向が成された。
それは「色使い」である。
全体的にあっさりと、セピア調に染まった作品の色使いこそ、
本作の「戦場感」を語る上での
作風を確立させる演出となっただろう。
顔に付いた泥や、土煙、砂煙など、
血なまぐさい戦いを、
どこか哀愁的に描くことに
重きを置いた作品であることを感じたのだ。
一人の人間の伝記映画としての面白い構成。
本作の映画では、一人の人間の半生を綴る
伝記映画としての一面も
大きな作品だったが、
彼女の人生を映すのに、
なかなかに面白い手法が取られただろう。
それは現代と過去の同時進行による
作品だったことだった。
物語の始まり、
彼女は既に309人の人間を射殺し、
戦場を生き抜いてきた人間として
婦人と出会うこととなるが、
そんな婦人との関係を築く中で、
チャプター毎に過去の戦場でのシーンも
同時進行される作りとなっているのだ。
交互に繰り返される過去と現代、
そんな中で少しづつ
リュミドラという人間を理解しながら、
映画を見進めていくことこそが、
本作の特殊であり面白い構成と
なっていただろう。
過去の話であるにも関わらず、
「リアル感」を感じることのできる
演出として機能しているだろう。