本記事は、映画「ポラロイド」のネタバレを含んだ感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
ポラロイド
2017年、ラース・クレヴバーグ監督によって製作された作品。
このクレヴバーグ監督、再編集された「チャイルド・プレイ」を描いた監督としても有名で、また本作に携わった製作陣は過去に「IT」も世に放っている。
カメラに映った人間に次々と災いが降り注ぐパニックホラー作品。
上映時間は88分。
あらすじ
舞台はアメリカ、カメラを趣味とする女子高生バードは、アルバイトをしている骨とう品店で、とあるポラロイドカメラを入手する。
精巧な作りの古いカメラに喜び、一緒に持ち歩くまでのお気に入りだった。
バードは、内気ながらも数々の友達を写真に収めていくが、カメラで撮った者は次々に何者かに殺されていくのだった…。
出演役者
本作の主人公、バードを演じるのが「キャスリン・プレスコット」
イギリス出身の若き女優で、映画作品よりもTVドラマへの出演が目立つ女優。
アメリカで人気のドラマ「スキンズ」に出演している。
バードが好意を寄せる男の子、コナーを演じるのが「タイラー・ヤング」
アメリカ合衆国の若き俳優であるが、映画作品への出演は少ないようだ。
コナーの友達の女の子、ケイシーを演じるのが「サマンサ・ローガン」
アメリカの黒人系の女優であるが、彼女もまた映画作品への出演は少ない。
ネタバレ感想と考察
安定感ある王道ストーリーを楽しむ。
今回の作品、知名度としてはそこまで高くはない作品に仕上がっていることから、「A級ホラー」ではないことがわかるが、実体のあるバケモノが躍動する系のホラー作品であることを噛み砕いたうえで、やはり作品のオーラとしては「B級感」が感じられる造りとなっている。
しかし、「B級」と呼ぶにはほど遠いほどに、丁寧に行儀良く作られているのが本作の大きな見どころだろう。
作品のプロットとして描かれていたものが「ポラロイドカメラで撮られたものは死ぬ」という設定であるが、よくあるホラー作品の設定ながらも、秀逸に練りこまれていたと言ってもいい脚本だった。
まるで「ホラー作品の型」にそのままはめ込んだ作風であり、100点は取れないが赤点は絶対に取らない、という安定感のある作品に仕上がっていた。
本作のメガホンを取るのが、リメイク版「チャイルド・プレイ」を手掛けたラース・クレヴバーグ監督であり、その他の製作陣もホラー作品の第一人者が集まった作品となった。
中でも、製作製作を担当した「ロイ・リー」はハリウッド版「リング」や「呪怨」、「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」や、あの「シャイニング」の続編にあたる「ドクタースリープ」など、数々のホラー作品を手掛けたベテランであった。
そんな彼らの手にかかれば、安定感のあるホラー作品の脚本など『朝飯前』なのかもしれない。
ホラーよりも「SF」寄り??バケモノの描かれ方を紐解く。
本作の映画、映画サイト「Filmarks(フィルマークス)」では5点満点中「3.1」と、あまり高い点数ではないような印象を受ける。
そんな映画レビューを読んでみると、総評として浮かび上がってきたのが「あまり怖くはない」という意見だった。
確かに、陰鬱な雰囲気漂うジャパニーズホラー作品に比べて、本作はあまりにもアクションが強く描かれている作品であるが、これだけの製作陣に恵まれながらも「怖くはない」??
そんな疑問の正体として、まず言えることが「バケモノの実体がはっきりしている」点だろう。
本作で襲うバケモノであるが、いつも出てくるパターンがわかるようなキャラクターとして描かれている。
「幽霊」というよりは「エイリアン」のような容姿であり、「呪い殺す」ではなく、物理的に「刺殺」という手段を用いて襲ってくる描写が描かれていたのだ。
本作における「ホラー要素」はあくまでも「写真の影」を認識するまでであり、それ以降は一気に「SFパニック」になってしまうと考えるとしっくりくるだろう。
それでも怖い作品は怖く描かれているが、日本において実体のあるホラー作品はあまり恐怖を与えない演出となってしまっていたのかもしれない。
以外にも…ツッコミどころは多い!?
いくら有名ホラー映画スタッフが製作に携わっていたと言っても、やはり本作の「B級感」は拭えない。
前述したように、日本での人気が出なくなってしまった要因には、映画作品の宿命と言ってもいい「ツッコミどころ」も多かったようだ。
まず、目につくのが、いかなる状況においても単独行動をしてしまうキャラクター達だろう。
本作で躍動する「バケモノ」は、必ずターゲットが一人の時に殺しているからだ。
集団行動ができないキャラクター達が「ご都合」でどんどんと殺されていく描写にはどうしても「B級感」は拭いきれなかった。
そして、アクションシーンにおける演出についてであるが、本作の戦慄のアクションシーンをまじまじと見てみると、なんと「ワイヤー」が丸見えではないか…。
こればかりは何とかならなかったのだろうか…。
撮影環境においても「安全第一」を守る製作陣の懐の深さを感じるシーンとなるだろう…。
最後に、主人公の「写真好き」としてのキャラクターについて。
彼女がポラロイドカメラで撮った写真をパタパタしているが、これがマズい。
写真通の人ならわかると思うが、あの行為には何の意味もない…。
寧(むし)ろ、フィルムに傷をつける行為であるとさえ謳っているではないか…。
しかしまあ、言い始めればキリがないのが「映画」である。
ホラー作品として雰囲気さえ整っていれば、それもまた「味」だろう。
映像の「暗さ」は意図したものだった?
今回の作品、鑑賞者の中には気が付いた人もいるかも入れないが、作品を通して映像が「暗く」作られている。
ホラー作品であることを踏まえたうえで考えるのであれば、これが意図されて演出されている効果であると考えていいだろう。
しかし、これもまたレビューを読んでみると、「見づらい」といった声が多く「そもそも映像が見づらくては仕方がない」という、身もフタもない評価もされてしまっている。
「ポラロイドカメラを用いた写真」という繊細な機会を題材に描かれていることからこの映像の暗さは来ているのだろうか?
真相は謎のままである。
また、アクション要素が多いせいか、作中の「シーン飛び」も数多くある作品となっているが、このシーンの移り変わりによって、映画の時系列が紛らわしくなっていしまっている気もする。
裏を返せば、バケモノによる一つ一つの旋律のシーンにスポットライトを当てるのに一役かっている描写にも見えるところが難しい。
なんにせよ、本作における「ツッコミどころ」も踏まえたうえで、脚本、演出、アクションなどからも、「ホラー映画初心者」にお勧めできる作品として、これからも残り続けていく作品となるだろう。