「 そして友よ、静かに死ね」のネタバレ感想と考察【親友を守り抜くと誓ったギャング親分の物語】

  • 2021年4月27日
  • 映画
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本記事は、映画「そして友よ、静かに死ね」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

そして友よ、静かに死ね

2011年、オリヴィエ・マルシャル監督によって制作されたフランス映画。

実在したギャング、エドモン・ヴィダルの半生を綴った作品。

上映時間は102分。

 

あらすじ

舞台はフランス、かつて名を馳せたギャング、エドモン・ヴィダル(通称モモン)は、今は家族と平和な生活を送っていた。

そんなる日、かつて一緒に、ギャングのトップへとのし上がった親友、「セルジュ」が13年の逃亡の末に逮捕されたことを知る。

家族の安全を考えつつも、血を分けた兄弟であるセルジュの奪還との狭間でモモンの心は揺れる…。

出演役者

本作の主人公モモンを演じるのが「ジェラール・ランヴァン

主にフランス映画を中心とした作品へと出演するフランスのベテラン俳優で、サスペンス作品や戦争映画等に出演している。

 

本作のキーマンとなるモモンの親友、セルジュを演じるのが「チェッキー・カリョ

フランス、パリで育った生粋のフランス俳優。

舞台俳優として数々の古典劇に出演しつつも、映画作品への出演も多い。

 

モモンの妻であるジャヌーを演じるのが「ヴァレリア・カヴァッリ

イタリア出身の女優で、アメリカ映画やフランス映画と言った数々の国の映画に出演している。

2001年には日本映画である「冷静と情熱のあいだ」にも出演している。

ネタバレ感想と考察

ある意味では「衝撃のラスト!?」まさかのリアル物語!

前情報ナシで本作を鑑賞した時に鑑賞者が陥る、一番のビックリ要素がコレ「実在した人物だったこと」だろう。

物語は過去と現在を行ったり来たりで描かれる、映画でよくある時系列の物語であるが、本作品の核として描かれるギャング集団、「リヨンの男たち」は、実際にメンバーであった「エドモン・ヴィダル」が綴った自伝小説、「さくらんぼ、ひとつかみで」がベースとなっていたのだ。

映画の物語と小説の内容の相違については多少あるようであるが、タイトルにもなっている「さくらんぼ」のシーンは、映画でも色濃く描かれていたシーンの一つだっただろう。

また、本作では盛大な「タイトルネタバレ」をしているにも関わらず、脚本の品質は損なわずに鑑賞することができる珍しい作品であり、これは「結果」ではなく、あくまでも「過程」を楽しむ映画作品であることを意味している。

本作の見どころは「衝撃のラスト」であると同時に、登場人物たちの心理描写でもあるのが面白い要素でもある。

 

フランス映画の上品さの中に「漢」を見出す。

本映画のジャンルはギャング映画で、大きなテーマとして描かれていた描写が「義理人情」「男らしさ」だろう。

日本映画でも「任侠映画」においては、大きなテーマとして掲げられることが多いが、フランス映画でありながらここにスポットライトを当てているのが非常に秀逸な作風となっていた。

主人公であるモモンが、兄弟分であるセルジュをひたすらに信じ続ける姿そのものが本作最大の見どころとなり、セルジュを助けるために、自分の仲間や家族までもを危険に晒しつつ彼を信じる姿に、胸が熱くなってしまう描写が多々存在する。

セルジュ当人の荒っぽい素行を噛み砕いても、一般鑑賞者の目線から見てしまえば「もう裏切ってもいいんじゃない…?」と思ってしまう状況下の中、ひたすらに信じ続けるモモン。

そんなモモンに男らしさを感じると共に、それらの物語を知ってラストシーンまで進むと、思わず胸打たれてしまうような哀愁エンドが待っている。

「贖罪の方法」について、セルジュ自身に委ねるモモンの心境は一体どうだったのだろうか?

銃声を聞いた時、モモンは何を感じたのだろうか?

ここまで「親友」を信じぬいた先にある終わり方として、どこか考えさせられるような描写となっている。

 

また、モモンがセルジュを信じられなくなったきっかけとして若いころの「密告」が引き金となっていたが、実はそれ以前のシーンでも事あるごとにモモンはセルジュの前でどこか悲しそうな表情を見せている。

「いずれどこかのタイミングで…」

モモンの心は、「密告」より前の段階で決まっていたのかもしれない。




日本の任侠映画と比べてみる。

フランスのギャング映画として日本での任侠映画と比べた時に、やはりどこか違う質感の作品であったことは鑑賞者の皆さんも感じた部分であるだろう。

映像はどこかモノトーン調で撮影され、動きや血が決して激しくなく、淡々と演出されていくことに「オシャレさ」を見出せるような作風となっている。

有名映画サイト「Filmarks(フィルマークス)」での評価は「3.7」と、なかなかの高評価を叩き出し、物語の筋書き自体は決して珍しいものではないにも関わらず、そんな高評価がされたのは映画自体の持つ雰囲気が関係しているからであろう。

余談ではあるが、日本のフィルマークスでは3.7なのに対して、海外の映画サイトである「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」では支持率が「50%」、更には現地フランスでの映画メディアでは5点満点中「2.8」と、決して高い点数でもないのが興味深い結果となった。

本作の高評価の結果には、日本人の国民性そのものが現れていると言っても過言ではない。

 

色気ムンムン、躍動する「オジサン」に翻弄される作品

前項で記述したように、本作品の持つ「品の良さ」についてさらに掘り下げていくと、出演役者たちの「色気」が大きく影響していることがわかる。

本作品の出演者の全てが、フランス、もしくはイタリアの俳優たちであり、日本人が憧れる人種であることは間違いない。

通常、日本の任侠映画において大きなプロットとして描かれる「男らしさ」をこんなイケオジ達によって演出されることが、意識せずとも上品な作品に感じてしまう要因だろう。

過去に日本でも流行した「ちょいワルおじさん」の感覚こそが、本作で描かれるオーラの真骨頂である。

仮に全く同じプロットで全員が日本人役者の任侠映画だった場合、評価はどうなっていたのか大変興味深い…。

 

また、本作の上品さについては、タイトルである「そして友よ、静かに死ね」からも汲み取ることができるだろう。

文字に起こすだけでなんともかっこいい響き…。

更には原作となる小説が「さくらんぼ、ひとつかみで」

これもまたオーラある響きである。