「東京難民」ネタバレ感想と考察【東京で生きる若者の墜落物語】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

東京難民

2014年、佐々部清監督によって制作された作品。

2011年に、福澤徹三氏によって発行された、

同名小説が原作となる。

東京の大学に通っていた一人の若者の墜落物語。

上映時間は130分。

 

あらすじ

舞台は東京、

大学生の「時枝治」

授業もまともに受けることなく、

合コンなどの遊びやバイトに向かうだけの

堕落した日々を過ごしていた。

 

そんなある日、

「単位」を取得しようと授業に向かうが、

自身の持つIDが反応しない。

大学事務所にて調べてみると、

授業料滞納のため、

除籍処分となっているのだった。

 

また、アパートの家賃も滞納していた治は、

すぐにアパートをも追い出されることとなる。

そんな治は、

東京の街で「ネットカフェ難民」として

生活を始めるのだった…。

 

出演役者

本作の主人公「時枝治」を演じるのが

「中村蒼」

 

治の客であった「茜」を演じるのが、

大塚千弘

 

先輩ホストである「順矢」を演じるのが

「青柳翔」

 

順矢の客であった「瑠衣」を演じるのが

「山本美月」

 

また、今作では他にも

「金子ノブアキ」や「中尾明慶」などの

俳優も登場する。

 

見どころ「若者の墜落物語をリアルに描く作品」

現代における東京、

今も尚、上京し続ける若者は多く、

金銭的に苦しい生活を強いられている人も

星の数ほどいる街。

 

そんな中の一人である

なんの変哲もない青年にスポットライトを当て、

リアルに描ききった作風こそが

今作の最大の見どころである。

 

決して「映画の中の話」ではなく、

リアルにこんな若者が、大勢存在していることを

再認識させられる作品だろう。

 

住所を無くし、転落の始まりから、

「東京」という街で這い上がることの

難しさを改めて実感させられる。

 

本当に「東京」は怖い街である…。

 

配信コンテンツ

「東京難民」は今現在、

Amazonプライム、Hulu、等で配信されている。

Amazonプライム

ネタバレあらすじ

舞台は東京、

大学生の「時枝治」

授業もまともに受けることなく、

合コンなどの遊びやバイトに向かうだけの

堕落した日々を過ごしていた。

 

そんなある日、

「単位」を取得しようと授業に向かうが、

自身の持つIDが反応しない。

大学事務所にて調べてみると、

授業料滞納のため、

除籍処分となっているのだった。

 

また、アパートの家賃も滞納していた治は、

すぐにアパートをも追い出されることとなる。

そんな治は、

東京の街で「ネットカフェ難民」として

生活を始めるのだった…。

 

ネットカフェ難民として生きる彼には

「即日払い」の仕事が必要だったが、

住所を持たない彼に対し、

与えられる仕事は少ないのだった。

やっとの思いで見つけた仕事は、

「ティッシュ配り」のアルバイトだった。

日給にして6000円、生きてはいける額だった。

 

ティッシュ配りで食いつなぎながらも、

治は日給2万円の「治験」のバイトを見つける。

大金を得た治は、

夜の新宿、歌舞伎町で「瑠衣」という女性と出会うのだった。

瑠衣に連れられ、人生で初めての「ホストクラブ」に行くが、

酔いつぶれた隙に、

支払いを残し、瑠衣に逃走されてしまう。

大金があっという間に消えてしまった治は、

必死に頼み込み、

そのホストクラブで雇ってもらうのだった。

 

「ホスト」としての道は過酷だったが、

徐々に慣れていく治、

そんなある日、

瑠衣が店に連れてきたのは

看護師として働く「茜」という女性だった。

初めてのホストクラブであった茜に、

無理のない遊び方ができるように気遣う治、

そんな治の優しさに惚れ、

治は茜の指名客となっていくのだった。




あくまで「ホスト」と「客」の関係であったが、

ますます治にハマっていく茜

そんなある日、瑠衣の失踪によって、

先輩ホストである「順矢」に、

「茜に頼んで100万円を借りてほしい」

と、懇願される。

 

一緒にデートをした日に、

治はダメもとで茜に頼んでみるが、

「一晩一緒にいること」を条件に

100万円を貸してくれるのだった。

 

借りた100万を順矢に渡す治だったが、

別のホストである「小次郎」に持ち逃げされてしまう。

これに激怒したオーナーは、

順矢に、消えた小次郎の分の仕事も一緒にこなすことを

強要するのだった。

 

治自身は、茜との仲を深めつつあったが、

ある日、失踪していた瑠衣が発見される。

順矢と治は「瑠衣をソープに売り飛ばすこと」

オーナーから科せられてしまう。

 

瑠衣を引き渡す店舗の前まで来るが、

治の判断で、三人で逃げることを決めるのだった。

瑠衣は実家の農家に逃げ、

残された順矢と治は、

寮付きの工事現場作業員として働くようになる。

 

最初は激務に辛い思いをするも、

次第に慣れていき、「生きているという

感覚を覚えるようになる。

 

ある日、茜に謝罪するために、

茜の勤務する病院を訪れる。

「100万円を返してほしい」と叫ぶ茜だったが、

手持ちの数万円を渡し、

ただただ謝ることしかできない治だった。

 

時は流れ、順矢が瑠衣の元へ行き、

農家をすることを治に打ち明ける。

別れを交わし、意気揚々と身支度を整える順矢だったが、

タッチの差でオーナーに見つかり、

拉致されてしまうのだった。

 

失踪した治、順矢、小次郎がオーナーの元に

一同に集まる。

小次郎に保険金をかけていたオーナーは、

小次郎を殺すか?中国で運び屋として働くか?

の、選択支を順矢に迫る。

結局、小次郎を殺すことのできなかった順矢は、

中国で働くこととなるのだった。

 

一部始終を見ていた治は、

「順矢と一緒に中国で働く」と述べるが、

「世間知らずが甘ったれたことを言うな」と、

啖呵を切ったオーナーは、治を連れ出し、

激しい暴力を加える。

一通り殴ると、そっと抱き寄せ、

「中国でシャブの運び屋がバレたら死刑だぞ」

と、忠告を叩きつける。

そして、オーナーの腕には「運び屋の烙印」が

押されているのだった。

 

意識を失った治は、多摩川の河原に捨てられる。

ホームレスに介護してもらい、

治はそのままホームレスとなるのだった。

 

空き缶を集めて小銭を稼いだり、

雑誌を集めて小銭を稼いだりして過ごす治、

そんなある日、

雑誌に載っていた「ソープランド特集」で、

茜の姿を見つけるのだった。

 

河原に倒れていた治を助けてくれた「鈴本さん」という

ホームレスに、今までの人生を洗いざらい話す治、

この話を鈴本さんは黙って聞いてくれるのだった。

 

鈴本さんの「関東大震災」で息子を失って

ホームレスとなった事実を知った治は、

茜に会いに行くことを決心する。

 

茜のお客さんとしてソープに行き、

お金を渡し、土下座で謝るのだった。

最初は激怒する茜だったが、

「虫のように生きようと思っていた」

「まだ生きててもいいですか?」

と、情けを乞う治に、茜も涙する。

ホスト時代の「シャンパンコール」をお願いされ、

泣きながらコールするのだった。

 

その後、治はホームレスから

脱却することを決意する。

多摩川を背に、歩き始める治の後姿は、

どこか凛々しく見えるのだった。

 

ネタバレ考察

リアルで残酷な「群青劇」を描く。

大学生の若者が主人公の作品、

そして色々な人と出会い、

成長していく…という言い方をすれば、

今作はとても綺麗な「群青劇」という

見方もできる作品である。

 

しかし今作、描かれたのは

「綺麗事」では済まないような、

リアルな社会の縮図そのものだった。

 

一度転落し始めると、

なかなか這い上がることが難しいシステム、

そして、それだけのモチベーションが

生まれない環境など、

「東京」という街での生きづらさを

全面に押し出している

残酷な作品であるという側面も持ち合わせた、

珍しい作品となった。

 

「群青劇」ではなかなか描かれない「風俗」の世界

東京を舞台に物語が展開される今作、

切っても切れない関係となってくる風俗の世界。

 

今作もまた、物語の大きな割合を

ホストとしての時間

描かれることとなった。

 

稼ぎはいいが、

それだけ搾取も厳しい世界で、

上下関係の厳しさや、

他人への感情移入を良しとしない世界観に、

ショックを受けてしまう鑑賞者も

多かった事だろう。

 

100パーセントが本物の情報ではないにしろ、

こんなことが確実に行われていたことに

胸糞悪さを感じてしまうのだ。

 

決して「映画」ではなく、

リアルを伝えるための「ドキュメント」

という見方をすれば、

本作の造りは妙に納得できてしまうような作品だった。




「治」の優しさが仇となってしまう

今作は、主人公の治の墜落物語として

描かれる今作だが、

彼の助かる道はそれまでにも

沢山あったように見えるだろう。

 

ホストとして働く時は、

先輩である「順矢」の頼みを断り

また、良客であった「茜」を

そのまま貢がせたりなど…。

 

そんな心の「弱さ」「優しさ」が仇となり、

転落していくような作品の構成には、

佐々部監督の意地悪な考えとも取れるだろう。

 

それは同時に、

「心を強く持って生きていく」

という警笛にも聞こえ、

これからの人生において、

「情け」をかけないことも時として大切になる、

というメッセージにも感じる作品だった。

 

事実、物語中に、

茜の「風俗堕ち」を拒んだ治であったが、

彼の「優しさ」のせいで、

茜は「ソープ堕ち」することとなる…。

 

「過程」ではなく「結果」を求めた本質

物語の終盤、

治はソープ嬢として働く

茜に会いに行った際、

「生きててもいいですか?」

と謝り、許しを乞う。

 

それまでに会った数々の人間たちは、

境遇や職種は違えど、

皆「生きている」という

共通点を持っていた。

 

「終わっているから、虫のように生きようと思った」

と、語る治だったが、

これまでの過程よりも、

今「生きている」ということの大切さを

教えてくれるような

作品テーマとなっていただろう。

 

ホームレス小屋でのワンシーンで、

今まで出会った仲間は皆、

それぞれの場所で「生きている」

シーンが流れる。

 

それぞれが、ただ「生きること」を

肯定できるような世の中になることを強く望む。

 

伏線が最後まで回収されなかった

爆弾を隠し持つ、彼もまた…。