「精神」ネタバレ感想と考察【精神病院の完全ドキュメント映画】

  • 2023年6月16日
  • 映画
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本記事は、映画「精神」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「精神」

2009年、想田和弘監督によって制作された作品。

精神病院に密着し、リアルをそのまま撮影したドキュメンタリー映画。

上映時間は135分。

あらすじ

本作は岡山県岡山市に実在する「こらーる岡山」という精神病院を密着撮影されたドキュメンタリー映画である。

配信コンテンツ

「精神」は今現在、Amazonプライム、等で配信されている。

Amazonプライム




ネタバレ感想と考察

全てがリアルの120%ドキュメンタリー映画!

世の中にある通常の「ドキュメンタリー映画」では、リアルをそのまま投影しつつもどこか「テレビ的」に作れているのが通常の様式となる。

ナレーションやテロップが入り、編集され、なるべく視聴者にわかりやすく現状を伝えるためだ。

しかし今回のこの作品、「精神病院」というセンシティブな内容を「ナレーション、テロップなし」そして「音楽、映像の一切の加工をしない」というとても尖った方式で撮影されている。

本物の精神病患者に、ヤラセ一切ナシの撮影を行っているのだ。

舞台となる病院「こらーる岡山」はもちろん実在し、2023年の今、ちゃんとGoogleマップにも載っている病院だ。

全てがリアル120%で展開されるドキュメンタリーなので、患者さんの「不純な話」や「不快な言動」も、もちろんそのまま描写されている。

観る人が見たら、不快感を感じてしまう作品なのかもしれない…。

理解されない精神病の実態が描かれる。

「鬱病」「統合失調症」を初めとするこの「精神病」であるが、毎年約80万人以上が自ら命を絶つとのデータもある。

院内の映像は2000年代のもので、病院内の造りが昔ながらの「診療所」のような場所であったことから、さらに昔の映像に見えてしまうだろう。

この作品で登場する患者さんたちはもちろん全てが本物の患者さん、中には「死にたい」などの発言をしたり、未遂をしたりしてしまうような人も見受けられた。

一言で「精神病」と言ってしまうが、その病状は十人十色、そしてその性格や境遇もバラバラとなっていた。

・女性で手首にリスカ跡、タトゥー入りの患者さん。

彼女は子持ちで、昔は体を売って生活していた時期もあると発言。

 

・若い女性の患者さん。

家に居ると「亡き父親の声が聞こえる」との理由で院のホテルにショートステイ。

彼女は昔に自身で産んだ子供の命を奪った経験もあると発言。

 

・初老男性の患者さん。

院内のムードメーカーと思わしき男性。

元気がよく、笑顔でよく冗談を言う。

趣味で写真と詩を嗜んでいる。

などなど…。

鑑賞した皆さんも、ゲリラ的に行った撮影にしては、カメラに向かって境遇を話してくれる患者さんも、思いのほか多いと感じただろう。

また、作品内では患者さんだけではなく、病院側の人々にも撮影を行い、患者さんに処方する薬を無限に梱包していくシーンや、「精神病」の医療費負担の話などでミーティングを行うシーンもそのまま映画となっている。

そして映画のラスト、映画内に登場していた数人の患者さんが「追悼」として写真と名前が出てくるのだ。

これは撮影後から「映画」としての発表までの間に、自ら命を絶ってしまった患者さんたちである。

患者さん達は皆、カメラを通して話すとその誰もが「精神病に見えない」人々が多い。

そんなトリックが、非精神病患者の人々に病院として理解されない一因があると、筆者は強く感じた。




監督「想田和弘」とその撮影手法。

今回の作品、なんと監督の想田和弘さん一人で作り上げた作品となっている。

撮影の手法は、監督がカメラ一つでゲリラ的に院内へ乗り込み、出会った人にその場で「映画の趣旨」を説明する。

そして出演OKが貰えれば、その場で「その人の行動の撮影を始める」という、挑戦的な手法で撮影された。

筆者の見解にはなるが、まずこちらから話しかけることは一切無いように見える。

向こうから話しかけてくれば、簡単な受け答えをし、そこで監督側から簡単な質問もする…くらいのテイストに感じた。

そう、ドキュメンタリーなのに「インタビュー」という形式を取っていないのだ。

撮影の時間は70時間にも及び、その中の2時間を抜粋して映画にしている作りとなっている。

話しかけた10人のうち、8.9人は即座に断られ、残りの1人、2人が何とか承諾して頂き、撮影は進んでいったそうだ。

まさに監督の体を張ったスタイルによって本作は成り立っている。

監督自身が「1人」で映画を仕上げている作品はこれまでの映画の歴史を振り返っても、数えるほどしか無いだろうと思う。

そんな本作は数々の世界的な映画祭での受賞経験もあり、日本以外でも上映されるほどの作品となった。

こんな病気が理解できない人々も「自分には理解できない何かが、確かにある」ということだけは学べる。

一見の価値はあると筆者は考える。

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