「ジャンク・ヘッド」ネタバレ感想と考察【世界が驚嘆した…堀貴秀監督のストップモーションアニメ!!】

  • 2023年5月18日
  • 2023年6月2日
  • 映画
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本記事は、映画「ジャンク・ヘッド」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「ジャンク・ヘッド」

2021年、堀貴秀監督によって制作されたストップモーションアニメ映画。

生殖機能を失った人類を描いた人形劇による作品。

上映時間は99分。

あらすじ

舞台はパラレルワールドの世界。

この世界での人類は念願の「不老不死」を実現していたが、その代償に「生殖機能」を失ってしまっていた。

そんな世界で一人の男が調査のために地底の世界へと潜り込む…。

出演役者

本作の登場キャラクターは全て、監督自身である「堀貴秀」「三宅敦子」、製作の「杉山雄治」が声優を担当している。

配信コンテンツ

「ジャンク・ヘッド」は今現在、Amazonプライム、Hulu、等で配信されている。

Amazonプライム

Hulu




ネタバレ感想と考察

まさかの一人で作られた!?世界を震撼させた日本の「ストップモーション・アニメ」

2021年に公開された本作であるが既にAmazonプライムでは配信され、その配信速度にもファンは歓喜したことだろう。

そんな本作「ジャンク・ヘッド」であるが、実はオリジナル版である「JUNK HEAD1」を修正した作品となっていた。

こちらは30分の長さの短編作品であったが、本格的な映画化の先駆けとなった貴重な作品である。

そしてこの「ジャンクヘッド」シリーズ、なんと堀監督自らが「一人の力」で作り上げたことが何よりも衝撃だった。

7年もの歳月をかけたその作品が、まさかの「ストップモーションアニメ」という非常に手間のかかる作風であることに更に衝撃を受けることとなる。

本作のエンディングクレジットを見ていれば一目瞭然であるが、殆どのスタッフ、キャストの欄に「堀貴秀」の文字が並ぶ。

本作の映画では「3〜4人のスタッフが入れ替わりで作業を行った」とも記述されているが、そんな数人によって制作されたとは到底思えない「映画」としての長さと、そのクオリティに驚きっぱなしの作品だろう…。

また、エンディングシーンでの映画の制作風景がその過酷さを物語っている…。

こちらのストップモーション・アニメによる映画作品として代表されるのが、1989年に公開された、ヤン・シュヴァンクマイエル監督の「アリス」だろう。

【ダークで不気味な童謡の世界へ】映画「アリス」ネタバレあらすじ考察

「鬼才」と名高いヤン監督のこちらのストップモーションアニメもなかなかに尖った作品なので、是非とも鑑賞してほしい。




脚本も秀逸!!「生殖機能」を失った人間の物語。

その制作過程や作風もさることながら、何よりも映画の「脚本」がこれまた面白い。

「生殖機能を失った人間」というパラレルワールド設定が採用され、そのスチームパンク感溢れる世界観にも、堀監督のセンスを随所に感じてしまう。

そして、これまでには描かれなかった斬新すぎるキャラクターデザインもまた面白い。

人間やロボット、そして人ならざる「生き物」全てのデザインに、グロさ、かっこよさ、そして「可愛さ」までもが詰まったキャラクターとなっていた。

実は「生殖機能を失った人間」というプロットにおいても、なかなかに細かく面白い設定がされていた。

それは「女性が覇権を握る世界観」であったり、「性器の概念を知らない主人公」であったり、「愛を求めるバーチャルダンス教室」であったりと、プロットが妙にしっくりくる小ネタも挟まっていた。

階層式パラレルワールド世界観に酔いしれる。

前述したように「スチームパンク感」溢れる世界観の物語であるが、その内容を紐解いてみよう。

この世界の最上階には生殖機能を失った人間が居住していて、下に進むにつれ、「マリガン」と呼ばれる生命体が住む地域になっていく…。

こちらの「マリガン」はなんと人間が作り出した「人口生命体」であり、これに「生殖機能の可能性」を見出した人間が調査に乗り込むわけだ。

(ちなみに人間界では、新種のウイルスによって存続の危機にある。)

構図としては富裕層が上階し住み、下層に進むにつれて貧民達が住まう物語が近いものだろう。

本作の主人公であるパートンは、調査のために下層へと落とされていくが、そんな下層の世界でも「人間」であることが認識され、「神」と崇められるのが意外な脚本に感じた。

崇められながらも、どこかおバカなキャラクター達に囲まれて右往左往するパートンのキャラクターは機械的な要素の中にも、どこか「温かさ」や「やわらかさ」を感じる作品になっていた。

この「階層式アドベンチャー」スタイルの本作において、機械的要素に加えて「冒険心」もくすぐられるのが本作の醍醐味だ。

その数奇な運命に翻弄される主人公パートンに自分自身を重ねてしまうような作品だった。