本記事は、映画「Winny」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「Winny」
2023年、松本優作監督によって作られた作品。
2000年代に日本を騒がせたフリーソフト「Winny」の開発者の半生の物語。
上映時間は127分。
あらすじ
舞台は日本、京都。
京都県警は一人の男、金子勇を「著作権法違反幇助」の疑いで逮捕に踏み切る。
その理由は、データを違法にアップロード、ダウンロード出来るフリーソフト、Winnyを開発したことだった。
「ナイフで人を殺しても、ナイフを作った人は罪に問われない」
前例の無い有罪判決に金子は戸惑う…。
出演役者
本作の主人公、金子勇を演じるのが「東出昌大」
金子の弁護士、壇を演じるのが「三浦貴大」
もう一つのストーリー、愛媛県警裏金問題の主人公、仙波を演じるのが「吉岡秀隆」
配信コンテンツ
「Winny」は今現在、Amazonプライム、Netflix、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
金子勇というキャラクターの人間性について。
世代でない筆者は、漏れなくこの映画作品で事件のことを知ることとなった。
まさかこんな事件が日本で起こっていたとは…!!というのが正直な感想だった。
映画作品はあくまでエピソード主体で語られ、愛媛県警の裏金問題と同時進行で進んでいく二本柱のストーリーは、より「映画らしい」脚本となっていた。
映画として映えるストーリーをブラッシュアップして制作されていたわけだが、よくよく調べてみるとなかなかに衝撃な事実がわかってくる。
作中では語られていないが、実は金子氏は東京大学の大学院の研究室にて、特務助手として勤務するスーパーエリートである。
過去にはなんと、日本原子力研究所にも勤務していた。
プログラミングだけではなく、その地頭の良さが伺える…。
90年代ド真ん中を生き抜いた彼は、好きなゲームとして「ドラクエ」、そして好きなアニメとして「新世紀エヴァンゲリオン」を挙げている。
映画の最後で実際の金子氏が「ニコニコ動画」の視聴者に向かってコメントを残すシーンがある。
その言動を見てみると、映画で見るキャラクターよりも、バイタリティ溢れるキャラクターに見えた。
そしてこうとも思った。
「この頃からニコニコ動画ってあったんだ…。」
映画では語られないWinnyの本当の闇…。
映画や音楽を違法にアップロード、ダウンロードできるツールとなったWinnyだったが、実は本当に問題となっていた核は著作権侵害以外にもある。
それは、映画では一切語られなかった…。
Winnyはなんと、「児童ポルノ」の蔓延がとても酷いとされていたのだ。
著作権侵害はもちろんのこと、プライバシーに関するデータも大量に流出したのがWinnyの恐ろしいところだった。
それらの要素は、不思議と映画では一切語られることがなく、その闇の深さを物語っているのかもしれないと筆者は考えたのだ…。
事件の渦中ではなんと、あのMicrosoftが事件の収拾に向けて動いたり、当時の安倍晋三官房長官がWinnyの自粛を呼びかけたり、かなり世間を騒がせたようだ。
中でも、児童ポルノの蔓延具合は凄まじく、関係者が「映像が出た女児らの名誉は永久に回復できない」と語るほどだったらしい…。
事実との相違はどこまであるのか?
映画として成り立たせる以上、どうしてもエピソードを歯切れ良く造るのが映画脚本であるが、事実とは対して相違が見えなかったのも事実であった。
今回、Winnyを開発した金子氏であるが、実は開発は2001年より行っていて、その後に東京大学の助手として迎え入れられている。
またリアルでは、家で電動リクライニングベッドを用いて、時間を忘れてプログラミングに没頭するほどの人間だったらしいが、そんなベッドでのプログラミングシーンも忠実に再現されている。
もちろん、担当弁護士の「壇弁護士」も実在していて、金子氏の死亡後に眼鏡を受け取るエピソードまでもがリアルの物語である。
本作の制作にあたり主演となる東出昌大は、壇弁護士自らが著したノンフィクション「Winny:天才プログラマー金子勇との7年半」を読んで、役作りのため約18キロもの増量、そして遺族や関係者たちへの取材、模擬裁判なども経て「今も自分の中に金子さんがいる」と語るまでに至った。
まさに壮絶な事件であったが、作品を通して一貫したテーマは、「規制が行き過ぎると、技術者はチャレンジしなくなる」というものだった。
「ナイフで人を殺しても、ナイフを作った人は罪に問われない」
心に残った例えだった。