「犬猿」ネタバレ感想と考察【大人たちの兄弟喧嘩を描く】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

犬猿

2018年、吉田 恵輔監督によって制作された作品。

「兄弟喧嘩」をテーマに描かれたヒューマンドラマ。

上映時間は103分。

 

あらすじ

舞台は日本、

印刷会社の営業マンとして社員を務める「金山和成」

真面目なイケメンの好青年であったが、

ある日、彼の実の兄である「卓司」

刑務所から出て、和成のアパートへ転がり込んでくる。

自己中心的で暴力的な兄の出所に、

素直には喜べない和成の姿があった…。

時を同じくして、

和成の印刷会社の下請け工場を

切り盛りするする「幾野由利亜」「真子」

二人の間でも、

どこか痺れた空気感が流れることとなる…。

 

出演役者

本作の主人公的立ち位置

「金山和成」を演じるのが「窪田 正孝

 

和成の兄である「卓司」を演じるのが

新井 浩文

 

印刷工場を切り盛りする「幾野由利亜」を演じるのが

「江上敬子」

お笑いコンビ「ニッチェ」としても活動している。

 

由利亜の妹「真子」を演じるのが

「筧美和子」

 

本作はこの四人が主人公となる。

 

見どころ「兄弟喧嘩をテーマに絶妙な人間関係を描く。」

本作の物語、

これまでにあまり見たことがなかった題材、

「兄弟喧嘩」を描いたものであるが、

四人の主人公のキャスティングと共に、

その絶妙な人間関係を描いた脚本がとても面白い作品である。

 

「兄弟あるある」を感じさせながらも、

お互いにどこか気を使っているような

「会話劇」こそが、

本作の一番の見どころであるだろう。

 

配信コンテンツ

「犬猿」は今現在

Amazonプライム、U-NEXT、Hulu、dTV、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

舞台は日本、

印刷会社の営業マンとして社員を務める「金山和成」

真面目なイケメンの好青年であったが、

ある日、彼の実の兄である「卓司」

刑務所から出て、和成のアパートへ転がり込んでくる。

自己中心的で暴力的な兄の出所に、

素直には喜べない和成の姿があった…。

時を同じくして、

和成の印刷会社の下請け工場を

切り盛りするする「幾野由利亜」「真子」

二人の間でも、

どこか痺れた空気感が流れることとなる…。

 

和成の家に転がり込んでからというもの、

卓司の自分勝手な態度は段々とエスカレートしていく。

スナックで問題を起こし、

アパートにデリヘルを派遣し、

自由気ままに過ごすのであった。

 

一方の由里亜と真子の姉妹、

真面目でコツコツと働きながらも、

肥満気味の体と、決して良いとは言えない容姿、

そして高いプライドを持ち続ける由里亜は、

見た目がいいだけで、

中身がまるで無いような真子に酷く嫉妬していた。

 

由里亜が切り盛りする印刷工場で真子は働いていたが、

姉の由里亜にダメ出しをされる一方、

得意先の男性営業マンにはとてもいい評判を得るのだった。

 

ある日、和成が印刷工場へと打ち合わせに行った際、

由里亜と真子の誘いにより、

三人でステーキ店で飲食を共にすることとなる。

三人で奇妙な団欒を楽しむ最中、

卓司が訪れるのであった。

 

後日、和成が無理な要求を由里亜の工場に投げるが、

由里亜は「デートをすること」を条件に、

和成の案件を受託することを決める。

「富士急ハイランド」での

奇妙なデートをする二人であった。

 

兄の卓司は和成の貯金を派手に使っていた為、

和成に返済を求められるが、

これを暴力で解決することとなる。




一方の由里亜も真子と

一触即発の関係を続けるのだった。

ある日妹の真子は、

姉への仕返しと言わんばかりに、

和成と付き合うこととなる。

同じ富士急ハイランドでのデートを楽しむのだった。

 

そして和成も「怪しい商売」で、

成り上がっていく兄、卓司に、

言いようのない嫉妬を感じていた。

 

今までコツコツと返していた借金も、

卓司により一括返済され、

高級車を乗り回す卓司

ボロボロの車に乗る自分を比べ、落ち込むのだった。

 

そんなある日、

ついに二組の兄弟、姉妹は

激しくぶつかり合うこととなる。

 

事業が警察に見つかり、

またまた和成の家に逃げ込んできた卓司、

そして、ピンクなDVDに出演する真子を

家族にバラした由里亜、

今までの溜まった鬱憤が爆発するような、

想像を超える喧嘩を始めるのだった。

 

燃え上がった火が鎮火仕掛けた頃、

卓司は恨みを買われたチンピラに首を切られ

由里亜は自身でリストカットし、

お互いが同じ病院に搬送される。

 

和成と真子は今までの喧嘩を忘れたように謝り、

救急車を手配するのだった。

 

時は過ぎ、四人は病院の屋上で一同に会す。

そこには笑顔で会話をする四人の姿があった。

卓司は留置所に入ることとなり、

面会に行く和成。

 

仲良く話していたが、

ひょんなことから、不穏な空気感が流れる。

 

また、由里亜と真子も仲良く過ごしていたが、

家での会話から不穏な空気となる。

二組の兄弟、姉妹は、

お互いに睨みを効かすのであった。

 

ネタバレ考察

本作の真骨頂は絶妙な「会話劇」

二組の兄弟、姉妹が

織り成す人間ドラマを主とする今作、

中でも際立っていたのはその「会話劇」だろう。

自身のプライドを保ちながらも、

お互いをどこか気遣うような関係性、

よそよそしい態度や仕草、

そして会話が織り成される作品となった。

 

「兄弟あるある」には

少し壮大すぎる出来事が数々起こるにしろ、

「似たような感情」を抱いたことがある

兄弟、姉妹は多いのではないだろうか?

 

本作はそんな「兄弟あるある」の最上級版、

基、より「映画的」にした脚本であり、

その「本質」が見えてくる作品でもあるのだ。

 

「ないものねだり」を上手く描いた。

物語のキャラクター設定をもっと掘り下げてみると、

四人の主人公である各々の兄弟、姉妹には、

自身の「性格」「武器」が、

「相対的な関係」になっていることがよくわかる。

 

和成は真面目でコツコツ、そして気が弱く、

一方の卓司は博打打ちで気が強い。

 

同じく由里亜は真面目でコツコツながら、

容姿が決して良くはなく、プライドが高く、

真子は容姿端麗だが、努力を惜しみ、

そんな姉を嫌う。

 

「お互いに持っていないもの」を羨むと同時に、

「自分が持っているもの」で、

マウントを取る構図こそ、

本作の導火線部分に当たる、

映画における「起」の根源であっただろう。

 

そんな相対的な性格に生まれながら、

「育った環境は同じ」という

環境こそが、他の映画では

感じることの出来ない空気感を生み出しているのだ。




物語のラスト3分で「本質」が語られる。

今回の映画の「起承転結」を経て、

物語はラスト3分まで向かう。

紆余曲折あるが、最後はまた仲良くなる…

と、思わせてからの最後の睨み合い。

 

このワンシーンのために本作の

2時間弱を積み上げてきたと言っても過言ではないだろう。

 

仲良くなっても、結局は「兄弟」「姉妹」

一生、血の繋がりを持って生きる以上、

お互いの立場やプライドを守ったまま

過ごさなせればいけないことを再認識させられるのだ。

 

仲が良くても、喧嘩をしても、何をしようが

切っても切れない関係性であることが

ひしひしと伝わるようなシーンであり、

彼らはこれからもこれを繰り返し、

生きていくことを象徴するような終わりとなった。

 

「誰が悪い」を鑑賞者に委ねる手法。

本作の四人の登場キャラクターの設定において、

本作ではもうひとつ、面白い仕掛けがなされていた。

それは「誰が悪いか?」

鑑賞者に委ねることだった。

 

それぞれの兄弟や姉妹、

それぞれの悪い一面が露骨に描かれ、

まるで「あなたはどうですか?」と言わんばかりの、

判決を鑑賞者は下すこととなる。

 

特に由里亜と真子の姉妹においては、

その関係はとても秀逸な脚本であると感じた。

リアルにあの形の姉妹は、

確実に存在しているだろう。

 

ちなみに、あえて挙げるのであれば、

やはり一番まともなのは

「和成」であるのか…とも考えたが、

彼は一度でも卓司を「殺そう」としていた。

なんとも甲乙付け難いキャラクター設定である…。