本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
「アフタースクール」
2008年、原作、脚本、監督を手掛ける内田けんじ監督により制作された日本映画。
「大泉洋」「佐々木蔵之介」「堺雅人」をはじめとする有名役者が多数出演する。
行方をくらました一人の人物を追う物語。
上映時間は102分。
あらすじ
会社員である木村一樹は、小さなころから友達で中学校教師である神野良太郎とともに、
もうすぐ出産する美紀の出産に立ち会おうとしていた。
しかし木村は、仕事に出かけたまま行方をくらませてしまう。
話は変わり東京の新宿。
胡散臭い探偵業を営む北沢雅之の元に大企業から一件の依頼が舞い込む。
それは「木村を見つけ出すこと」
神野が勤務する小学校のOBとして侵入した北沢は神野と接触する…。
出演役者
小学校教師の神野良太郎を演じるのが「大泉洋」
神野の友達で行方をくらます、会社員の木村一樹を演じるのが「堺雅人」
木村の捜索を請け負う胡散臭い探偵、北沢雅之を演じるのが「佐々木蔵之介」
出産する美紀を演じるのが「常盤貴子」である。
謎の女アユミを演じるのが「田畑智子」である。
見どころ①「今までに無かった、些細な行動が生きてくる伏線」
今作の一番の見どころのである要素「伏線回収」
複雑なストーリーの中に張り巡らされた数々の伏線は、
一度の視聴では見逃してしまうほどに練り込まれる。
何気ない会話、些細なやり取り、誰も気に留めないシーンが後々伏線として生きてくる構成は、
よく練られた構成であり、他の作品では描けないストーリーだろう。
見どころ②「絶対に予想できない展開」
まず初めに、今作を始めて観るにあたり、
ストーリーの展開を予想できた人には盛大な拍手を送りたい。
そう思うほどに、今回の展開は予想できない。
信じていたことが全てが裏切られるような展開は、
見ていた僕でさえ、一瞬頭がパニックになった。
そんな「裏切り」を上記の伏線回収で納得させていく構成は、
とても面白く鑑賞できた。
今作をまだ鑑賞していない人は、この先の「ネタバレ」を読むかどうか、
今一度よく考えてみるべきだろう。
配信コンテンツ
「アフタースクール」は今現在、
Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されています。
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「アフタースクール」単品の配信レンタルは300円で視聴できます。
※ここからネタバレあらすじ
物語は過去から始まる。
中学生である美紀は一枚の手紙を持って学校の昇降口に立っていた。
そこに中学生である「木村一樹」が通りかかる。
美紀は木村を呼び止め、その手紙を渡す。
時は立ち、二人は大人になる。
「梶山商事」で会社員として働く木村の前には、もうすぐ出産する美紀が座っていた。
木村は仕事に向かうために家を出る。
外に出ると母校の小学校教師として勤め、木村の友人である神野良太郎がいた。
神野の車を借りて向かった先で、木村は別の女性と会っていた。
木村は謎の女性と会っているところを写真に撮られ、会社内で話題となっていた。
一人の上司が木村の写真に目を付け、木村と連絡が取れないことを社長に報告する。
社長は木村を探し出すことを社員に命令する。
場所は変わり、新宿の街中。
怪しいアダルトショップの中の更にその奥に胡散臭い探偵事務所があった。
事務所の主は「北沢雅之」
北沢は若い部下と二人で事務所を切り盛りし、
ギャンブルによる借金でヤクザに追われ、北海道への逃亡を目論んでいた。
そんな北村の元に一件の依頼が舞い込んだ。
それは「木村を見つけ出すこと」
お金に困窮する北村は嫌々この仕事を受け、
木村と謎の女性が写る写真を貰う。
深夜、神野の元に一本の電話が入る。
美紀からの電話で子供が生まれる内容の電話で、
無事、病院に間に合い、子供は生まれる。
看護師さんに「父親は?」と問われるも、
神野は「まだいないです」としか答えることができなかった。
木村とは相変わらず連絡が取れないでいた。
北村は学校のOBを装い木村の母校である中学校に潜入し、神野と接触する。
神野に木村の居場所を聞くが、神野もわからないと答え、連絡も繋がらない。
謎の女と一緒に写り込む木村の写真を神野に見せると神野は沈黙してしまう。
ここから神野と北沢はともに木村を探すこととなる。
北沢の言われるがままに、木村捜索の依頼をしてきた梶山商事の社員の尾行を始める。
社員はボウリング場で梶山商事の社長と接触し、
そこには北沢自身が追われるヤクザとの繋がりもあることを確認する。
若い部下は北沢を裏切り、北沢の北海道への逃亡をばらしてしまう。
ヤクザから北沢の元へ電話が入り、事務所にヤクザが来る。
荷物を纏め、逃亡した北沢は木村を見つけ出すことに躍起になっていた。
北沢は神野を使い、風俗店に潜入させる。
そこで出てきた女の子に写真を見せる。
彼女の名前は「アユミ」昔ここに在籍し、
木村と会話していたことを話す。
一方で神野が木村に貸した車が違法駐車で警察に押収されていた。
車の中には買いたての結婚指輪と、木村の携帯電話が残されていた。
違法駐車されていたホテルの前で、木村の携帯電話を北沢にすり変えられる。
その後北沢から、ホテルのエレベーターで防犯カメラに映る木村とアユミの姿を見せられる。
ここでも神野は沈黙してしまう。
北沢に「妊娠中の不倫はよくあること」と煽られ、神野は北沢の元を去ってしまう。
神野が家に帰るとそこには木村とアユミの姿があった。
アユミと撮られた写真が流出したことと、探偵に追われていることを伝える。
携帯電話を返すが、すり替えられていることにやっと気が付く。
北沢は木村の携帯の留守電から、神野と木村がグルであったことを知るが、
追われていたヤクザに捕まってしまう。
ここから計画は動き出す。
木村は梶山商事の社長に電話をかけ「取引」を持ちかける。
取引 木村は「梶本商事の社長と暴力団が繋がっていること」の、 証拠となる資料を持っていると言う。 その資料を渡す代わりに現金を貰うという取引。
この取引のためにうどん屋に社長を呼び出す。
梶本商事の社長とヤクザのボスは車の中で接触する。
お金を木村に渡し、資料を返してもらうことを決め、
後のことはヤクザに任せることにする。
ヤクザのボスはアユミを妊娠させていたことを北沢に自白し、
社長のお金を狙っていると思い込む。
ヤクザは木村とアユミを捕らえるためにホテルに行くが、
救急車と人が集まり中に入れない。
ヤクザのボスにはアユミの死んでいる(ようにみえる)写真が届く。
病院に居る美紀の危険を危惧した神野は美紀を母校の保健室に移動させる。
解放された北沢はすり替えた携帯電話の位置から学校に神野がいることがわかり、
学校に向かう。
神野は学校に来た北沢に全てのネタばらしをする。
・本当の「アユミ」の正体は冒頭で出産した美紀である。 (子供はヤクザのボスとの子供である) ・木村と写真に写っていたアユミは神野の妹で潜入警察官。 ・木村は梶本商事で働きながら警察の協力捜査もしていた。 ・そもそも彼らは警視庁の梶本商事とヤクザの逮捕に協力していた。
そもそものことの発端
神野と木村は中学校の同級生で今でも仲が良く、 ある日、神野は木村の仕事の付き合いである飲みの迎えに行った。 木村は付き合いで訪れたキャバクラで、たまたま中学校の同級生である美紀と出会う。 美紀は「助けてほしい」と二人にすがり、 美紀のおなかの中にはヤクザのボスとの子供がいて、「おろせ」と言われていた。 神野は警察である妹に、このことを相談する。 警察は美紀を保護し、梶本商事に勤務する木村に内部調査の協力を仰ぐ。 全ては梶本商事の社長とヤクザの逮捕のためであった。
北沢は神野を脅すために拳銃を持ち込んでいたが、
警察が学校を訪れ、銃刀法違反で逮捕される。
うどん屋に深夜に呼び出された梶山商事の社長は木村と接触する。
ビールを飲ませ、お金を受け取り、とあるCD-Rを渡す。
お客さんがたくさんいる中、木村は札束を数え始める。
社長が去ると、今度はヤクザの親分が木村の元へ来る。
その瞬間、お客さんに扮した警察がヤクザのボスを捕らえる。
うどん屋を去った社長は運転中、仕組まれた検問にひっかかり、
飲酒運転として検挙される。
CD-Rも怪しく思われ、そのCDは違法ポルノのDVDであったために逮捕される。
(元々は北沢が取引のために所有していたDVDであった)
夜明けのうどん屋には長年追い続けた犯人を捕まえられた警察の喜ぶ姿があった。
冒頭の過去の続きが描かれる。
中学生の美紀は木村に手紙を渡す。
そして「神野君に渡してほしい」と言い、
転校してしまうことを伝え、去ってしまう。
現代の中学校の前で、美紀と神野は佇んでいた。
神野はあの時、木村から手紙を受け取った後、美紀を一生懸命探し、
「一緒に帰ろう」と伝えたかったと言う。
そして目の前で「一緒に帰ろう」と伝える。
エンディング後、神野の車の中にあった結婚指輪を付けて、
子供をあやす美紀の姿があった。
ネタバレ徹底考察
奇跡の伏線回収とダブルミーニング
今作の映画を観て、まず感じたことは、
ここまで鑑賞者を本気で騙しに来ている作品はそうそうない、
ということだった。
登場人物はわかるが、視聴者にはわからない、
そんな仕掛けが今作には綿密に練り込まれている。
その核ともなる仕掛けが「ダブルミーニング」だろう。
視聴者から見るシーンと、キャラクターが感じる意味が全く違う意味とるシーンが
とてもうまい作品となった。
例えば、冒頭の「最近忙しそうだよね、無理しないでね。」
これを鑑賞者は、「夫婦の会話」として受け取り「仕事が忙しい」と解釈するが、
真実は、「友達の会話」であり「警察の協力が忙しい」である。
文字によくある( )の表現がこの映画の最大の仕掛けだろう。
・出産間近の美紀に神野が、 「でもアイツ、しっかり頑張ってくれてるでしょ(警察の捜査協力を)」 ・出産後の看護師の「お父さんは?」の問いかけに、 「お父さん、まだいないです(彼女は未婚の母なので)」 ・中学校教師である神野が美紀に、 「今日、練習なんだ(部活じゃなくて捜査協力の)」
などの会話が数多く練り込まれている。
そしてダブルミーニングとして機能している場面がセリフだけではないのも、
この映画のすごいところである。
・どう見ても父親に見える人が「頑張ってくれなくては困る」 (刑事が捜査協力を仰いでいる。) ・車内で結婚指輪を見つける。 (木村の不倫のシーンに見せかけ、実際は神野から美紀への結婚指輪) ・木村とアユミがホテルに入るシーンで神野は驚きの表情を浮かべる (木村の不倫ではなく、妹と木村が仲良くしているショック)
「鑑賞者であること」を利用したトリックをうまく取り入れた構成であり、
今作の脚本や監督を手掛けた内田けんじ監督に盛大な拍手を送りたい。
また、内田けんじ監督の作品である、
「鍵泥棒のメソッド」も上手に作られた作品なので、観てみることをオススメする。
役者すらも利用したキャスティングトリック
今作をもう一度鑑賞してみると、
今作でのトリックは構成やストーリーだけではないように感じた。
それは「役者のキャラ」すらもトリックであることである。
大きなキーマンとなるのはやはり主演の神野を演じる「大泉洋」
彼のキャラクターだけで、「佐々木蔵之介」に振り回されてしまうキャラクター
だと思い込んでしまっている現象が起きた。
そして「堺雅人」の独特な演技。
底が見えない彼の演技はどこか裏があるような気がしてしまう。
そんな鑑賞者の予測を裏切られるような役者の演技力も今作は楽しめる。
そういった役者のキャスティングすらもトリックと考えて鑑賞してみることも、
2回目、3回目がより面白くなる秘訣だろう。