トランス・ワールド
2011年、ジャック・ヘラー監督によって
制作された作品。
森の中からの脱出を試みる3人の物語。
上映時間は89分。
あらすじ
とある女性「サマンサ」は
山中でガス欠に遭い、
頼みの綱の主人ともはぐれてしまい、
山の中に一人取り残されてしまう。
捜索するうちに見つけた山小屋で
青年「トム」と出会うのだった。
トムもまた車の事故により、
遭難してから
4日が過ぎようとしているのだった。
脱出の方法を模作するが
なかなか見つからない中、
新たな女性「ジョディ」と出会う。
情報を交換するうちに、
衝撃の事実が発覚する。
それは、それぞれの遭難した場所が
全く違う州での出来事だったのだった。
3人はパラレルワールドのような森からの
脱出を試みる。
ネタバレ感想と考察
全ての謎が隠された、冒頭の「金庫」
映画を一通り見てみてわかるのが、
冒頭とラストで登場したあの「金庫」。
確実にパラレルワールドの鍵を握るような
アイテムであるが、
中に何が入っているかは明かされない。
そしてラストシーンからもわかるように、
「別の人物」であっても
稼働するツールであることは
一目瞭然だろう。
ショップに対して強盗を働く人間の対して
稼働するようなサイクルができているが、
最早あの店主が待ってましたと
言わんばかりの対応をしているのに、
映画の本質が見えてくる。
「強盗」を働くような人間の「更生」を
目的とした見方もできるし、
そんな血筋の「消滅」を
目的としているようにも見える。
何にせよチャンスが与えられていること
だけは確かである。
映画の本当のテーマは…
今作の映画、
主人公の3人の男女が中心となり
境遇や現状をじわじわと
理解していく構成となるが、
冒頭のシーンから見ても、
パラレルワールドの創造の要因は
破天荒な女の子「ジョディ」が
引き金となっている。
彼女の行動、
一つ一つが自分の息子に影響を与え、
それは集まった人間誰しもが、
同じ条件となっているのが
本作の面白いところだ。
迷惑をかける相手は「他人」でなく、
「身内」であり家族である。
そんな母や息子の人生も左右される
一人ひとりの「想い」や「行動」が
本作のメインテーマとなった。
数々の伏線が張り巡らされた作品だった。
物語の中盤で
森がパラレルワールドであることを知り、
後半で「血が繋がっている」ことが
明らかになるが、
そんな時代の違いを匂わせる伏線が
沢山貼られていた。
・トムの「クラシックカー」の表現と それに対するサマンサの返し。 ・ライターを使うジュディとサマンサの 「いいライターね」 「どこのガソリンスタンドにもあるやつよ」 とのやり取り。 ・「古くさいベスト」というトムの指摘に 新品であるというジュディの返し。 ・「パックマンみたい」という ジョディの表現に イマイチピンと来ていないトムの反応。 ・ジョディの口から 映画「脱出」の話題が出るが、 それを知らないサマンサ。
それ以外にも
数々の伏線が張られているのが、
本作の大きな見所となっている。
皆さんも今一度、伏線探しをしてみては?
物語以外もあった、数々の特殊要素。
物語としてもしっかりしている割りには、
なかなか有名にならず「B級映画」としての
立ち位置に甘んじる本作であるが、
その真相は
本作が「低予算映画」であることが
関係しているだろう。
日本円にして6000万円で制作された
本作品であるが、
数々のハリウッド作品が名を連ねる
アメリカ映画では、
かなりの低予算であっただろう。
そして我々日本人好みの
伏線や終わり方であるが、
アメリカではあまり好まれた
演出ではないようであった。
また、「ホラー」を謳った
作品であるにも関わらず、
映画後半では
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
さながらのタイムトラベルアクション感が
織り成され、
需要と供給のマッチングが
ズレてしまうような
作品となったと考えている。
ちなみに本作の「トム」を演じた
「スコット・イーストウッド」は、
「クリント・イーストウッド」の
実の息子である。