「50/50 フィフティ・フィフティ」ネタバレ感想と考察【ガン宣告された青年の物語】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

50/50 フィフティ・フィフティ

2011年、ジョナサン・レヴィン監督によって公開された

アメリカのコメディ映画。

「ガン」と宣告された、一人の青年の物語。

上映時間は98分。

 

あらすじ

ラジオ局に勤めるアダムは今年で27歳、

彼女との結婚も考え始めた頃、

急な腰の痛みを感じることとなる。

 

不思議に思ったアダムは、

なんの気なしに病院に行ってみると、

そこで衝撃の結果が伝えられるのだった。

 

それは「ガン」だった。

そして生存率は50%であることも伝えられる…。

 

出演役者

主人公である「アダム」を演じるのが

「ジョゼフ・ゴードン=レヴィット」

 

親友である「カイル」を演じる「セス・ローゲン」

 

彼女である「レイチェル」を演じるのが

「ブライス・ダラス・ハワード」

 

母親の「ダイアン」を演じるのが

「 アンジェリカ・ヒューストン」

 

セラピストの「キャサリン」を演じる

「アナ・ケンドリック」

 

見どころ「重さを損なわないまま明るく描かれた作風」

「ガン」をテーマに描かれたのに、

明るい作品である…という謳い文句を聞くと、

その言葉だけでは、どうしても「軽い映画」だと

思ってしまう人がほとんどだろう。

 

そんな中、今作は、

ギャグあり感動ありの中でも、

決して「ガン」というテーマを扱う

重さを忘れない作品に仕上がっていた。

 

主人公、その境遇、

周りを取り巻く登場人物たち、

その全ての要因により、

上手く「軽く」ならないような

作品作りができている作品なのだ。

 

そして主人公アダムの絶望、葛藤、心境の変化など、

とてもリアルな心理描写ができているのも、

今作の見どころだろう。

 

配信コンテンツ

「50/50 フィフティ・フィフティ」は今現在

Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。

Amazonプライム

U-NEXT

ネタバレあらすじ

ラジオ局に勤めるアダムは今年で27歳、

彼女との結婚も考え始めた頃、

急な腰の痛みを感じることとなる。

 

不思議に思ったアダムは、

なんの気なしに病院に行ってみると、

そこで衝撃の結果が伝えられるのだった。

それは「ガン」だった。

そして生存率は50%であることも伝えられる…。

 

動揺を隠せないアダムだったが、

彼女や親友、両親にこのことを伝える。

彼女に別れを迫るアダムだったが、

そばにいてくれるのだった。

 

ガン宣告を受け、

早急な抗がん剤治療が始まるアダムだったが、

不思議と心は落ち着いていた。

 

そんな矢先、患者たちの心のケアを担当する

セラピストをオススメされ、

セラピストの「キャサリン」と出会う。

平常心を保てていると感じたアダムは、

セラピーを雑にこなすのだった。

 

髪の毛が抜け落ちるのを嫌がったアダムは、

親友と一緒に、自らの手で坊主にする。

 

彼女である「レイチェル」は自分の看病をしてくれていたが、

ある日、浮気していることが発覚するのだった。

これを機に彼女とは別れ、

アダムと親友カイルの自由な生活が始まる。

「ガンであること」をネタにナンパし、

家まで連れ込むが、

なかなか性欲が出てこないアダムだった。




ある日、治療の帰りのバスを待っていると、

セラピストのキャサリンと出会う。

彼女の車で送ってもらえることになったアダムは、

彼女と親密な関係を築いていくのであった。

 

翌日、彼女が荷物を取りに家に帰ってくる。

もう一度付き合うことを迫ってくるが、

アダムはこれを拒否する。

 

抗がん剤治療を続けていたアダムだったが、

ある日医者から、

抗がん剤が全く効いていないことが告げられる。

アダムは成功率50%の摘出手術を迫られるのだった。

 

ある夜、アダムはカイルと遊ぶが、

彼のナンパ狂にうんざりし、激しく怒鳴ってしまう。

カイルの車の中で今まで抱えていた悩みを

全て吐き出すように叫ぶのだった。

 

そしてアダムはセラピストのキャサリンに、

初めて自分から電話を掛ける。

そこでアダムは「キャサリンが好きであること」を伝える。

 

酔っぱらったカイルに謝りつつも、

介抱し家まで送ってあげるアダムだったが、

カイルの家のトイレで「ガン患者との向き合い方」という、

熟読された本を見つける。

今までの態度を後悔し、

何とも言えない気持ちになるアダムだった。

 

そしてついに手術を決意するアダム、

当日はカイル、両親、キャサリンなど、

「自分の大切な人」に見守られての手術となるのだった。

 

そして手術は無事成功、

キャサリンを自宅に招き、

アダムは告白の結果を聞こうとする。

 

ネタバレ考察

「ガン」という重いテーマをキャッチーに描いた作品だった。

今作のテーマは「ガン」という病気。

そんな病気を患い、

生きる可能性が50%であることを告げられる主人公であるが、

そんな重いテーマにも関わらず、

今作はとてもキャッチーに描かれている作品となった。

 

キャッチーと言っても、ただただ軽いだけではなく、

しっかりと重みもある内容で描かれた

キャッチーさであるのが本作の見どころだろう。

 

そのキャッチーさの真相は、

間違いなく、主人公を含めた

登場キャラクター達による個性だったり、

やり取りだったりであることがよくわかる。

 

そして重みを失わなかった理由、

それは本作の脚本を担ったウィル・ライザーも、

過去にガンを克服した「元ガン患者」であったことだろう。

 

自身の経験から作られるストーリー

だからこその重みが、

この作品には詰め込まれている。

 

個性的な登場キャラクターと主人公の関係性。

今作で主に登場するキャラクターとして、

まずは親友の「カイル」、彼女である「レイチェル」

両親、そしてセラピストの「キャサリン」

アダムがガンを患い、闘病生活を送る中で、

この4人との人間物語こそが、物語の本筋だった。

 

そう、「闘病生活」だけではないのである。

 

ナンパすることしか頭に無いように見えた親友でも、

ヒステリックになりがちでうざったい母親も、

心の底からアダムのことを考えてくれている。

 

そして彼女との別れ、セラピストとの出会い、

これらのやり取りを「ガン」という病気を

介して学んでいくような作品に見えたのだ。

 

特に親友のカイルが、酔っ払って寝てしまいながらも、

トイレに置いてある「ガン患者との向き合い方」という

熟読された本を発見したシーンでは涙が流れてしまった。




自分に重ねた時、物語の本当に伝えたかったことがわかる。

今作を鑑賞して、観た人のほとんどは

アダムの立ち位置を自分に重ねるだろう。

「もし自分がガンにかかったら?」

そして、

「もしあの人がガンにかかったら?」

 

そんな想像を掻き立てるような脚本に仕上がっており、

同時に、アダムを取り巻く人間の存在を想像させることが、

今作の真骨頂である。

 

もしガンにかかった時、周りには誰が残ってくれる?」

 

今作は、「ガンと向き合う映画」であると同時に、

自分にとって一番大切な人達」

思い出させてくれるようなメッセージが詰まっている。

今、この瞬間から、

考え方をここまで感化されるような作品は、そう多くはない。

 

「ガン患者」としての自分を受け入れるまで

そうは言ってもガンがテーマである以上、

描かれるのはアダム本人のこと。

物語の最初から最後まで、

アダムのガン患者としての受け入れ方が描かれる。

 

ガンであることを宣告された時、

終始アダムは穏やかだった。

しかし、抗がん剤の治療が進むにつれて、

イライラは募り、

終盤に入る頃にアダムは車内で発狂する。

 

「なんで自分が?」

その言葉だけが頭の中で堂々巡りをするシーンは、

今までの彼のキャラクターを見ていれば

衝撃的なシーンだった。

 

彼が親や親友、セラピストの愛を受け入れ、

覚悟を決める時まで、

物語はずっと平行線だったような脚本にも見えるだろう。

 

今作の主人公はとても「人間力」が高く、

一般の人よりも強い精神の持ち主だった。

ガンを患っている人の「指標」となるような

彼のガンに対する向き合い方は、

これから先、ぼくがガンに侵された時に生きてくるのかもしれない。