本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
翔んで埼玉
2019年、武内英樹監督によって公開された
日本のコメディ映画。
原作となる漫画作品があり、
魔夜峰央によって1982年に発表されている。
埼玉を中心に展開される、
パラレルワールドでのおとぎ話調の物語。
上映時間は106分。
あらすじ
19XX年、東京では
「埼玉県民」に対する迫害が続いていた。
東京都内へは「通行手形」がなければ、
入ることができない時代を迎え、
虐げられた生活を送る埼玉県民だった。
そんなある日、東京都内の名門校、
「白鵬堂学園」に一人の転校生が訪れる…。
出演役者
今作の主人公「麻実麗」を演じるのが
「GACKT」
今作のもう一人の主人公、
「壇ノ浦百美」を演じるのが「二階堂ふみ」
麻実のライバルとなる、
千葉県の総大将「阿久津翔」を演じるのが
「伊勢谷友介」
その他も、
「中尾彬」や「京本政樹」など、
名だたる名役者が登場する。
見どころ「笑ってしまうほどの自虐的映画」
今作の映画、テーマはなんと1〜10まで「埼玉」で
埋め尽くされている珍しい映画である。
ジャンルは100パーセントのコメディであり、
ネット上でよく話題とされる、
「千葉」「埼玉」そして「東京」の地理関係を
イジり倒した作品である。
ここまでコメディに振り切った作品も昨今では珍しくなっただろう。
そんな今作も、
原作は魔夜峰央の同名作品であり、
彼自身も執筆当時は埼玉に住んでいた。
作者自身の埼玉に対する自虐的な愛を感じれることができ、
脚本、演出、役者、全てが
エンターテインメントとして
しっかりと噛み合った面白さが見どころだろう。
配信コンテンツ
「翔んで埼玉」は今現在、
Amazonプライム、U-NEXT、dTV、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
舞台は埼玉、
熊谷市に住む「菅原家」の娘、
愛海の結婚の結納に向かうため、
家族3人で東京都内へ向かう。
道中のカーラジオから、
都市伝説を題材にしたラジオドラマが始まるのだった。
19XX年、東京では
「埼玉県民」に対する迫害が続いていた。
東京都内へは「通行手形」がなければ、
入ることができない時代を迎え、
虐げられた生活を送る埼玉県民だった。
ある日、東京の名門校、
「白鵬堂学院」にとある転校生が訪れる。
その名は「麻実麗」
名門校に相応しい佇まい、
都会に染まった美しい容姿に、
人気者となる麗だった。
しかし、そんな人気に嫉妬した学園トップの
「壇ノ浦百美」は、
あらゆる手立てで
麗に屈辱を味わわせようとする。
しかしどれも持ち前の才能や、
圧倒的な知識で乗り越える麗に対し、
いつしか恋をしてしまう百美であった。
そんなある日、
迫害される埼玉県民を庇う麗の姿から、
麗が「埼玉県民」であることがバレてしまうこととなる。
麗は、理不尽な埼玉県民の迫害や、
通行手形の撤廃を目指し、
東京の名門校に潜入してきていたのだった。
東京都から追われる身となった麗は、
追ってから逃れる為に
千葉、茨城を経由し、
埼玉に逃げ帰ることとなる。
麗に恋をした百美も
この道中に着いてくるのだった。
麗は、千葉や茨城の旅路で、
「埼玉、千葉解放戦線」と呼ばれる、
戦争が起きていることを知る。
麗の帰還から程なくして、
埼玉と千葉の戦争が始まるのだった。
今まさに激突しようとした両者だったが、
これは実は演技で、埼玉千葉の連合軍として、
東京都に攻め込むこととなる。
これを受けて、
東京都知事である百美の父に、
通行手形による不正財蓄があることが、
白日の元に晒され、
無事に埼玉の迫害は無くなり、
通行手形の撤廃が成功するのだった。
その日から、
麗と百美により、
日本中に埼玉を浸透させる
「日本埼玉化計画」が始まるのだった。
…というラジオドラマだった。
都会に住めると息巻く愛海だったが、
その婚約者はラジオドラマに感動し、
「春日部」に家を持つことを
涙ながらに誓うのだった。
そして、
そのラジオドラマの企画をしていたのは
他でもない、麗と百美だった。
皆の気が付かないうちに、
「日本埼玉化計画」は着々と進行している。
ネタバレ考察
実際に登場する場所や人物の徹底した拘り。
今作の映画、
見てて気がついた人も多いと思うが、
場所や地名、人物など、
様々なところで実際に存在するものが使われている。
建物、場所はもちろん、
埼玉の名産品、名物、ご当地出身の芸能人、
ご当地ゆるキャラ、埼玉発祥の飲食店まで、
ありとあらゆる箇所での細かな演出が冴え渡っているのだ。
一度鑑賞しただけでは追えないほどに
その細かな演出は多く、
二度目、三度目も楽しめるような
作品に仕上がっている。
ちなみに、今作のダブル主演となる
「GACKT」「二階堂ふみ」の二人、
二人とも「沖縄県出身」である。
さらに、
作中で「東京都知事」を演じた中尾彬が「千葉県出身」
「千葉県総大将」を演じた伊勢谷友介が「東京都出身」である。
キャスティングの謎は深まるばかりである。
ローカルなギャグにここまで全力投球する凄さ
皆さんは「映画で笑う」ということを
経験したことがあるだろうか?
いくらコメディ映画であっても、
普段からテレビなどでお笑い番組を見て笑うのとは
また違ったハードルで観てしまい、
映画を観て笑う人は少ないだろう。
しかし今作、映画でありながらも、
作中で描かれるものは1から100まで
ギャグ要素となるものだった。
一見すれば「寒い」映画だったり、
費用の無駄使いとも思われるが、
GACKTや二階堂ふみ、
その他大勢の役者、
更にはローカルメディアや企業、
地域の力を借りて、
ここまでコメディにフルスイングする映画は
今までに観たことが無かったのだ。
そんな今作で起きる面白い現象、
それが大物役者の真面目な全力ボケだった。
その面白さの本質は、
キャスティングされた役者の持つ
キャラクターをそのままに演じていることにあるだろう。
あのGACKTが、あのキャラクターのままに
真面目な顔でボケ倒す。
もちろん、物語の中ではボケてなどいない。
そんなシュールな空気感に
感じる面白さが今作の真骨頂だろう。
更には、原作で描かれた「BL要素」も、
そのままに再現されている。
GACKTと伊勢谷の濃厚キスシーンなど、
普通の映画では決して描かれることの無い
シーンが容易に描かれている。
ここまでの金をかけて、
コメディにフルスイングした作品、
いくら下らないギャグでも、
ここまで振り抜けば面白い。
今作は目の付け所が秀逸すぎる作品だった。
全ては原作漫画に依存してしまうことではあるが、
映画作品の時代背景は現在でありながらも、
「戦国時代」を彷彿とさせる、
パラレルワールドで描かれた作品だった。
そんな「戦国時代」の考え方に取り入れられた、
「県同士の争い」という異質な着眼点こそが、
本作における一番の成功要因だっただろう。
東京、その次に都会な神奈川、
争う埼玉と千葉、
傍観する群馬、栃木、茨城、
本来ならあるはずもない、
関東地方における県の優劣関係であるが、
どことなく漂う県民ネタの空気感を
見事に読んだ脚本だっただろう。
正に戦国時代にあったであろう、
陣地をベースとした争いが行われること自体が、
とても新しい映画に感じた。
ただ、栃木出身の筆者としては、
栃木の出番が少なく、
少し寂しい気持ちになってしまったのだった。