「葛城事件」ネタバレ感想と考察【有名な通り魔事件をベースに描いた作品】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

葛城事件

2016年、赤堀雅秋監督によって制作された作品。

実際に起こった連続通り魔事件をベースに描かれた、

家庭崩壊の物語。

上映時間は120分。

 

あらすじ

舞台は日本、

葛城家の次男である「稔」は、

刑務所の中で「死刑」の宣告を受けていた。

「死刑制度の撤廃」を掲げる順子という女性は、

稔と「獄中婚」を果たし、

「葛城家」の闇へと切り込んでいく…。

 

出演役者

今作の物語の進行役、

「順子」を演じるのが「田中麗奈」

 

物語の主人公、葛城家の父である、

「清」を演じるのが「三浦友和」

 

葛城家の長男「保」を演じる「新井浩文」

 

葛城家の次男、事件を起こす「稔」を演じるのが

「若葉竜也」

 

葛城家の母「伸子」を演じるのが、

「南果歩」

 

見どころ「実際の事件がベースとなった作品」

今作の映画で繰り広げられる事件「葛城事件」では、

ベースとなった事件がある。

2001年に大阪で起こった、

「附属池田小事件」である。

附属池田小事件

2001年6月8日に大阪府池田市の
大阪教育大学附属池田小学校で
小学生8人を無差別に殺傷した事件である。

犯人は自ら死刑を望んでの犯行であり、
犯人の家庭も崩壊状態にあった。

日本全国に衝撃を与えた事件として

未だに有名な事件であるが、

そんな想像を絶する事件を描くにあたり、

今作はリメイクした内容となった。

 

終始、狂気を感じさせる演出

役者の演技力に注目の作品だろう。

 

配信コンテンツ

「葛城事件」は今現在、

Amazonプライム、NETFLIX、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

舞台は日本、

葛城家の次男である「稔」は、

刑務所の中で「死刑」の宣告を受けていた。

「死刑制度の撤廃」を掲げる順子という女性は、

稔と「獄中婚」を果たし、

「葛城家」の闇へと切り込んでいく…。

 

葛城家の長である「清」は、プライドが高く傲慢、

そして典型的なパワハラ夫として、

家族から恐れられていた。

 

母の伸子は手料理を全くせず、

食卓はいつもインスタントや、

コンビニごはん、ジャンクフードで埋め尽くされた家庭だった。

 

次男の稔は引きこもりのニート、

職探しを迫られても、

一時的な言い訳で現実から目を背け続けた。

父の清とは険悪な関係にあるのだった。

 

唯一まともな長男「保」であったが、

彼もまた極度のあがり症で、

心身的ストレスを溜め込みやすい性格だった。

 

そんなある日、

保が会社をリストラされてしまう。

嫁と子供を抱える身として焦りを感じた保は、

再就職の面接も極度の緊張により、

上手くいかない。

それでも家族には言うことができず、

悩める日々を送るのだった。

 

保が家を出てから、

すっかり冷めきってしまっていた葛城家であったが、

ある日、清は伸子に性交を迫る。

これを拒否した伸子は「清のことが嫌い」である感情を爆発させ、

家を飛び出してしまう。

 

清から逃げるように

小さなアパートに住み始める伸子と稔であったが、

父に逆らえない保の計らいで、

激高し、アパートに来た清。

清は稔を刺し殺そうと試みるが、

これに失敗し、我に返るのであった。




その後、保が「申し訳ない」と、

書置きを残して自殺をする。

久しぶりに外に出た稔は、

駅の地下で複数人を刺し殺す

通り魔事件を発生させるのだった。

 

保が自殺し、稔は刑務所に、

母の伸子が精神病院に入院した葛城家は、

清だけが残ってしまった。

 

稔と獄中婚をした順子から、

稔の刑が執行されたことを知って

項垂れる清。

 

一人になると「首吊り自殺」を試みたが、

死ぬことができず、

食べかけの冷やし中華を無言で食べ進める清だった。

ネタバレ考察

今作の中心人物、三浦友和の圧倒的演技力。

実際に起こった悲惨な事件を映画化するに当たり、

今作の映画をどう演出していくかはとても重要な項目となっただろう。

 

そんな作風を芯から作り上げたのが

三浦友和の圧倒的な演技力だと感じた。

プライドの高い厳格な父親であり、

厳しさとパワハラの振れ幅が

絶妙なバランスのキャラクターを

演じきってくれたのだ。

 

この演技を見て、

自分の父親を思い出した人も、

少なからず居るのではないだろうか?

 

細かな仕掛けの蓄積が秀逸な作品。

決して明るい作品ではない今作、

作中を通して、ずっと暗雲が立ち込めている。

 

それは後に、稔の事件により、

大爆発を引き起こすわけだが、

その爆発までの「暗雲」の張り方が、

とても上手い作品だと感じた。

 

パワハラに走る父親、

引きこもりニートの弟、

ストレスを溜め込む兄、

天然すぎる母親、

その全てのキャラクターの一挙一動が

鑑賞者の心を逆撫でる。

 

このモヤモヤや気持ち悪さを楽しむ作品であり、

今作の最大の見どころであるとも感じてしまった。

 

特に、保の結婚記念に中華料理店に赴くシーン。

激昴する父親やそれを取り巻く周辺人物、空気感、

とてもよくできている名シーンだろう。




「壊れていく過程」を楽しむ映画だった。

今回の作品を通して見てみて、

どのような部分に気持ち悪さを感じたのか考えてみたが、

その答えは「結果」ではなく「過程」

観せている作品だったからだろう。

 

実際の事件がベースになっている以上、

バッドエンドである結果は我々は知っていた。

それは冒頭での刑務所のシーンからでも

掴める情報だろう。

 

今回で描かれたのは、

「どのようにして崩壊していったのか?」

という過程だったのだ。

 

崩れそうになりながらも、

かろうじで繋いでいく家族の絆、

それが父親により段々と壊されていく作風が

「見たくないのに気になってしまう」ような、

作品を作り上げたのだ。

 

「音量」の使い方がとても上手い作品だった。

今作における「狂気」を盛り上げてくれた演出として、

ひとつの仕掛けとなったのが、

作品の「音量」だろう。

 

清が怒鳴るシーンでは、

とても大きな声量であり、

狂気を感じるほどの怒りが伝わってくる。

その一方で、無気力感溢れる稔のボソッとした一言

メリハリのある音量の仕掛けこそが、

今作の雰囲気を作り上げた要因のひとつだろう。

また「環境音」に関しても、

拘りが伝わる。

 

映画の最後、清が冷やし中華を啜るだけのシーン、

鑑賞者の耳は麺を啜る音だけが、

印象として残っているのだ。