ごっこ【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

「ごっこ」

2018年、熊澤尚人監督により公開された日本映画。
原作となる漫画「ごっこ」を書いた「小路啓之」は、
2016年の10月に心筋梗塞で死去している。
実写映画化となる今作は、小路啓之氏の命日にあたる、
10月20日の公開となった。
ちなみに主題歌はあの「川谷絵音」がフロントマンを務める、
「indigo la End」の楽曲である。
上映時間は114分。

あらすじ

ニートで引きこもりの「城宮」は、今日も部屋にこもって、趣味のフィギアを制作していた。
小学生たちが「引きこもり」であることを馬鹿にしながら、窓をめがけてエアガンでBB弾を打ち込む。
苛立った城宮は窓を開けて小学生を追っ払う。
その時、向かいの建物からアザだらけの少女が手を差し出している光景が目に入る。

何かを感じた城宮は全速力で少女の元に急ぐ。少女は一発のBB弾を城宮に差し出した。
おもむろに城宮は、少女を誘拐して立ち去る…。

出演役者

今作の主人公の城宮を演じるのは、芸人の「千原ジュニア」

 

城宮の誘拐する少女、「ヨヨ子」を演じるのが「平尾菜々花」

 

城宮のかつての同級生「マチ」を演じるのが「優香」である。

見どころ①「重くダークな内容がポップに描かれる」

今作の映画、とある少女を誘拐してしまうニート男の物語であるが、
言葉で聞くと、かなりダークな内容に聞こえるだろう。

そんな重いテーマに反して、内容は明るくポップに描かれる描写も多く、
ほっこりしてしまうようなシーンも数多くあるのが、今作の特徴である。

見どころ②「原作漫画の負けない、独特な役者陣の圧巻の演技」

今作の原作となる漫画「ごっこ」、実は映画以上にダークな内容となる作品である。
そんな重い内容の原作に、以外にも負けない作品となった。

その理由は、出演役者にある。
主人公を演じるのは芸人「千原ジュニア」
そして少女を演じる「平尾菜々花」

この二人の演技力が、ただひたすらにすごい。

顔つき、スタイル、声のトーン、そのキャラクター全てが、
独特な空気を放つ千原ジュニアの圧倒するような演技に、
平尾菜々花の強烈な目力が突き刺さる。

漫画の独特すぎる空気感を見事に昇華した演技力こそが見どころだろう。

配信コンテンツ

「ごっこ」は今現在、
Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。

Amazonプライムで30日間お試し無料登録

U-NEXTで30日間お試し無料登録

「ごっこ」単品の配信レンタルは300円で視聴できます。




ネタバレあらすじ

ニートで引きこもりの「城宮」は、今日も部屋にこもって、趣味のフィギアを制作していた。
小学生たちが「引きこもり」であることを馬鹿にしながら、窓をめがけてエアガンでBB弾を打ち込む。
苛立った城宮は窓を開けて小学生を追っ払う。
その時、向かいの建物から少女が手を差し出している光景が目に入る。

少女は全身アザだらけだった。
何かを感じた城宮は全速力で少女の元に急ぐ。少女は一発のBB弾を城宮に差し出した。
おもむろに城宮は、少女を誘拐して立ち去る…。

とりあえず連れては帰ってきたものの、城宮自身のお金も底を尽きつつあった。
そして、少女を連れて、久しぶりに実家に帰ることを決意したのだった。

実家では、妻に先立たれた父が一人で、閑散としている「帽子屋」を営んでいた。
そんな父は少女を娘と思い込み、「自分は死のうと思っている」と、腹の内を話す。
翌日、父は近隣住民に「老人ホームに入る」という嘘をついて、自殺してしまい、
同時に父は、息子である城宮のために年金を不正受給できるように手続きをしてから去っていったのだった。

地元には城宮の当時の同級生であった「マチ」が婦人警官として働いていた。
マチに子供の名前を聞かれた際、「ヨヨ子」と城宮は答えるが、
マチは、ニートであった城宮がいきなり幼女を連れて地元に戻ってきたことに疑問を抱くのだった。

やることもなく、とりあえず城宮は帽子屋を再開する。
家の中でヨヨ子に「お絵かき」をさせて過ごすが、
ヨヨ子が描いた絵に色を塗っていくことを催促されて、二人で絵を書くのだった。

そうして、二人の奇妙な親子生活が始まった。
城宮は今まですることのなかった家事全般をするようになり、
ヨヨ子は戦隊ヒーローにハマった。
神社に散歩に行ったり、ガシャポンで遊んだり、地面に絵を書いたりして遊ぶのだった。

近所のおばさんに「カボチャの煮つけ」を頂き、手料理のおいしさに気が付いたヨヨ子は、
カップラーメンを食べなくなり、見かねた城宮は料理をすることを決意する。
カレーを作るがヨヨ子はこれを食べず、床にぶちまけるが、頭に血が上った城宮は首を絞めたところで、
踏みとどまり、こういう時は「ごめんなさい」を言うことを躾ける。

そんなある日、マチの計らいで、三人でヨヨ子の好きなヒーローショーを見に行くが、
些細なことから、城宮は他の人とケンカになる。
頭に血が上る城宮だったが、ヨヨ子の制止により、ここでも踏みとどまる。
城宮はヨヨ子のおかげで変わりつつあった。

そんなある日、二人は縁日に出かける。
ヨヨ子を見失ってしまい、焦る城宮の元に、巡回中のマチが歩み寄る。
無線機に手を伸ばすマチに対し、「警察だけは呼ぶな」と制する城宮に対して、
疑問が膨らむマチであった。

そしてある夜、マチは城宮の住む家を訪ねる。
マチは真実を話すように諭すが、城宮は「誘拐」のことは白状しなかった。
そして「年金不正受給」についてだけ白状し、懇願する城宮に対してマチは、
これから働くことを条件に許すことを決めるのだった。

とある生花店で働き始める城宮だったが、
幸せの中にも、城宮は徐々に苦痛を感じていく。
ある日、生花店に出入りするカレー屋さんのチラシを見て、
ヨヨ子の実の母親であることを確信する。

そしていよいよ、ヨヨ子の実母のいる店に赴く。
誘拐したことの謝罪と、体のアザについて、
そして「なぜ警察に失踪届を出さないのか」を問い詰めるが、
そこに待ち受けていたのは、目の見えないヨヨ子の双子の妹だった。
夫の蒸発と、不治の病の娘で母はいっぱいいっぱいの状態だった。
体のアザは、当時、病気の妹の代わりに自分が死のうとしていたことにより、
ケガしていたことを知る。

家に帰り、項垂れながらもヨヨ子の帰りを待つ城宮だったが、
そんな彼の元に、不吉な知らせが入る。
それは、友達と虫取りに向かったヨヨ子が家に帰っていないことであった。
虫取りの場所がわからなかった城宮とマチは、集めていたBB弾に書かれた文字をヒントに、
犯罪集団からヨヨ子を助けるのに成功する。

後日、死のうとしていたことをヨヨ子に詰め寄り、
もうそんなことを考えないようにすることを約束する。

その後、城宮はヨヨ子の実家へ赴き、目の見えない妹への臓器移植になると考え、
ヨヨ子の実母を殺害する。

そして、城宮とヨヨ子は温泉旅行に出かける。
優雅なひと時を過ごし、廃墟の遊園地でかくれんぼをするが、
気が付くと後ろにはマチがいる。

感傷的になったマチに「逃げて!」と言われるが、
これを拒否し、殺人容疑で逮捕される城宮だった。

13年後、ヨヨ子は、
元の名である「紅葉(もみじ)」を名乗り、マチの養女として育てられ、
名門大学の法学部に受かるところまで育っていた。

5歳ころの記憶が思い出せない紅葉は、
記憶の糸を手繰るべく、刑務所内の城宮の元を訪れる。

何も喋らない城宮を前に紅葉は、記憶が思い出せないこと、
妹が病気で死んだことなど、これまでの身の上話を聞かす。

そして紅葉は今まで送られてきていたマンガ本について言及する。
前ページに「塗り絵」が施された漫画が紅葉の元へ送られてきていて、
それの送り主が城宮だった。
動揺しつつも「知らない」の一点張りをする城宮だったが、
そこから紅葉はすべての記憶を思い出す。
そして将来、弁護士になって城宮を助けることを約束する。

二人は泣きながらガラス越しに手を合わせる。

ネタバレ徹底解説

なぜ城宮はBB弾を見てヨヨ子の監禁場所がわかったのか?

作中には虫取りに行ったヨヨ子が帰ってこず、
BB弾に書かれた「客」という文字から監禁場所を導き出す城宮が描かれた。

一見謎なこのシーンであるが、その正体は城宮の仕事にあった。
作中、回収品の自転車を貰うことを条件に、
廃品回収の仕事を請け負う城宮とヨヨ子であったが、
途中にガラスケースや虫かごを渡す客との取引があった。

「虫取りに行く」そして「その場所はパパやんも知っている」等の発言から、
BB弾の「客」という文字を見て監禁場所を割り出した、ということである。

原作漫画を描いた漫画家「小路啓之」へのリスペクト

今作の原作漫画を描いた小路啓之氏は、
2016年の10月20日に心筋梗塞で亡くなっている。
小路啓之氏は、その独特でどこかダークなストーリー構成と、
画のタッチで、「ごっこ」以外にも今までに数々の作品を世に送り出してきた。
その作品の中でもひと際、光を放つ「ごっこ」が実写映画化に踏み切られた。

映画の公開日は、小島氏の死去から2年後の命日である、
2018年の10月20日となった。

そんな公開日や、キャスティング、ストーリーの練られ方からも、
小島氏への大きな敬意を表した作品であることは間違いないだろう。

また、今作の映画の冒頭では、小島氏へ向けられた追悼のメッセージが流れる。

原作のダークさを見事に昇華した実写化映画作品。

今作の映画は、映画作品としても重くダークな内容であったが、
原作漫画はこれよりもさらにダークな内容となる。

映画と原作の相違点
・城宮は最初、仕事を辞め自殺しようとしていた。
・城宮は最初、ヨヨ子を犯そうとした。
・城宮の父の遺体は火葬されず、白骨化した死体として床下に埋められた。
・その白骨死体をミキサーにかけて粉砕し、トイレに流してしまう。
・ヨヨ子は漫画では「仮面ライダー」のファンである。
・城宮の元カノとしての女性が登場する。
・ヨヨ子の通う保育園の園長はロリコンで、歪んだ性癖を持っていた。

映画では描くことのできないようなダークな内容だった。

そんなストーリーを見事に「映画」に落とし込んで、リメイクされた今作、
濃厚な原作から、違和感を覚えないような映画を作れたのは、その秀逸なキャスティングだろう。
主演であるのは芸人である「千原ジュニア」、
彼自身の持つ独特なオーラに加えて、芸人としての彼のオーラが上手く合わさっているように感じた。

そして舞台は大阪であり、キャラクターのやり取りは全て関西弁
そんな数々の要因が重い内容のフィルターの役割を果たしたのである。

映画よりもダークな小路啓之による原作漫画もまた面白い作品となる。