本記事は、映画「フローズン・ブレイク」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「フローズン・ブレイク」
2019年、ティグラン・サハキャン監督によって制作されたスリラー作品。
本作はロシア映画であるが、2010年に公開されたアメリカ映画「フローズン」の類似映画として有名な作品。
上映時間は90分。
あらすじ
舞台はとある山、「新年を山頂で迎える」という目的のために5人の男女が頂上へ向かうゴンドラへ乗り込むが、その途中でゴンドラは緊急停止してしまう…。
出演役者
本作の主人公カーチャを演じるのが「イリーナ・アントネンコ」
カーチャの恋人であるキリルを演じるのが「アンドレイ・ナジモフ」
配信コンテンツ
「フローズン・ブレイク」は今現在、Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
寒さ×高所×人間の恐怖
今までも数々のシチュエーションスリラー作品が描かれているが、本作での恐怖要素は主に3つある。
寒さ、そして高所、最後に人間の恐怖である。
映画の中でのシチュエーションは12月31日、場所は不明だが雪山の山頂途中に向かう中で起こる。
映画のキャッチコピーでは「マイナス10℃」という謳い文句であるが、冬の山頂の気温としては暖かいようにも感じる…。
本作が「ロシア映画」であることから、舞台の山もロシアなのだろうか?
山頂途中へのゴンドラであることから、高所であり、映画の途中では雪崩によって足場の崩壊=落ちることが死に直結する…という環境変化が起こるのは面白いプロットとなっていたように感じる。
また本作では4人の人間が密室のゴンドラに乗り合わせるが、「人間の恐怖」に関しても仕掛けが施してあった。
映画の始まりはとても急ぎ足で、山頂のゴンドラに乗り込むところからスタートとなったのも、これらの人間模様を鑑賞者に理解させるのに、急ぎ足の脚本となっていたのだと思う。
しかしながら、ここら辺の描かれ方に違和感を覚えることなく鑑賞できたのは、B級作品にしてはよくできていたと言ってもいいと感じた。
少し残念な人間相関図、現代風なスマホ演出とラストシーンの謎。
本作は、完全なるシチュエーションスリラー作品ではなく会話の端々から「恋愛要素」を匂わせるような造りとなってるが、その会話の端々からちょっとしたドロドロ感を覚えると同時に、「ツッコミどころ」を探し出してしまうのが、映画マニアの性だ。
本作でも厳しい評価で突き詰めていくと、人間模様のちょっとした雑な描かれ方が気になってしまう。
B級映画のテンプレートのような悪キャラによる秩序崩壊がそれを物語っている印象だ。
また本作では、時折ビデオ通話シーンがワイプのように映し出されるシーンがあるが、これが「単純なスリラー」では完結させないことを伝えたかったのだろうと思う…。
物語のラスト付近、晴天の草原ではしゃぐヒロインとその彼氏、そして1人の女の子…。
これは序盤で言及されているお腹にいる女の子を出産し、彼氏と結婚するハッピーエンドを夢見た彼女の妄想世界によるものと考えていいだろう。
物語の最初では例のビデオ通話のシーンで、身ごもった子を中絶し、キリルと別れることを考えていたはずが…身の危険を知ることにより自分の中でヨリを戻す…。
う〜ん…浅い…。
ちなみにこの妄想世界では、真っ赤な風船の束が空へ上げられるシーンもあるが、これは現実でキリルが持ち込んだ凧とリンクしていた伏線である。
「二番煎じ」にしては頑張った方…??
ご存知の通り、本作にはもう一本似た映画作品がある。
それは2010年に公開されたアメリカのシチュエーションスリラー作品「フローズン」である。
題名までも寄せていることから、本作はほぼ確実に上記の作品のオマージュ映画と言っていいだろう。
そうは言っても、こちらの「フローズン」とは違う箇所がいくつもある。
それは「リフト」と「ゴンドラ」の違いがあるということだ。
それに応じて登場人物の数ももちろん違いがある。
リフトの「フローズン」では3人、ゴンドラの「フローズン・ブレイク」では4人が渦中に巻き込まれるストーリーとなっている。
今回紹介した「フローズン・ブレイク」ではこれらの「おバカキャラ」による人災に巻き込まれた点が多いが、「フローズン」ではより自然との戦いが目立つ作風となっている。
今作のゴンドラでは密室故(ゆえ)の「安心感」も備わっていたが、リフトにはそれが無い。
自然の恐ろしさによる絶望をより恐ろしく感じたいなら「フローズン」をオススメしたい。
本作を観て、興味が湧いた人は是非ともこちらも鑑賞してみるといいだろう。
映画サイトfirmarksの評価でも、「フローズン」の方が高い評価を得ている。