「透明人間」のネタバレ感想と考察【SAWの監督が送る新しいパニックホラー】

  • 2021年4月20日
  • 2021年4月20日
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本記事は、映画「透明人間」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

透明人間

2020年、リー・ワネル監督によって製作された作品。

米豪合作の作品で、あの「SAWシリーズ」「インシディアス」を手掛けた監督の作品である。

小説家H・G・ウェルズが1897年に執筆した同名小説が原作となる。

上映時間は124分。

あらすじ

舞台はアメリカ、大豪邸で暮らす夫婦、エイドリアンセシリア、一見仲睦まじそうに見える彼らであったが、エイドリアンの束縛に耐えられず、セシリアは脱走を試みる。

二週間後、友達であるジェームズの家に居候しながら平和な日常を送るが、「見えない何者か」の手によってセシリアの人生は狂わされていく…。

出演役者

本作の主人公、セシリアを演じるのが「エリザベス・モス」

ロサンゼルス出身の熟年ベテラン女優で、ヒューマンドラマやスリラー作品等への出演が多い女優である。

 

本作の核となる存在、エイドリアンを演じるのが「オリヴァー・ジャクソン=コーエン

イギリスの俳優で、キャスティング作品は多くはないが、ヒューマンドラマや恋愛作品などに出演している。

 

セシリアの友達であり警察官のジェームズを演じるのが「オルディス・ホッジ」

アメリカ合衆国の黒人俳優で、「ダイ・ハード」シリーズにも出演している俳優である。

平和的なヒューマンドラマから、激しいアクション作品まで、多数の役をこなす。

ネタバレ感想と考察

リー・ワネルの放つ全力のパニックホラーに酔いしれる!

本作を鑑賞するにあたって、一切の前情報を仕入れることなく鑑賞した人は、その想像以上の「ホラー要素」に心地よくも感じる作品となっただろう。

そう、本作を手掛けたリー監督は、あの「SAWシリーズ」の一作目と三作目、ファイナル、そして有名ホラー作品の「インシディアスシリーズ」も手掛けたホラー作品のスペシャリストなのだ。

今回の大きなプロットとなった設定は「透明人間」で、見えない者から襲われる恐怖を絶妙な角度から煽ってくる仕掛けが売りとなっている。

ただただ透明人間から逃げ惑うだけではなく、じわじわとした陰鬱なホラー要素が随所に織り込まれる作風となっていた。

 

この作品のココが怖い!陰湿すぎるホラー要素!

それでは、前項で記述したホラー要素とはいったいどんなシーンだったのだろうか?

本項では、リー監督の仕掛けた絶妙すぎるホラー要素を挙げてみる

まず初めに、本作一番最初のホラー要素ともなっていた「ジェームズ宅にて、定点カメラの位置から包丁が勝手に落ちていく演出」だろう。

これはあまりのさりげなさに気が付かない鑑賞者も多かったのではないだろうか?

この「気が付かくか気が付かないかギリギリのライン」にこそ、リー監督のホラー作品の魅せ方の真骨頂が隠されている。

この演出を起点として、エイドリアンの悪行は次第にエスカレートしていくわけであるが、本作品のジャンルの方向性を指し示すような演出の一つのなっていた。

また、「透明人間」の存在を決定づける重要な演出として「シーツが何者かに踏まれているシーン」も衝撃的で、主人公セシリアの「疑念」「確信」に代わる重要なシーンとして、ホラー映画としての本作品への入り口としてふさわしい演出となった。

そして「電話を掛けたら天井裏からバイブレーションが鳴るシーン」、このシーンを本作一番の鳥肌シーンとして挙げる鑑賞者も多いだろう。

見えない存在が身近に潜んでいる恐怖を直接的に演出した初めてのシーンとなったのがこのシーンだった。

それ以外にも、エイドリアンの悪行は数々演出として盛り込まれているが、そのどれもが「嫌がらせレベル」の悪行であったことが何よりも恐ろしかった。

そんな「透明人間」の存在を決定づけないようなジワジワとした、日本ホラー作品のような演出が気持ち悪く面白い要素だろう。

余談ではあるが、この最初のホラー要素「包丁が落ちるシーン」まで、30分という時間のかけ方をしているのも斬新な演出だろう。

「何かが起こりそうな雰囲気」を作り上げることにこそ本作の恐怖は感じ取れたのかもしれない。




皆はどう見る!?ラストシーンのセシリア…。

ホラー映画としての物語の進行の先には、意外なことにセシリアによる「どんでん返し」によって幕を閉じたことも面白い脚本だった。

ここまで言われ続けていた「サプライズ」というセリフも、最後は彼女の口から放たれることも相まって、「勧善懲悪」を感じさせる面白さが備わっていただろう。

さて、そんなセシリアのラストであるが「光化学スーツ」を着用しエイドリアンを殺害したことは明白であり、ジェームズもこれを黙認することによって、ある種の「ハッピーエンド」に燃える終わり方をするが、物語の最後のシーンはセシリアの意味深な笑顔で終わることとなる。

これを紐解くと、二つの受け取り方ができるのだ。

①エイドリアンの恐怖からの解放感による笑み。

②光化学スーツの万能さに酔いしれてしまったことによる笑み。

彼女はどんなことを考え、空を見上げたのだろう?

答えは鑑賞者に委ねられてる…。

ちょっとガバガバ?ツッコミどころは多少ある…。

有名映画サイト「Filmarks(フィルマークス)」での本作品の評価は「3.8」であり、辛口レビューの多いこのサイトでの3.8はとても高いと言っていいだろう。

ホラーマニアからの評価も上々であることから、ホラー映画としてのレベルもかなり高い水準であることがわかるが、それでも脚本としての「ツッコミどころ」は感じてしまうシーンもあった。

まず、エイドリアンの兄であるトム、物語が最大限に盛り上がるシーンの中で、驚異的な身体能力を見せつけ警察官のジェームズをフルボッコにするシーンは思わずツッコんでしまう。

「トム、強すぎだろ!!」

そして、諸悪の根源エイドリアン、とにかくセシリアの近くに「居すぎ」である。

最早バレることを楽しむかのような彼の立ち回りには、スーツを逆に利用されて死んでしまう最期にも「自業自得」の念は拭えない。

中でも一番モヤモヤしてしまったシーンとして「セシリアとエイドリアンの精神病棟での格闘シーン」がある。

次々と警備員が押し寄せるが、何故か「二人ずつ」でしか来なく思わず「また二人かよ…」と呟いてしまう…。

全体的にも、透明化したエイドリアンからの逃亡劇の最中に「あそこでなぜこうしない!?」といった不思議な点は多々存在するが、物語の設定として「光化学スーツ」に「身体強化能力」が備わっていると考えたらどうだろうか?

そう考えるのが自然にも見える脚本だろう。

そんなやんちゃなアクションシーンも相まって、本作の面白さがマイルドに引き立つ見方もできるので、一概に「ツッコミどころ」で片づけてしまうものもったいない。

それほどまでに脚本と演出はよく練られた作品だった。

本作のモデルとなった物語とは?

前述したとおり、本作にはモデルとなった物語が存在する。

1897年に発行されたH・G・ウェルズの「透明人間」であるが、モデルとは謳ってはいるが物語のプロットとしては全く異なった作品となった。

まず時代背景が全く違い、そして小説の舞台はイギリスのロンドン、こちらでは「光化学スーツ」による犯行であるが、小説では「薬」によって透明となる。

また小説版では、透明人間は包帯を纏って行動していたようだ。

このことからも本映画は、小説版をモデルとした「現代版リメイク作品」として受け取るほうが自然であるだろう。

当時では考えつかなかった現代の技術をうまく組みこみ、見事に「昇華」できた作品だと感じた。

 

また、本映画以外にも「透明人間」を題材としたパニックホラー作品はあり、有名なものが2000年公開となった「インビジブル」だろう。

こちらも小説の「透明人間」が題材となり、薬で透明になる仕掛け包帯を巻いて行動するなど、より原作に忠実な造り作品となっている。

また、この「インビジブル」では、透明人間とそうでない者の「共存」が実現していて、だんだんと悪人と化していく透明人間の心理描写が見どころとなる作品である。

透明人間であることを活用したエロティックなシーンもあり、より現実味を帯びた「透明人間」を感じることができる作品だろう。