「(r)adius ラディウス」ネタバレ感想と考察【半径15mの人間が全員死ぬ】

  • 2021年3月4日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「(r)adius ラディウス」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

(r)adius ラディウス

2018年、カロリーヌ・ラブレシュ、スティーヴ・レオナール両監督によって制作された作品。

SF作品「メッセージ」を制作したスタッフが集まり作られた作品である。

半径15mに立ち入った者が死んでしまう男の葛藤の物語。上映時間は93分。

 

あらすじ

舞台はアメリカ、とある田舎で起こる交通事故。

事故によって記憶を無くした男、リアム。

目覚めると、自分の近づく生物全てが次々と死んでいく…。

最初は毒ガス等の影響かと思ったが、段々と「自分が原因であること」に気がついていく…。

 

出演役者

本作の主人公リアムを演じるのが「ディエゴ・クラテンホフ」

カナダ出身の俳優で、あの「24」シリーズ「ブラックリスト」シリーズなどの洋画ドラマ作品への出演が目立つ俳優である。

本作では、筋骨隆々な肉体を生かしたアクション系主人公を見事に演じてくれた。

 

本作のヒロイン的立ち位置、ジェーンを演じるのが「シャーロット・サリヴァン」

日本、アメリカ共に、知名度はあまり持たない女優であるが、本作ではラストシーンの最後まで迫真の演技を見せてくれた。

ネタバレ感想と考察

サスペンス?それともアクション?掴みきれないジャンルと世界観。

「半径15mに入った人間が全て死ぬ。」

本作の全てとも言ってもいいこの設定、なかなかに面白い脚本だったのではないだろうか?

目が白濁とし、その場で倒れ込んでしまう数々の生き物たちに、「ホラー感」を感じた鑑賞者も多いはずだ。

本作は、「全ての人間から逃げる」という、とんでもないアクション要素を作り上げると同時に、そんなホラー感から「サスペンス映画」の二面性を持つ、特殊な作りの作品となった。

周りの人間がバタバタと死んでいく中で、主人公リアムとジェーンだけが記憶を無くし、その真相を究明していく作風もサスペンス作品の面白い要素として描かれていた。

結局、人が死んでしまう原因は何だったのか?

脚本に賛否両論の多い作品ではあるが、そんな要因の一つとなったのが「半径15mの真相が解き明かされなかった」ということがあるだろう。

問題のリアムの持つ特性であり、本作品のパッケージの謳い文句にもなっているこの設定であるが、作品を見ていると「雷」がこの現象に関わっていることは一目瞭然だろう。

この現実ではほぼ起こりえない現象が本作を「SF」の世界へ誘っていることもわかる。

物語の脚本や、リアムとジェーンの関係性から考えて、この「雷」が「偶然」ではなく「必然」として起きた現象と考えるのが一番自然な考え方だろう。

そして、この「雷」が本作を「おとぎ話」と捉え、非現実な世界観として考察してみるといくつかの考察が浮かんでくる。

まずは、「危険な殺人犯を孤独にする為に能力を与えた」

そして、「危険な殺人犯の助力のためにこの能力を与えた」ということだ。

ここからは「神様か何か」の存在によって故意的にリアムに「能力」が与えられたことを前提として考察してみる。




リアムとジェーンの関係性こそが本作のメインテーマ

物語の脚本的にこの現象を紐解いてみた時に大きな繋がりを見せるのが、やはりジェーンの存在だろう。

まずは「ジェーンが近くに居ると能力が発動しない」という現象。

映画をラストまで鑑賞した人ならわかるがリアムはなんと「誘拐殺人犯」であった。

そんなシリアルキラーに殺させる間際、雷に打たれ、記憶を無くしたというわけだ。

リアムは直前までジェーンを「殺したがっていた」そしてジェーンはリアムから「逃げたがっていた」

しかし、雷によって二人は記憶を無くし、リアムは「殺したくないのに殺してしまう」

ジェーンは「逃げるとリアムが大量虐殺してしまう」という、逆の現象が起きている。

記憶喪失前の二人の考えを皮肉ったような現象の考えの変わり方に、本作の大きなテーマの在り方を感じることもできるだろう。

そしてラスト、記憶を取り戻したリアムとジェーン、

二人の考え方は逆転現象を見せることとなる。

 

リアムは「殺したことを懺悔したい」

ジェーンは「リアムを殺したい」

そして結果としてリアムが「ジェーンを助ける」ことになるのも面白い。

物語のラストシーン、離れていくジェーンの前でリアムは自死するが、記憶喪失後のリアムがまるで別人のように生まれ変わっていたことからも、この「能力」が故意的に与えられた「創作物語」として鑑賞できることがわかる。

あれだけの「シリアルキラー」としての一面を持っていても、「半径15m以内の人間が死ぬ」という望まない能力を持ってしまえば「殺したくない」という感情が芽生えるのだろう。

そして自身が「殺そうとしていた」ジェーンという女性は、「絶対に殺してはいけない人間」に早変わりする。

二人の関係性の逆転現象を心理描写と行動で捉えた脚本は面白いものだった。

余談ではあるが、二人は若いギャングと遭遇し危うく殺されかけるが、リアムの能力により助けられる描写も描かれる。

本作が賛否両論となってしまった要因とは?

映画サイト「Filmarks(フィルマークス)」では、本作の星は「3.2」と、決して高い評価ではない。

そんな本作が賛否両論となってしまった原因として、いくつかの要因が上げられる。

まずは「設定の雑さ」

前述した通り、本作のメインテーマである「半径15m以内の人間は死ぬ」という点において、具体的な謎が解明されないまま幕を閉じることが挙げられる。

そして「脚本のオチの雑さ」についても言及された意見が多かった。

本作のラストシーンまで、リアムが「シリアルキラー」である過去は、時折見る「夢」そしてジェーンの「捜索願」くらいしか伏線が貼られていなかった。

僅かな伏線を抱えたまま、物語のラストで明かされるオチについては、やはり荒削りだと感じてしまう鑑賞者も多かったようだ。

また、本作のパッケージの宣伝文句として「半径15m以内全員即死」が書かれていてしまったのも思わずツッコミを入れてしまいたくなるようなネタバレになってしまった。

これはパッケージで言及しなくても充分に面白い要素であったと、思えなくもない。

いずれにしても、本作の脚本自体がダメである訳ではなく、細々とした演出やシーンによってこんな評価が多くなっていた。

事実、インパクト大のワンアイデアによるキャラクター性や設定はワクワクしながら鑑賞させてくれたことも事実であった。

物語のラストのリアムの自死に関して、エモーショナルな感情に包まれながら作品を見終えることができたのが救いにもなっていただろう。