本記事は、映画「君の名前で僕を呼んで」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「君の名前で僕を呼んで」
2017年、ルカ・グァダニーノ監督によって制作された作品。
ボーイズラブの一夏の青春を描いた物語。
上映時間は130分。
あらすじ
舞台はイタリア、17歳のエリオは音楽が大好きな一人の少年だった。
裕福な家の出で、今年も避暑地の別荘にて夏を過ごす。
そんなある日、考古学者の父の助手として、期間限定でアメリカから大学生のオリヴァーがやってくる。
内気なエリオは、自信に満ち溢れた彼に対し疎ましく思っていたが、だんだんと心を開くようになる…。
出演役者
本作の主人公、エリオを演じるのが「ティモシー・シャラメ」
アメリカの大学生、オリヴァーを演じるのが「アーミー・ハマー」
配信コンテンツ
「君の名前で僕を呼んで」は今現在、Netflix、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
4つの壁を乗り越えた奇跡の青春物語。
JGBTを描いた作品は洋画、邦画共に数多くあるが、そんな中でも一際甘酸っぱい青春が描かれているのがこの映画「君の名前で僕を呼んで」だ。
舞台はイタリアで、そんなイタリアのごく普通の青年が恋に落ちる物語であるが、その間には壁がいくつもある切ない物語となっていた。
①性別の壁
エリオ、オリヴァー共に男である。
今でこそ偏見が無くなりつつあるが、この映画の舞台は1980年代だ。
まだまだ偏見は残っており、オリヴァーはこれを隠すようにしている。
②歳の差
エリオはまだ17歳、対するオリヴァーは24歳。
エリオから見たオリヴァーはかなり大人、そしてオリヴァーから見たエリオはまだまだ「少年」である。
③国籍の壁。
今回はオリヴァーが国境を越えて、助手としてやってくる物語だ。
イタリア人とアメリカ人の恋愛はこれまででも描かれたことがなかっただろう…。
④時間の壁
オリヴァーは6週間限定の助手として出張してきた青年だ。
期間が満了になれば、帰ることはわかっていた。
「別れが確定している」という点が本作の大きなポイントとなる。
これらを壁とせず、乗り越え、2人の愛が育まれていったのは、周辺環境が整い、他者の理解があったからという状況もあるだろう。
そして何より、2人は「若かった」。
本作は、社会や世間体に縛られない自由な恋愛像を楽しめる恋愛作品であったが、その最後はやはり甘酸っぱいどうしようもない別れ方をすることになる。
オリヴァーは助手としての期間を経て、アメリカへと帰国する。
そして冬、望んでか望まずか…「なんとなく」付き合っていた彼女との結婚の報告を受ける。
頭ではわかってはいても、その瞬間からは逃れられない終わり方となっていた…。
実はドロドロ!?原作小説が話題沸騰!!
本作の映画のベースとなる原作小説がある。
アンドレ・アシマンにより2007年に出版された「Call Me By Your Name」だ。
映画版の本作も原題はこれとなる。
そしてこちらはなんと、「不倫」や「拒絶」といった、おどろおどろしい描写が在る入り込む小説となっているのだ。
そしてその15年後、オリヴァーの元にエリオが会いに行くシーンも小説では描かれている。
小説のネタバレとなるので気になる人は読んでみよう。
とはいえ、本質的には大きなプロットは踏襲してあり、映画では最後の父親との対話シーンなども感動的に描かれている。
中には小説の内容が収まり切らなくなり破綻する映画もあるが、本作はよく纏めてある成功パターンと言っていいだろう。
ちなみに、さらに原作小説でも、その続きがあるとしても有名だ。
タイトルは「Find Me(私を見つける)」
こちらはイタリアのオリバーの10年後を描いた物語となっている。
こちらも気になる人は要チェックの作品だろう。
舞台となるイタリアの街並みについて。
私たちアジア系の人種なら誰もが憧れる街並みだったであろう、この映画の世界観。
これの舞台となるのが、北イタリアの「クレモナ」という街だ。
この街、「音楽の街」としても非常に有名で、世界的なヴァイオリン製造者を生み出した土地としても有名だ。
あの「ストラディバリウス」を作ったヴァイオリン製造者「アントニオ・ストラディバリ」もこのクレモナから生まれ、世界へ出ている。
建物のほとんどがレンガ造りとなり、「レンガ造りではヨーロッパ一高い」と称される塔もこの地に存在している。
今作ではヴァイオリンの要素が全く無かったが、エリオが「編曲家」としての顔を持ち、ピアノやギターを触っていたのも、こんな土地柄が影響しているのかもしれない。
また本作でこの「クレモナ」に魅せられた日本人もやはり多いようで、2018年には「聖地巡礼ツアー」なども企画されていたようだ。
筆者自身も、「死ぬまでに行ってみたい場所」に新たな1ページが刻まれた。