本記事は、映画「ミッドナイトスワン」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「ミッドナイトスワン」
2020年、トランジェスターを題材にした、内田英治監督によって制作されたヒューマンドラマ。
原作となる小説が存在するが、そちらも内田監督自身によって書き上げられた。
上映時間は124分。
あらすじ
舞台は東京、新宿二丁目の小さなオカマバーで、チープなダンスを踊る「凪沙」は男性として生まれたものの、幼い頃から心は女性である「性同一性障害」のトランジェスターとして生きていた。
そんな中、実家の広島に住まう親戚の娘である中学生の一果が親の育児放棄によって凪沙の元へ居候することとなる…。
出演役者
本作の主人公である凪沙を演じるのが「草なぎ剛」
本作のヒロイン?一果を演じるのが「服部樹咲」
配信コンテンツ
「ミッドナイトスワン」は今現在、Netflix、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
数々の賞を総ナメにした作品!草なぎ剛の怪演!!
今回の作品「ミッドナイトスワン」は2020年公開、という比較的新しめの映画である。
そんな本作、「日本アカデミー賞」を初めとした数々の賞を総ナメにするほどのヒット作となった…。
少し前に「君の名は。」が大ヒットを見せて、何回も鑑賞しに行く人が居たように、本作でも「追いスワン」と呼ばれ、何度も鑑賞しにいく人も居たようだ。
本作の主人公は皆が知る国民的タレント「草なぎ剛」であるが、彼のキャラクターや身なりが、トランジェスターの凪沙のキャラクターに本当に良くマッチしていたと感じる。
ジャニーズのタレントの中で、しいては芸能界の中で、こんな役を演じられる俳優は彼以外にいないだろう…。
墜落レベル最高峰の脚本…トランジェスターの闇に迫る。
筆者は本作を観るにあたり、前情報を一切入れない状態での鑑賞となった。
本作を鑑賞し始めて、暫く経っての作品へのイメージは「人情溢れるヒューマンドラマ」という印象だった。
そんな中でも、一人のトランジェスターが世間に言葉や空気感による差別を受けながらも、必死で生きていくことに美しささえ覚えてしまうような作品だった。
トランジェスターの人々は、異性愛者である筆者やその他の皆さんには決して感じることのできない苦痛を感じている…そんなことを思わせる作品となった。
そして物語後半、前半で描かれるハズだった「人情物語」は一気に覆されることとなる。
草なぎ剛演じる凪沙はタイでの「性転換手術」に望み、その結果…寝たきりの生活となり、視力を失い、死に至ることとなる。
更には、一果のライバルであった「りん」が屋上からバレエダンスで飛び降り自殺をする…という衝撃的な展開となる。
まさか物語の前半からは想像もできないような結末に、度肝を抜かれた鑑賞者も多いのではないだろうか?
そのジェットコースターのような墜落物語は、まさに「鬱映画」としてのランキングにノミネートされるべき作品だろう。
実際問題…リアルな話なの??
凪沙の転落物語が作品後半で展開されるが、これによって「性転換手術がとても危険なものである」というイメージを受けてしまった人も多いだろう。
凪沙は寝たきり状態の盲目となり、下半身の皮膚は壊死し出血を続ける。
常に発熱し続け、盲目となる。
凪沙の苔の生えた金魚にエサをやる姿は、今でも脳裏に鮮明に残っているシーンだろう。
さて、実際問題、「性転換手術」とはここまで怖いものなのだろうか?
作中で凪沙自身の「サボってたらこんなんなっちゃった」というセリフがあるが、本当にサボったらここまでになるのだろうか?
現実世界でもタイで手術を施術するのはどうやら本当らしい。
が、いくら術後ケアをサボったとしても、「死に至るほどまでは行かない」というのが本音のようだ。
術後、1〜2週間の間は皮膚の壊死や出血の可能性はあるが、現代の手術で発熱や失明、死亡といったリスクは稀であると記述があった。
映画としてのリアルさはそこには無かったが、「トランジェスターにスポットライトを当てる」という観点から、「性転換」がどれだけ心身に負荷を与え、困難な道のりであるのかは十二分に伝わる内容となったと感じた。
バレエに気合いを入れすぎた作品!?
本作の主演は「草なぎ剛」であり、「流石!!」と拍手を送りたくなるような怪演であったが、その一方でヒロインの一果は終始あまり喋らず、セリフもなく、どこかぱっとするような演技の少ない役回りだったように思う。
しかし考えてみると、それもそのはずだ。
彼女は役者経験一切ナシの生粋のバレエダンサーだったのだから…。
まさかそんな人間がヒロインとして起用されてることなどいざ知らず、物語の中盤では「この映画のためにバレエ練習したんだな〜」などの感想を持つ始末だったことを恥じたい…。
それにしても一果を演じたバレエダンサーの服部樹咲さん…「下手くそ」を演じるのが上手すぎでは…?
そしてタイトルにも織り込まれた本作のバレエパート、これはプロのバレエダンサーとして名を馳せた千歳美香子さんという方が全ての監修を伝え、ワンシーン毎に「この演出は違和感があるのか?」を照らし合わせながら映画の撮影が行われたとされている。
流石は日本アカデミー賞を取った作品、その点はしっかりと練り込まれている…。