本記事は、映画「武器人間」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「武器人間」
2013年、リチャード・ラーフォースト監督によって制作された、オランダ・チェコ・アメリカの合作映画。
「ムカデ人間」を彷彿とさせるアクションホラー作品。
上映時間は84分。
あらすじ
舞台は第二次世界大戦のソ連とドイツ、ドイツには「偵察部隊」としてソ連の数人の男が乗り込んでいた。
ドイツの僻地の工場に乗り込むが、そこで部隊は惨劇に巻き込まれる…。
本作品は部隊の記録を残すためのカメラマンの軍人、ディマが残した映像作品である。
出演役者
本作の主人公の一人、ディマを演じるのは「アレクサンダー・マーキュリー」
本映画はカメラマンである彼が構えるカメラの映像が全てとなる。
部隊のまとめ役、セルゲイを演じるのが「ジョシュア・ザッセ」
部隊の古株、ヴァシリを演じるのが「アンドレイ・ザヤッツ」
部隊の最年少、サシャを演じるのが「ルーク・ニューベリー」
本映画の諸悪の根源、ヴィクター・フランケン博士を演じるのが「カレル・ローデン」
ネタバレ感想と考察
「まさかここまでとは…」タイトル通りの展開にどう感じるか?
この映画、ジャケットからタイトルから…まさしく想像できるのが、あの不朽の迷作「ムカデ人間」だろう。
実際、物語の脚本としても「マッドサイエンティストの奇行」と言った意味では同じような脚本であり、グロテスクな描写でも負けず劣らずの作品となっていた。
ところが、この映画のプロットとして描かれるのが「第二次世界大戦」という非常に扱いづらいテーマである。
それも無理はない、「戦争」を題材にする作品で「B級スプラッター」が描かれることが今まで無かったからだ。
この映画を鑑賞する前は、「武器人間」というタイトルをどこか感覚的に意味する戦争映画だと思って見た人も多いだろう。
現に筆者も、Amazonプライムの「オススメ映画」に出てきているのをきっかけに軽い気持ちで鑑賞した。
しかし…そんな油断した心にこの作品は容赦なく襲いかかってくる。
作中に展開されていくのは、まさに怒涛の虐殺パーティ、血しぶきほとばしり、肉片、脳みそ、どんな描写もストレートに表現されているではないか…。
この衝撃に至るまでの間、いわゆる最初の「武器人間」と出会うまでに、30分もの時間を使ってることにも別の意味で衝撃を受ける。
序盤で描かれる30分間の「戦争映画らしいシーン」が後半の展開によりインパクトを与えている要因となっていた。
また、この映画、ただのスプラッター作品を語るにしては、ずいぶんとしっかりとした脚本やキャラクター性が確立されている。
中でも登場する数々の「武器人間」には公式サイトが作られるほどの綿密なキャラクター設定があるようだ。
本映画の醍醐味、「武器人間」たち。
本映画に登場しては虐殺を繰り返す武器人間達であるが、実に様々な種類が存在していた。
この手のスプラッター作品に「個性」を見出す面白さがあるとは、思いもしなかった…。
モスキート本映画のジャケットにもなっている武器人間。 本作の中では一番スタイリッシュ且つ、カッコイイ武器人間だろう。 頭のドリルで相手を串刺しにする。 部隊のメンバーであるアレクセイを串刺しにした。
ウォールゾンビ数居る武器人間の中で「一般的」を決めるのであれば、間違いなくヤツが武器人間のスタンダードである。 屈強な男の両手を鎌に取り替えてある。 鎌以外の変異種も居るようだ。
ケロイダー本映画、一番初めに登場する武器人間。 試作品であり、起動時にナチスへの敬礼をする。 部隊の軍曹であるノビコフの臓物を引きずり出し、ノビコフが最初の犠牲者となった。 ケロイダーを演じているのは「女性の役者」らしい。
レイザーティース全身を鎧で固め、頭のハサミで対象者を挟み込む。 部隊のイヴァンはコイツにヘルメットごと挟まれて死亡する。 SAWシリーズの拷問器具を思わせる立ち振る舞いが印象的である。
ジャパンヘッド プロペラヘッド頭部がプロペラになっている武器人間。 ジャパンヘッドは日本の戦闘機、プロペラヘッドはサメの絵が書かれ、ハンマーを持っている。 ジャパンヘッドは部隊に襲いかかるも頭の配線を切断され、爆死する。
マミィー・エヴァ作中に登場する、看護師のエヴァが改良された武器人間。 臨機応変に対応できるよう着脱可能な右手を持ち、博士の助手を務めている。 イヴァンの改造もそうであるが、 初登場してからおよそ1時間も経たない間に「武器人間化」させる博士の手腕たるよ...。
ポッドマン遊び半分で調理器具と合体させられた武器人間で、何をするでもなく、ただただ歩き回る。 エヴァの「工具入れ」として機能している。 ちょこちょこしていて可愛い、「マスコット」的な武器人間だろう。
オペンハイマー4本腕で武器人間の改造など、博士の実験を補佐する武器人間。 執刀医としての実力は折り紙付きで、ヴィクター博士が絶大なる信頼を寄せる武器人間。 元は高名な物理学者だったらしい。 映画内では2本腕の使用シーンしか見られなかった。
ライジング・サンまた、本作の監督が日本のために書き下ろしたとされる「ライジングサン」という武器人間も存在する。 ヴィクター博士が、日本の研究機関と共同開発した人間風船爆弾。 敵機を発見次第、カミカゼスピリットで特攻攻撃を食らわせる性能を持つ。 本映画が日本でウケたこともあるだろうが、「ジャパンヘッド」の存在からも、 第二次世界大戦中の「日独伊三国同盟」が影響していることがわかる。 リアルな戦争の内容が作中に含まれている演出は面白いものとなっていた。
そして、これらの武器人間は、なんと公式に「ポストカード化」されたり、フィギアなどになるほどに人気があるようだ。
B級スプラッターのはずなのに何故ここまで人気が出るのか…答えはここにある気がする…。
画面酔いに注意!?映画の「撮り方」について。
中身は「現実では起こりえない」奇想天外なスプラッター作品、しかし大変よくリアルにできている…。
そこの仕組みは、やはり本映画の「撮り方」に仕掛けがあるだろう。
本作では脚本自体に「映像を撮る」というプロットがあり、その映像をそのまま映画にしている作品である。
カメラマンが襲われればカメラにヒビが入り、手持ちカメラ独特のブレや、手回しカメラのフィルム交換も忠実に再現され、そんな要素がより映画の内容にリアル感を与えていたのだろう。
中でも、武器人間達から逃げるディマのシーンは手に汗握るシーンとなっていた。
ちなみに、この演出によって「画面酔い」を起こす鑑賞者も居たほどなので、相当の「手持ちカメラ感」が再現されている。
また「手持ちのカメラ」を用いての撮影ならではの仕掛けも多い。
例えば工場の中のシーン。
部隊のメンバーであるアレクセイが殺害される少し前…武器人間が上から降りてきていることに気がついただろうか?
更に、ディマが研究所に侵入した際、二体並ぶ武器人間の片方がいつの間にか消えているシーンもあった。
そしてラスト…
捕縛され、動けなくなったディマと博士のシーンでは、サシャが後ろからずっと銃を構えている。
これらの手ブレや主観を利用した独自の演出は、B級映画の域を飛び出している要素と言ってもいい。
余談ではあるが映画の最後、ここで初めて「カメラ以外」の映像が流れることとなるが、ソ連のスターリンの横に描かれるのは、ヴィクター博士の首を持ち帰ったサシャが「英雄」として認知されたことを意味している。