本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
デザート・フラワー
2009年、シェリー・ホーマン監督によって公開された作品。
実際に存在するファッションモデル「ワリス・デイリー」による自伝、
「砂漠の女デイリー」が原作となる作品。
上映時間は127分。
あらすじ
舞台はソマリア、
砂漠の民として生きる「ワリス・デイリー」は
貧乏な家に生まれ育った。
ソマリアからの逃亡により、
羽陽曲折があったが、
イギリスのファッションモデルとして
華々しくデビューを飾ることとなる。
しかし彼女は、
ソマリア時代の大きなコンプレックスを抱えていた…。
出演役者
本作の主人公「ワリス・デイリー」を演じるのが、
「リヤ・ケべデ」
デイリーの親友となる女性「マリリン」を演じるのが、
「サリー・ホーキンス」
デイリーの才能を見出す有名写真家「テリー・ドナルドソン」を演じるのが
「ティモシー・スポール」
見どころ「奇跡の実話、割礼の闇に切り込む」
この世には色々なテーマを掲げた映画が存在するが、
今も尚、幅広く行われている「割礼」について切り込んだ作品は
未だに観たことが無かった。
今回スポットライトが当てられたのは、
ファッションモデルである「ワリス・デイリー」
彼女は世界のファッションモデルでありながら、
幼き頃の割礼により女性器を失った体を持つ。
そんな彼女のリアルな自伝が原作となり本作が作られた。
おぞましい描写もあるストーリー内容だが、
これをテーマに描かれた作品であることが
本作最大の見どころだろう。
配信コンテンツ
「デザート・フラワー」は今現在、
Amazonプライム、Hulu、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
舞台はソマリア、
砂漠の民として生きる「ワリス・デイリー」は
貧乏な家に生まれ育った。
ソマリアからの逃亡により、
イギリスのロンドンに逃げるように入国するが、
仕事も見つからず、路上生活を強いられていた。
そんなある日、一人の女性と出会う。
ロンドンのアパレルショップで
働く彼女は「マリリン」と言い、
最初は疎まれたものの、
ワリスの気立ての良さに惹かれ、
親友となるのだった。
ハンバーガーショップのアルバイトとして
働き口を見つけたワリスは、
貧乏ながらもそれなりの生活を送れていたが、
ある日、とある男性にモデルのスカウトをされる。
男性の正体は「テリー・ドナルドソン」
世界を股にかける超有名写真家だった。
狐につままれた気分で彼の元を訪れるワリスだったが、
そこから彼女はファッションモデルとして
華々しいデビューを飾ることとなる。
しかしワリスは、
ソマリア時代のとあるコンプレックスを抱えていた。
ロンドンでの生活を送る中で、
男性との関係を頑なに拒否する彼女は、
幼き頃の「割礼」によって
女性器を切り取られていたのだった。
モデルとしての仕事で、
服を脱ぐことにすらも抵抗を感じてしまっていた
ワリスであったが、
カメラマンのテリーや、
親友のマリリンなどの後押しによって、
トップモデルの道を駆け上がることとなる。
「イギリスのモデル」から「世界のモデル」になる時、
「不法滞在」として警察に連行されかけるも、
身の回りの仲間たちの頑張りによって、
アメリカへと飛び立つのだった。
世界的なファッションモデルとなった
ワリスだったが、ある日のインタビューで、
記者からある質問を投げかけられる。
それはソマリアから単身デビューした彼女に対して、
「人生を変えた一日は?」
という質問だった。
親友であるマリリンとの出会いのことを
喋ろうとした彼女であったが、
意を決したように彼女は違う答えを口にする。
それは「五歳の時に割礼を受けた日のこと」であった。
あまりの話のおぞましさに、
絶句し涙する事しかできない記者の姿が
そこにはあったのだった。
その後ワリスは世界に向けて
記者会見を行うこととなる。
無数のカメラや記者たちの前で、
彼女は自身が受けた割礼のことを語り、
それの撤廃を呼びかけた。
ワリスの告白により、
「割礼」に対する問題は
世界中で議論されるようになり、
今も尚、彼女は撤廃活動を続けている。
ネタバレ考察
彼女の人生自体に価値があった作品。
今作が実話を元に描かれている以上、
映画の出来栄えに彼女の人生そのものが
依存してくる作品であるが、
彼女の行動、出会った人々に左右され、
物語が進む面白さがしっかりと描かれていることが
今作の真骨頂となっているだろう。
物語を楽しむと共に、
ワリスデイリーという人間の強さも垣間見ながら
目に焼き付けていくことができる。
本作の映画のベースとなる、
ワリスデイリー自身が執筆した自伝、
「砂漠の女デイリー」では、
ありのままの彼女の人生を知ることができる。
気になる方はこちらも読んでみるべきだ。
「割礼」にスポットライトが当てられた。
おぞましくも感じるような内容が
本作では描かれるが、
その中でも「割礼」について描かれた作品は
これまでに観たことが無かっただろう。
先進国では考えることができないような、
女性に対する仕打ちが「儀式」として、
公式的に行われていることに、
改めて驚きを感じる作品だった。
物語の終盤、再現される割礼のシーンでは
泣き叫ぶ女児の声だけが響き渡る。
真実をありのままに伝えることに
重きを置いた作品であると
改めて知らされるだろう。
そして物語の最後、
今も尚、一日6000人もの女児が割礼により
泣き叫んでいることが、
スクリーンに映される。
ワリスデイリーの意志の元、
割礼に対する強烈なアンチテーゼ作品としての
立場を確立しつつあることも、
今作の物語の大きな功績だろう。
光よりも闇を重んじた作品だった。
割礼を題材に掲げても、
ソマリアの砂漠の民が世界のトップモデルに
成り上がる物語は、一見、
「1人の女性のシンデレラストーリー」としても受け取れるだろう。
もちろん、そんな側面も持ち合わせてはいるが、
それよりも強烈に
割礼について打ち付けられる物語であることが印象的なのだ。
光を見せつつも、
彼女の過去などの闇も随所に描写していく演出は、
鑑賞者たちの脳に刻み込まれた作品として、
語り継がれていくだろう。
ワリスデイリーがトップモデルになった際、
記者からの質問に
「人生を変えた一日は?」
との問いがある。
彼女は、イギリスでの親友、「マリリン」に
出会った日のことを話そうとするが、
直前、そちらではなく
「割礼を受けた日のこと」を話す。
彼女の思いの強さを感じるシーンだろう。