「オキシジェン」ネタバレ感想と考察【酸素残量30%のカプセルからの脱出!!】

  • 2021年8月9日
  • 2021年9月8日
  • 映画
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本記事は、映画「オキシジェン」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

オキシジェン

2021年、アレクサンドル・アジャ監督によって制作されたフランス映画。

密室に閉じ込められた一人の女性が記憶を取り戻しつつ脱出する物語。

上映時間は102分。

あらすじ

舞台はとある密室空間、カプセルの中で一人の女性が目を覚ます。

自身の記憶も思い出せないまま目覚めた彼女であったが、カプセル内の酸素が30パーセントを切っている事実を知り、パニックに陥った。

カプセルの中で、AIである「ミロ」がナビゲートしてくれるが、核心には近づけない彼女であった。

自分はいったい誰なのか?ここはいったいどこなのか?

謎を解明し、脱出できるように彼女はもがき続ける…。

出演役者

本作の主人公である女性を演じるのが「メラニー・ロラン」

フランスの女優であり、ハリウッドに進出した経歴も持つ女優であり、数多くのフランス映画に出演し、主に恋愛映画や人情作品に出ている。

本作の登場人物はほぼほぼ彼女のみであり、1時間30分は彼女の演技に委ねられた。

 

本作の数少ない登場人物であるレオを演じるのが、「マリック・ジディ」

こちらもフランスを代表する俳優の1人であり、アクション作品やサスペンス映画への出演が多い。

ネタバレ感想と考察

新しい映画の形、SF×密室ミステリー

世の中には数多くの「密室映画」が存在する。

有名なもので1997年に公開された「キューブ」などがこのカルチャーを牽引していただろう。

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そんな最中、この2021年、新たに「密室」×「SF」という新しいジャンルを開拓した作品こそが本映画である。

従来描かれる「スリラー要素」はあまり含まれず、あくまでも主人公自身が、「自分の記憶を取り戻していく」脚本には、ヒューマンドラマで描かれる面白さも含まれていたのが本作の特徴だろう。

そしてこれまででは描かれたことの無い、「限りなく狭い空間」での密室作品であり、閉所恐怖症の人々にはたまらなく辛い映画となっていた。

映画の1時間30分で描かれるのは、ほとんどが人間一人がやっと入れる程度のカプセルの広さの空間であり、もちろん登場人物は彼女だけである。

このシチュエーションとしては2010年に公開された「リミット」という密室映画に似ており、こちらでは砂漠の中の棺桶に生き埋めにされた男が描かれる。

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前述した作品に比べて「管理された空間」で物語は描かれるが、思うように事が進まないと苦悩する女性とミロのやり取りは見ていて手に汗握る展開となっていた。

余談ではあるが、本映画の上映時間は102分であるが、作中でのエリザベスの生存時間もなんと102分である。

本作品は回想シーンを含め、完全リアルタイムでの進行となっている。




結局彼女は何者だったのか?

本映画の最大プロットである「彼女が何者なのか?」について、答えは「クローン人間」であった。

彼女の名前が「オミクロン267」という個体名で呼ばれていたことが、これの伏線となっていた。

AIのミロを操り、数々の情報を得ていく彼女であったが、「エリザベス・ハンセン」という女性の容姿が自分と一致していることから「これが自分である」と認識する。

もちろんエリザベス自身は実在する人物で、「何かしらの研究」を行っていることも情報から明らかになる。

「自分が死ぬべき人間ではない」と確信した彼女は、助かるために色々な番号に電話をかけて奔走するが、警察、及び政府には見殺しにされるという結果が待っていた。

ここでのターニングポイントとなるのが、ミロが見せてくれるひとつの動画映像である。

それは「老人のエリザベスが研究の発表をする動画」であり、ここで初めて矛盾が生じてくる。

エリザベスが自分自身なら、この老人は誰なのか?

エリザベスはカプセルの中から自分自身の旦那である「レオ・ファーガソン」の存在にたどり着き、電話をかけるが、そこでの通話相手が「老人のエリザベス」であった。

政府からは情報漏洩の防止策として「見殺し」という判断をされるが、老人のエリザベスからすれば、まさに「自分の分身」である。
切羽詰まった彼女の助言によって、無事に生還することとなった。

この「自分が何者なのか?」が解明してからの怒涛の展開が凄まじいインパクトを与えてくれる。

まさに映画における「魅せ方」の一つである、「衝撃のラスト」に該当するだろう。

「人口重力」が解除された瞬間、そして「紫外線フィルター」が解除された瞬間、本作が初めて「SF映画」として息を吹き返す演出はとても衝撃だった。

トリッキーすぎる!秀逸すぎる伏線の張り方

本映画において「衝撃のラスト」を語る上で、忘れてはならない要素が「伏線の張り方」にあるだろう。

現場環境的にも辻褄の合う伏線の張り方はなされていたが、ここで注目したいのが「ミロとのやり取り」である。

例えば、Googleで検索をかける時、皆さんはどのようなワード選定で検索をかけるだろうか?

そしてSiriにはどのような言葉で話しかけるだろうか?

言葉選び一つで、「すいません、よくわかりません」という返答をもらったことがある鑑賞者も多いのではないだろうか?

本映画でもミロへの話のかけ方や言葉選びで本映画の真相を闇に撒くことに成功しているのが非常に印象的となっていた。

例えば、映画の冒頭で「地球までの距離は?」なんて質問を投げかければ、一瞬で自分の置かれた状況がわかってしまう。

しかし、エリザベスはそれをしない。

物語の後半で初めてその質問を投げかけ、「ここが宇宙であること」がわかる。

そして「他のポットからの酸素供給の指示」も例外なくこれに当てはまる。

命令されれば実行できることでも、それをミロは提案してくれない。

AIを上手く使いこなそうとするエリザベスの葛藤は、現代の音声AIと非常に深い繋がりを持った要であり、真相の解明に繋がる情報をスレスレで回避していく彼女とミロのやり取りはこれまでに無い、現代的であり斬新な伏線の張り方として確立されていた。

映画のプロットがリンクする作品。

作中のやり取りで「政府に見殺しにされるシーン」が存在する本作品であるが、前述した映画作品「リミット」でも実は全く同じやり取りがある。

箱の中に閉じ込められた男性が「見殺しにされないか」と疑心暗鬼に陥るのだ。

そして頼るべき通信機器が「電話」であることも同じであり、この二作品どちらでも描かれるシーンとして、電話の相手に対して「切らないで、離れないで」と懇願するシーンがある。

両作品の主人公の立ち振る舞いこそが、狭い空間や閉所での心理描写としてリンクして描かれていた要素となっていた。

本当にパニックに陥った時、人間の取る行動は皆同じなのかもしれない…。

そして本作品の脚本として、もうひとつ似ている作品が存在する。

2016年に公開された「パッセンジャー」である。

こちらも冷凍睡眠状態で惑星移動中に目覚めてしまう男の物語であるが、こちらは巨大な宇宙船内が舞台となっていた。

「宇宙空間での密室」が描かれる点においては全く同じ作品であるが、本作オキシジェンとは全く違った視点で描かれる作品となっているので、本映画に興味を持った人は観てみることをオススメする。

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