本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
十二人の死にたい子供たち
2019年、堤幸彦監督により制作された作品。
原作はミステリー小説で冲方丁氏により
書き上げられた。
上映時間は118分。
あらすじ
舞台は日本、
とある廃病院に12人の子供が集まる。
彼らは自殺サイトでの募集により集まり、
「集団自殺」のために集まった12人だった。
1〜12番目のプレートを手に持ち、
廃病院の多目的ホールに集まるが、
そこには既に息を引き取った
13人目の若者が眠っていたのだった。
12人の若者は、
彼を「ゼロバン」と呼ぶことに決め、
何故ここに彼の遺体があるのか、
真相を究明していく…。
出演役者
本作の計画を発案した「サトシ」を演じるのが
「高杉 真宙」
天才子役として芸能界で活動する「リョウコ」を演じるのが
「橋本環奈」
今作の置いてドライな立ち回りを見せる「アンリ」を
演じる「杉咲花」
学校では人気者だった「ノブオ」を演じるのが
「北村匠海」
その他、総勢13名の役者が登場する。
見どころ「日本の未来を担う若き役者たち」
タイトルからもわかる通り、
今作の登場人物は合計で13人、
それぞれの個性が目立つ作品であるが、
本作に抜擢された役者達は、
これからの役者界を盛り上げていく、
若き役者たちで固められた。
今作を観た人達の中には、
俳優や女優目的で鑑賞に至った人も多いだろう。
彼、彼女たち自身の人間性を
代弁するようなキャラクター作りや、
それを活かしていく物語の脚本、構成は、
新時代の作品として面白いものに仕上がっただろう。
配信コンテンツ
「十二人の死にたい子供たち」は今現在、
Amazonプライム、dTV、等で配信されている。
ネタバレあらすじ
舞台は日本、
とある廃病院に12人の子供が集まる。
彼らは自殺サイトでの募集により集まり、
「集団自殺」のために集まった12人だった。
1〜12番目のプレートを手に持ち、
廃病院の多目的ホールに集まるが、
そこには既に息を引き取った
13人目の若者が眠っていたのだった。
「自殺」をすると決めた以上、
彼を巻き込むと「殺人」となる可能性があると考えた12人は、
彼を「ゼロバン」と呼ぶことに決め、
何故ここに彼の遺体があるのか、
真相を究明していく。
それぞれのメンバーが別れ、院内を探索するが、
ナンバー8のタカヒロだけは真実を知っていた。
それは「ノブオが事件に絡んでいること」だった。
これを否定することなくノブオはその場を去ってしまい、
残った11人で「自殺の決行」を話し合うのだった。
練炭自殺を考えていた彼らは、
材料を集め、準備を整えた。
ドアを密閉しようとしたその時、
部屋にノブオが戻ってくるのだった。
ノブオ等の証言を聞き、
ナンバー6のメイコがノブオを階段から突き落としたことが
明らかになる。
そして、ナンバー7のアンリとノブオが協力し、
ゼロバンを部屋に運び込んだことが判明する。
ゼロバンは車イスに乗せられ、
病院入り口に放置されていたが、
計画を成功させようと考えた二人は
ゼロバンを部屋に運んだのだった。
論点は「誰がゼロバンをここに置いていったのか?」
という内容に移るが、
その時、ゼロバンの呼吸音が聞こえる。
なんとゼロバンは生きていた。
そして一番最後に入ってきた、
ナンバー12のユキが重々しく口を開く。
なんとゼロバンは彼女の兄であった。
交通事故により
左腕が上がらないと語っていたユキは、
同じ事故で兄が「植物人間」になってしまったのだった。
全ての謎が解明した時、
ナンバー5のシンジロウが
「今回の自殺を中止すること」を提案する。
結果、12人全員の手が上がり、
それぞれは解散する。
解散するメンバーの表情には、
どこか安心感が見えるのだった。
解散後、部屋には主催者のサトシと
アンリだけが残る。
アンリの追及によりサトシは、
この集会を開催するのが3度目であると白状する。
そして、次回も参加し、
次こそは決行すると宣言するアンリであった。
ネタバレ考察
張り巡らされた伏線と個性が入り交じるミステリー
冲方丁の渾身のミステリー作品として
世に出された今作、
謎の真相究明に動いていく作品であるが、
それに噛み合わさるように描かれたのが
12人それぞれの個性だった。
謎の一つ一つを解き明かしながらも、
「何故自殺をしたいのか?」
というバックグラウンドを掘り下げていく作風は、
とてもではないが
2時間の映画で描くのは難しいと思われた。
結果として見事に纏めあげられた物語の脚本は、
2時間と言う時間を2時間に
感じさせないほどの濃密な構成だっただろう。
「若さ」を感じる作品だった。
本作の主人公は皆が子供、
そしてメインの13人以外が登場しない
作品になっている。
まさにこれらのメンバーのみに
スポットライトが当てられた作品であるが、
そんな役者たちの「若さ」を
感じることができる作品である。
真相を究明していく中で生まれる人間関係、
そして喜怒哀楽、
それぞれの思いや境遇が交差する空間には、
「役者としての若さ」や
「キャラクターとしての若さ」も
数多く見られる作品だった。
そんな描写は細かなシーンにも散りばめられ、
一口だけしか吸わずに捨てられた
タバコの吸殻からも「若さ」を感じてしまうのだ。
これが計算なのであれば、
今作の監督は相当鋭い。
「結末」ではなく「過程」を楽しむ作品だった。
本作の結末、邦画である以上、
正直に言って「誰も自殺しない」
という結末が読めてしまった鑑賞者は
多いのではないだろうか?
しかし本作において、
重要視していたのは「結果」ではなく
「過程」であるとも感じた作品だった。
ミステリーである以上、
犯人は確実に存在し、
映画である以上、結末は確実に存在するが、
物語の本筋はそれではなく、
犯人が何を思い行動に至ったのか?
などの心理描写を拘った作品だと感じたのだ。
時間軸が複雑に絡み合うミステリー性
あらゆるミステリー映画に絡む、
事件としての要因、トリックなどには、
必ずこれが絡んでくる。
それは「時間軸」である。
今作の物語では12人の登場人物が
時間をずらして廃病院へと入ってくるが、
その順番や、一人一人の分単位で刻まれる行動こそが、
本作のミステリーとしての面白さだろう。
これまでのミステリー作品の中でも、
かなり複雑な部類に入るであろう
時間軸の使い方だった。
映画のエンドロール、
物語の全貌を時間軸で説明しながら振り返る。
今作がどれだけ複雑な作品であったかが
よくわかるだろう。
一つの事件から三つの謎が動き出す。
本作の映画の構成、大きな謎として
「ゼロバン」の存在の謎であるが、
細分化すると、三つの真相に辿り着く。
・「ゼロバン」を病院に連れてきたユキ ・計画実行のために「ゼロバン」を運んだノブオとアンリ ・計画実行のためにノブオを階段から突き落としたメイコ
これが同一犯の犯行に感じてしまうような
描写ができていることが、
本作の面白さの一つであるだろう。
「偶然」や「予定外」の出来事が
上手く絡み合い、本作の状況が成り立った。
一つの事件をここまで掘り下げ、
難解な謎を作り上げたのは
とても面白い試みだっただろう。
各キャラクターの個性、境遇などが、
さらに深く言及される、
原作となる小説も面白い作品なので、
是非とも読んでみてほしい。