UDON【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

「UDON」

2006年、本広克行監督により公開された日本映画。
香川県が舞台となり、名物の讃岐うどんを中心に描かれた、
コメディヒューマンドラマ。
上映時間は134分。

あらすじ

香川県出身である主人公の松井香助はコメディアンを目指し、
単身ニューヨークに渡るが成功せず、実家に舞い戻る。
実家は、頑固な父親が切り盛りするうどんの製麺所で、
父との仲は険悪だった。

香川県で新たな仕事を探していると、
友人から、タウンペーパーを売る営業の仕事を任される。
売れないタウンペーパーの人気に火をつけるため、
試行錯誤し、松井は「讃岐うどん」に目をつけるのだった。

出演役者

主人公である松井香助を演じるのは「ユースケ・サンタマリア」

 

今作のヒロインで、タウン誌の編集者、宮川恭子を演じるのは、
「小西真奈美」

 

級友であり、同じタウン誌の会社で務める編集者、鈴木庄介を演じるのが、
ウルフルズの「トータス松本」

 

主人公の姉であり、既婚者で父の製麺所を手伝う藤元万里を演じるのが、
「鈴木京香」である。

見どころ①「とにかくうどんが食べたくなる、飯テロ映画」

今作ほどまでに、映画に「飯テロ要素」が盛り込まれた作品を、
ぼくは未だかつて見たことが無かった。

タイトルからも、あらすじからもわかるように、
とにかく今作を観るとうどんが食べたくなる。

実際に存在する本場讃岐うどんの名店も、
多数登場する今作を観て、
香川への旅行を計画した人もいるだろう。

これを鑑賞したぼくは、その日中に、
「丸亀製麺」に足を運んでいた。(時間的に)

見どころ②「ただのコメディ映画と思いきや…」

今作での主演はユースケ・サンタマリア、
その他の登場人物も芸人等のユーモラス溢れる登場人物が多いこともあり、
想像通りの「コメディ映画」へと仕上がっている。

そんなコメディ100%で終わる映画かと思いきや、
涙を誘う脚本も組まれているのが、今作の面白いところである。

コメディに紛れ、うどんの知識、そして香川県のPR、
そして、感動要素も仕掛けられた作品のボリュームに、
見ごたえを感じる作品となるだろう。

配信コンテンツ

「UDON」は今現在、
Amazonプライム、dTV、等で配信されている。

Amazonプライムで30日間お試し無料登録

dTVで30日間お試し無料登録

「UDON」単品の配信レンタルは300円で視聴できます。

※ここからネタバレあらすじ

うどん屋の息子、松井香助は、
アメリカンドリームを夢見てニューヨークでコメディアンとして活動していたが、
なかなか花開かず、故郷の香川県に帰ってくる。

製麺所を切り盛りする父の拓富とは、険悪であり、
母の他界後、
6年前に「ここには夢はない。うどんがあるだけや」と、
父に啖呵を切り、家を出た手前、非常に帰りづらかった。

香助は、亡き母の墓参りに向かう途中、山奥でガス欠になり、
立往生しているところで、道に迷った宮川恭子と出会う。

二人はクマに襲われ、車ごと崖から落ちるなどのトラブルがあるが、
奇跡的に無事であった。
完全に道に迷い、山奥を散策していたが、とある一軒家をついに見つける。
その家屋は名もなきうどん屋で、ここでうどんを食べる。

 

そんな日常を過ごしながら仕事を探すうち、ある日級友であった鈴木庄介に、
タウン誌の営業の仕事を任される。
単純な誘い文句で話に乗り、入社した香助は、
社内で恭子と再会する。

それから香助は営業を始めるが、タウン誌はなかなか売れずに試行錯誤していた。

そんなある日、近所の本屋にタウン誌の営業に向かう香助は、
タウン誌を置いてもらう交渉中、
たまたま本屋に訪れた観光客が、
「讃岐なのに、うどんの情報が載っていない」
との愚痴が、香助の耳に入った。

香川のうどん屋は約900店舗もあり、隠れた名店が多数存在していたが、
そこにスポットライトを当てようと、香助は目をつけた。
かくして香助はうどんをタウン誌の情報に取り上げることを、
上司に提案する。

手始めに、香助と恭子はタウン誌にコラム形式のうどん店紹介のコーナーを設ける。
想像力をかきたてるために、わざと写真をカットし、
店へ楽に行かせないために地図も載せず、
文章は「友人に話す感じに」作る。
コラムなので「麺通団」というペンネームを定める。

そこから、香川にあるうどん店、有名店から隠れた店まで、
ひたすらにうどんを食べ歩き、
店舗ごとに、メニューや麺や出汁、トッピングすらも違いがあることに気が付く。

店によっては、どんぶりを持参させる店舗すらも存在し、
数々の違う色を持つうどん屋があることがわかる。
情報源が少なくなってくると、とある警官から、
「うどん屋を探すなら、まずは煙突を探せ」との助言も受ける。

そんな看板を出していないうどん屋もたくさん巡るうちに、
コラムとして始まった「うどん巡礼記」のおかげで、
タウン誌は好調な売れ行きを見せる。

余ったページには、香助が昔に思い描いていたヒーローマンガの、
「キャプテンうどん」のミニマンガを連載する。

 

時を同じくして、関東のマスコミでもグルメブームを起こすことが計画されるが、
その目に留まったのが「讃岐うどん」だった。

ここから空前のうどんブームが訪れる。
タウン誌は全国のコンビニに置いてもらい、
大量の観光客が香川県に訪れる。

実家では、香助の残した借金を全て父が返してしまったことで、
父と盛大な親子喧嘩をする。

無口で不器用でうどん一筋の父のせいで、
母が苦労をして早死にしたのではないかと香助はなじるが、
姉の万里はそれを否定し、
「父が不器用で一筋なのを分かっていて、母は結婚したのだ」と言う。

「借金を返すために一玉65円のうどんを何個売ったと思う」と詰め寄られると、
香助は黙るしかなかった。

うどんブームは相変わらずで、
讃岐うどんをもじった、香川のサッカーチームの設立や、
うどんタクシーの走行、うどんフェスティバルの開催など、
空前絶後の人気ぶりだった。

そんなうどんフェスの終わり、
タウン誌の編集長は、かつて通っていた「宇高(うこう)連絡船」の
おいしくないうどんの話をする。
味は微妙であるが、
「それは食事ではなく、あいさつみたいなもの。あいさつ代わりの一杯だった」
と、編集長はそのうどんを懐かしむ。

 

そしてブームは去っていく。
讃岐うどんフェスティバルを頂点として、うどんブームの絶頂期は過ぎ、
うどんフェスのお客さんもいなくなり、衰退していった。

残された香川のうどん店には、悲しい現象だけが残される。
多くの客を捌くため、茹で時間を短縮させるよう麺は細くなり、
行列を待つ人々が道端にゴミをポイ捨てし、近隣住民はゴミを拾い、
路上駐車した車が警察に注意され、閉店に追いやられる店もあった。

そしてタウン誌は突然の廃刊を言い渡される。
恭子には引き抜きの話も出て、大谷編集長はじめ、
香助を除くメンバー全員の次の職場へ転職していく。

行き場のなくなった香助は決意を固め、
父親に「うどん屋を継ぐこと」を伝えることを決心する。

頑固な父親に入るなと言われた作業場の外から、
うどん屋を継ぎたいことを伝えるが、
父からの返事はない。
異変を感じ、作業場に入ってみると、
倒れ込んでいる父の姿があった。
父はそのまま亡くなってしまった。
死因は急性心筋梗塞。

残された香助は気持ちのやり場に困るが、
店は閉店し、店前には「しばらくお休みします」との張り紙を張る。
うどん屋を閉店することを決め、
業者に道具を引き取りに来てもらう日も決める。

そんなある日、張り紙を見て、うなだれて帰る小学生の姿を見る。
その次の日も、次の日も、
食べに来た人が訪れて、張り紙を見ては帰っていく日々が続く。
張り紙には、寄せ書きのような応援メッセージもかかれ、
いつの間にか思い出ノートも作成され、
皆に惜しまれつつある存在となっていた。

それを見た香助はいよいよ決心する。
彼は一人でうどんを打ち始める。
父を手伝っていた姉に言うが、
香助には父のうどんは打てないと、一蹴される。

そこから香助は、父のうどんを復活させるために努力を始める。
香助に努力を目にした近隣住民は店内のカレンダーに〇が付けてあることに気が付く。

実際は、業者が道具を引き取りに来る日だったが、
住民は再オープンの日と勘違いする。

父のうどんのコシに最も近い店で話を聴き、
父のうどんに最も近い店で出汁の取り方を教わり、
恭子をはじめとする、元編集部のメンバーや、
父のうどんを好んで食べていてくれた人たちの力を借りて、うどんを完成させる。

最後は姉の試食、
皆がかたずをのんで見守る中、姉は美味しいと一言。
かくして、父の四十九日を迎える前にうどんを作りあげることができた香助は、
父の仏壇にうどんをお供えする。
そのまま香助は寝てしまい、夢の中で父と会話する。
父になぜうどん屋になったのかと問うと「そこに粉があったから」と答える。
逆に、なぜニューヨークに行ったのか尋ねられると、
「いつも不機嫌そうな親父の顔を見て、人を笑わせたかった」と答える。
父は「人を笑わせるのは簡単、うまいうどんを食わせたら一発」と言う。

そして父は去っていく去り際に、
「ここに残るなんて言い出すなよ。ここには夢なんかない。ただ、うどんがあるだけや」
と、旅立つ前に香助が放ったセリフをそのまま返す。

目を覚まし、夢だと気が付くが、
お供えしたうどんの容器は空っぽになっていた。

 

香助は、昔のようにうどんを卸しに小学校へ行き、
自分が打ったうどんをおいしそうに頬張る小学生を見て、
満足そうな表情を浮かべる。
反対側に見えた父も小学生を見て、初めて笑顔を見せ、そして去っていく。

そして〇を付けた道具引き取りの日。
香助は単身、アメリカにまた行こうとしていた。
香助を見送った後、
うどん屋は再オープンと勘違いした人であふれ返っていた。
香助を支えて手伝っていた、姉の旦那、良一が店を継ぐことになる。
香助は飛行機の中から人で溢れかえるうどん屋を見て驚愕する。

それから3年後、
うどん屋は相変わらずの賑わいを見せていた。
恭子は単身、ニューヨークに来た。
タイムズスクエアの大きな掲示板には、
ハリウッド映画「キャプテンUDON」の主役を務める香助が映っていた。




ネタバレ徹底考察

脅威の再現率!実在する有名店

今作では作中、香助たちがうどん屋を巡るシーンで多数のうどん屋が出てくる。
各店舗の特色はもちろん、どんぶりや醤油を持参するうどん店も、もちろん存在する。

鑑賞するときは、そんな今作の「リアリティ」に注目してほしい。
2020年現在に、有名になった店舗や、今は無き名店も全てリアルの店が出てくる。

うどん店に留まらず、作中で登場するタウン誌「月刊タウン情報さぬき」も、
モデルとなった「月刊タウン情報かがわ」というタウン誌が存在し、
作中の「うどん巡礼記」というコラムも同じようなコラムが連載されており、
リアルの描写が数多く出てくる。

今作「UDON」を鑑賞し、香川を訪れた人々もこれらの店舗に行き、
映画であるとともに、香川のPR活動にも影響を与えていた実情を知ったうえで今作を鑑賞すると、
いかに今作が「リアル」な内容だったかがわかるだろう。

コメディ映画として観た時の「ギャップ」

そんな今作でも非現実の描写として、多くのコメディシーンもある。

パッケージや、タイトル、出演する役者を見ても、それがわかり、
今作の表のカテゴリーは「コメディ映画」であると考えていいだろう。

そんなコメディ映画に組み込まれる、松井製麺所のストーリー。
このストーリーは「父の死」をテーマとして、感動を誘うような描写になっているが、
そんな「ギャップ」こそが人気の要因でもあるだろうと思う。

究極の飯テロ映画

世の中の色々な娯楽があるが、こと「映画」に関しては食べ物をテーマにしたものが少ない。
そんな映画というジャンルで「讃岐うどん」というグルメにスポットライトを当てて、
全力で映画を作ってしまったことが本作の面白いところでもあるだろう。

2時間という長い映画の中で、ひたすらに「うどん」のことについて語られる。
「映画」という形での演出により、巻き起こる現象、
これにより出来上がった産物、それが「飯テロ」である。

ここまでのうどんに対する欲望が駆り立てられるのは
「映画」というジャンルならではのものであり、
綿密に計算され、ここまで飯テロを煽る媒体は未だかつて見たことがなかった。

今作の鑑賞者の99%はうどんを食べたくなったであろうと推測するとともに、
「小麦粉アレルギー」の人たちには地獄のような作品となるだろう。