「ハッピー・デス・デイ」ネタバレ感想と考察【何度も『殺される』恐怖の一日をコミカルに描くブラックコメディ】

  • 2022年2月5日
  • 2022年2月12日
  • 映画
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本記事は、映画「ハッピー・デス・デイ」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「ハッピー・デス・デイ」

2017年、クリストファー・ランドン監督によって制作された作品。

一人の女子大生が惨劇のループに巻き込まれる物語。

上映時間は96分。

あらすじ

舞台はアメリカ、一人の女子大生ツリーは色々な男をとっかえひっかえしながら、青春を謳歌していた。

自由気ままな生活に周りの目は冷たかったが、当人の彼女は気にせず遊び続けた。

そんな彼女の誕生日、朝は知らない男の家で起き、大学の教授と不倫関係を楽しみ、パーティに参加した帰り道のこと。

突如「仮面」を被った男に刺殺されるツリー…。

目を覚ますと…そこは今日の朝と全く同じ、知らない男の家のベッドであった…。

出演役者

本作の主人公、ツリーを演じるのが「ジェシカ・ローテ」

今をときめくアメリカの女優であり、あの「ラ・ラ・ランド」にも出演している。

 

本作の重要人物、カーターを演じるのが「イズラエル・ブルサード」

アメリカの俳優で、映画作品やコメディドラマ等で活躍する俳優。

見た目に似合わず「人種差別」を匂わすコメントを残し、物議を醸してる。

配信コンテンツ

今現在「ハッピー・デス・デイ」は、Amazonプライム、Netflix、U-NEXT、dTV、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

ネタバレあらすじを読む
舞台はアメリカのとある大学。ツリーは今日も知らない男の家で目覚める。

大学の講義をサボりつつ、大学の教授であり医師である既婚のグレゴリーと不倫の逢瀬を交わし、自由気ままに青春を謳歌していた。

彼女は自分の寮に戻るために帰路に着く。

「地球温暖化」の署名を無視し、スプリンクラーに濡れる学生を見て、鳴り響く警報機を聞き、「学生運動」で倒れる学生を横目に通りすぎる。

そして一度だけ関係を持ったティムに付きまとわれ、寮にたどり着く。

寮で寮長に説教を受けながらも自分の部屋に戻ると、ルームメイトのロリがケーキを持って待っていてくれた。

今日はツリーの誕生日だった。

しかしツリーは、ロウソクの火を吹き消すと、ケーキをゴミ箱に投げ捨て、遅刻している講義へと出かけてしまう。

自分の誕生日を心底毛嫌いするツリーであったが、それと同時に最愛の母親の誕生日であり、そして「命日」でもあることにぶつけようのない怒りを覚えるのだった…。

そして夜、パーティに参加しようと身支度を整えるツリーであったが、そこで部屋の照明が落ちる。

停電だった。

停電が無事に復旧し、パーティ会場へと歩みを進めるツリーだった。

その途中、「ハッピーバースデー」のオルゴールが不気味に置いてあるトンネルに差し掛かる。

これを誰かのイタズラだと一蹴したツリーが無視してトンネルを潜ると…怪しいお面を被った人物に刺殺されてしまう…。

そして目を覚ますと、そこは今朝の男の家だった。

男は今朝と全く同じ反応を見せる。

しかしツリーだけはデジャヴの光景に不安を覚える。

男の部屋に貼ってあった「今日は残りの人生の最初の日」のステッカーが嫌味に感じてしまうのだった。

そして帰路でも全く同じ光景を見る。

「地球温暖化」の署名を無視し、スプリンクラーに濡れる学生を見て、鳴り響く警報機を聞き、「学生運動」で倒れる学生を横目に通りすぎる。

そして夜、ツリーの前には全く同じオルゴールが置かれていた。

恐怖を感じたツリーは別のルートでパーティ会場へと向かう。

すると中ではツリーの「サプライズ誕生日会」を祝ってくれているのだった。

一気に気持ちが良くなったツリーは、男の部屋へとなだれ込む。

男が爆音でEDMを流して踊り始めると、真後ろで殺人鬼が男を刺殺する…。

そしてツリーも殺されてしまう…。

そして目を覚ます。

再び全く同じ男の家で目を覚ますツリー。

全く同じ一日を体験するのだった。

今度は殺人鬼を恐れて家に引きこもるツリーであるが、なんとここでも忍び込まれた殺人鬼に殺されてしまう。

そして目覚め、同じ一日を繰り返す。

起きた瞬間からパニックで外へ飛び出すツリー。

しかし周りでは同じ現象が起こっていく。

ここでツリーは目覚めた時に居合わせた男、カーターに全てを話し、相談してみる。

カーターは「自分に恨みを持っている人の仕業」と豪語するが、ツリーには星の数ほどにそんな人々が居るのだった…。

それからツリーは吹っ切れ、無限ループを「楽しむ」ことにする。

自分に恨みを持ちそうな人を一人ひとり監視しながら、一日を過ごす。

そしてその度に殺人鬼に殺されていく…。

そしてついに、ツリーは全裸で外を出歩くほどに自由になる。

全ては彼女の根底に「どうせ死んで繰り返すから」という確固たる自信があってのものだった。

全裸のツリーを呆然と見つめる外の人々、そんなツリーを見て、「学生運動」の学生は倒れてしまう。

そんな一日を何度も繰り返していくのだった…。

そして目覚めたツリーは、カーターに「あなたの案はクソよ」と開口一番告げる。

しかしカーターはもちろん覚えてなどいない。

その瞬間、気絶して倒れてしまうツリー。

グレゴリーの診断によると、「原因不明」の傷が残っている、という診断だった。

それは「ループの一日」を過ごし、死亡した時の傷が残っていることを意味するのだった…。

そして夜、病院内で例の如く殺人鬼に襲われるツリー。

無事に車で逃げ出すが、今度はガソリンを引火させられてしまい、車内で爆発死してしまう。

目覚めたツリーは、ループ脱出の糸口が掴めず、ひねくれた一日を送るようになる。

カーターに諭され相談していると、「若い女性を狙う殺人鬼」のニュースが報道される。

そこでツリーは、自分を殺しているのはこの殺人鬼だと推測するのだった…。

殺人が行われたとされる病院へ向かったツリーは、そこで殺人鬼と初めてまともに対峙する。

斧を使い、殺人鬼を倒すことに成功するが、カーターが殺されてしまう。

このままループを抜ければカーターが死んだままになってしまうと考えたツリーは、首吊り自殺にてまたループへと戻るのだった…。

そして次のループの一日、ツリーは全ての人に優しく、ゴキゲンで接することにする。

「地球温暖化」の署名には笑顔でサインし、スプリンクラーの学生は危険を伝え、「学生運動」の倒れる学生には枕を用意する。

そしてロリには今までの悪行を謝り、グレゴリーとは不倫の縁を切る事となる。

そして、これまでのループで全て無視し続けていた「父親との食事」も行い、蟠りを解消するのだった…。

夜、病院に侵入したツリーは、本来殺されるはずの警官を救出し、再び殺人鬼と対峙する。

何度も経験した「停電」を利用して、見事に打ち負かしたツリーは、カーターと囁かな誕生日会を開く。

ロリに貰ったケーキにロウソクを灯し、吹き消す。

そして目が覚める。

そこはなんと今までと変わらない、ループの一日となっているのだった…。

どこに行くあてもなく、自分の部屋に帰ったツリーであったが、そこでロリと会い、あることに気がつく。

それは、「ロリがケーキに毒を仕込んで死亡した」ということだった。

ロリを問いただしたツリーは、これが本当であったことを知り、ロリと格闘になる。

病院で仕事をするロリは、「グレゴリーと不倫するツリー」に殺意を抱き、殺人鬼すらもけしかけツリーの殺害を目論んでいるのだった…。

小さな部屋でのルームメイトとの格闘であったが、二階の窓から突き落とし、ロリとの戦いに勝つツリー。

ケーキの毒も検出され、ツリーの行為は「正当防衛」として認められる。

部屋が「犯行現場」と化したことから、寝床としてのカーターの部屋を使うことになったツリーだった。

そして目覚める。

場所は今までと同じカーターの部屋。

するとカーターはなんと、これまでと全く同じ反応を見せる。

焦るツリーであったが、これはカーターのイタズラによるものだった。

「19日の火曜さ。おめでとう!」

そう笑うカーターにじゃれつき、キスをする2人だった。




ネタバレ感想と考察

主人公が「クソ」が故に起こる現象。

今回の映画、主人公のツリーを中心に描かれる作品であるが、鑑賞者の皆さんはお気づきだろう。

主人公ツリーがとんでもなくクズな人間であることに…。

本来ホラー作品の主人公というものは、慎ましく恐怖に襲われ悲鳴を上げてほしいものであるが、そんな感覚を微塵も感じさせない魔力がこのツリーにはある。

ツリーはいつでも自由奔放に生き、ルームメイトの手作りケーキを捨ててしまうほどの悪行が目立つ異例の主人公となっていた。

何度目かのループの際に、カーターから「自分に恨みを持つ人に心当たりは無いか?」と尋ねられた時には、自分でも覚えきれないほどの人の名前を挙げたのが印象的なシーンとなっていただろう。

映画の中盤では「ループすること」を受け入れ、繰り返される一日を「楽しもう」としていたツリーであるが、そんな彼女の奇行の数々と軽快なBGMには、これまでのホラー映画とは一味違う空気感を感じることができた。

本来であれば「ホラー映画」であるはずが、彼女のブッ飛んだキャラクター性によって、「ブラックコメディ」にも仕上がる作品となっていたのだ。

 

本当の黒幕とツリーの相関関係。

物語としても「誰かに殺され続ける」ループ映画であり、それは仮面を被った一人の男からの逃亡に見える描かれ方がされていたが、実際の黒幕はルームメイトのロリであったことも特殊な要素となっていた。

ロリは大学病院で働きながら、病院の先生であるグレゴリーに好意を抱いていたが、「ツリーとグレゴリーの不倫」をきっかけに、ツリーに対して殺意を抱いていく。

そしてロリは「殺人鬼」までもけしかけ、ツリー殺害を目論んでいた…。

そんなロリに「殺されないようにすること」が、そのままループ脱出へのカギとなっていたが、ここでツリーがまず最初にしなければならない方法が、「誰が自分を殺そうとしているか調べる」ということだった。

ツリー自信が敵が多い人生を歩んできた証拠であり、彼女の贖罪の映画という観点からも本作は面白いものとなっていた。

また、彼女は本来、「ロリの作ったケーキを食べて死ぬ運命」であったことが映画の終盤で明らかとなるが、持ち前の行いの悪さ(せっかくのケーキを食べずに捨てる)によって、これを回避していることも彼女のキャラクターを生かした面白い要素となっていた。

結局「明日」を迎え、無事に生き長らえる彼女であるが、事項ではそれに纏わる「本作の最大の謎」に迫っていく。




そもそもなぜループしていたのか?

映画のパッケージを見ても、「幽霊的恐怖」を彷彿とさせる作品となっていたが、フタを開けてみれば、ツリーを襲う人々は全て「人間」であった。

本作の唯一と言ってもいい、幽霊的SF的要素と言えば、やはり「ループ現象」となるが、なぜ彼女の一日がループしていたのだろうか?

この現象については大きく2つに分けて考察することができる。

①ツリーのこれまでの行いに対する「贖罪」の意味があった。

ツリー自身、自分でも身に覚えがありすぎるほどに「悪い行い」を繰り返してきた人物であったが、その「ループ現象」は彼女の誕生日に起こっていた。
本来であれば、彼女にとっても「幸せな一日」となるはずであるが、これを「殺害される」という数奇な運命を辿る。
そしてツリーはループし「何度も殺される」。
どう足掻いても殺される一日を何度も繰り返す…というまるで生き地獄のようなループを繰り返すことに「贖罪」としての意味合いを含んでいたとも考えられる。

②ツリーを「救う」ためであった。

今回のループ物語、結末から言えば「ハッピーエンド」となる作品であったが、こちらの説では「ツリーを救うため、ループしていた」説を提唱する。
この日は彼女の誕生日であると同時に、亡くなった母親の誕生日でもあり、更に母親の「命日」でもある一日となっていた。
敵の多い生活を送っていたツリーであるが、母親だけは彼女の味方であったことが、この説のカギとなる。

そう。二つ目の説のループは「母親によって起こされていた」という考え方だ。

本来であれば「ツリーの命日」となる日であるはずが、母親の「念?」により、彼女を「更生」させるためのチャンスを与えているという考え方もできる。

現に、何度も繰り返す一日を経ていく中で、彼女は他人の気持ちを思いやり、成長していく過程が描かれている。

そして迎えるハッピーエンド。

彼女はこの母親のループによって救われ、これからの人生を歩むことができるようになったのだ…。

説で言えばやはり濃厚なのは後の説であるが、本当の正解は鑑賞者の考察に委ねられる映画となっていた。

上げて落とす…ジェットコースターのような脚本の面白さ!

一本の映画として今作を俯瞰してみると、脚本の「ジェットコースター感」が強い印象を受けた。

中でも映画終盤の「いい人」となるツリーの人生である。

これまで、数々の人を「助ける」ことなく、ループからの脱出をしようとしてきたツリーであるが、最後の一回前のループでは、これまでの人々に思いやりを持って接する一日を送る。

「映画の脚本」としての結末で言えば、「確実にループ脱出ができる」と思われたが、彼女は再びループしてしまう。

そして「ケーキの毒」に気が付き、黒幕がロリであることが判明する…。

ここで描かれる「ハッピー」→「バット」→「ハッピーエンド」のループの流れが本作一番の仕掛けであり、この映画を有名映画へと押し上げた要素と言っても過言ではない。

そしてついに来た「明日」、カーターのイタズラによって騙されるツリーであるが、鑑賞者の皆さんの中でも騙されてしまった人も多いだろう。

そんな遊び心さえ感じるループ要素には脱帽してしまうような脚本の作品だった。

また、今作には続編である「ハッピー・デス・デイ 2U」も存在している。

まさかのシリーズ化してしまった作品であるが、一体どんな内容となるのか、気になる人は鑑賞してみよう。

「遊び心」と言えば余談ではあるが、本作の映画の始まり、おなじみの配給「UNIVERSAL」の文字であるが、これもループする演出となっているのがまた面白い。

気になる人は見返してみよう。