「ダークナイト」
2008年、クリストファー・ノーラン監督によって
制作された作品。
DCコミックスの作品「バッドマン」を
実写映画化した作品で、
「ダークナイト三部作」の二部目に当たる。
上映時間は152分。
あらすじ
舞台はとある町「ゴッサムシティ」、
犯罪者の温床と化す、このゴッサムシティで、
街全体を巻き込んだテロが、
バッドマンによって阻止された。
しかし、息をつく間もなく、
新たな犯罪者が市民の虐殺を始める。
彼の名は「ジョーカー」
バットマンはジョーカーの
劇場型犯罪を止めるべく、
再び動き出すのだった。
ネタバレ感想と考察
とにかく有名すぎる。一つの「カルチャー」すらも作り上げたキャラクター
アクション映画を愛する者全てが
このキャラクターを知っているであろう。
本作の主役は、
「バットマン」ではなくそんな男、
「ジョーカー」だ。
現代の映画史において、
一時代を築き上げたキャラクターであり、
残虐無比な悪党なのにも関わらず、
多数のファンを抱える「敵キャラ」である。
DCコミックスでの漫画版バットマンでも、
バッドマン最大のライバルとして、
揺るぎない地位を築き上げてきた
キャラクターで、
ユーモア溢れるサイコパスキャラクターとして
彼以上に型にハマるキャラクターは
存在しないだろう。
「殺し」のみを愛するサイコパスキャラクターと「劇場型犯罪」
本作の第二の主人公と言ってもいい
このジョーカーというキャラクター、
バッドマン自体が「犯罪者との戦い」を
描く物語であるが、
その狂気の中に潜む「ユーモア」を駆使して
「劇場型犯罪」を目論むスタンスの
敵であったことに、
人気の秘訣はあるだろう。
一つの事件を巻き起こすにも、
ゴッサムシティを恐怖の渦に
叩き込みながらも、
色々な殺戮の方法で鑑賞者を
楽しませてくれる作品に仕上がった。
そして彼は「お金」に対しての
興味が一切無かった。
「殺し」や「恐怖」を求めての
犯罪行為に真のサイコパスが何たるかを
まざまざと見せつけてくれた
キャラクターだっただろう。
様々な作品を交えた上で、
「サイコパスキャラと言えば?」
という質問をされても、
まず初めに「ジョーカー」が浮かぶ人も
数多く居るだろう。
突き抜けた「悪人感」こそが人気の秘訣。
「コイツは本物の悪党だな〜」
映画を鑑賞した誰もが、
ジョーカーに抱く感情だろう。
本来「敵キャラ」として登場する
キャラクターには、
そうなってしまうまでの経緯などが
語られることが多い中、
このジョーカーについては、
虚を突くような薄っぺらい理由が
散りばめられる。
そんな理由を語っている間も、
常に愉快そうに笑い、
苦痛の表情を見せるシーンが
一切無かったことが
彼の「狂気」を生み出した。
「映画」という、
鑑賞者を楽しませる手法の
カルチャーにおいて、
彼の一挙一動、
全てがハマるキャラクターであり、
一切の躊躇もなく、行動で示していく
キャラクター性で、
真の悪党を演じてくれただろう。
他の作品を鑑賞しても、
ここまで突き抜けた「悪人キャラ」は
そうそうお目にはかかれず、
更に彼には「どこか憎めない」
不思議な魅力も詰まっていた。
哲学的な一面も見せるキャラクターだった。
本作ダークナイトの中では、
ずっと笑っているだけのように見えて
哲学的一面を劇場型犯罪のシステムで
見せる演出もあった。
豪華客船での仕掛けが正にそれだろう。
二台の豪華客船は「犯罪者」と
「一般市民」で二分されるが、
どちらが先にボタンを押すかを
「被害者」となる人々に
決定権を与えるという
システムの犯罪があった。
本当に悪なのは「市民」か「犯罪者」かを
問うような面白いシステムとなった。
こんな仕掛け、「SAW」シリーズでも
ありそうなものである。
「正義」と「悪」の判断を鑑賞者に
委ねるような演出が施され、
それが本作の
大きなテーマの一つとなっていた。
「バットマンの苦悩」が描かれた作品。
一作目の「バッドマンビギンズ」、
言うなれば物語の序章、
新たに生まれた「バットマン」が
悪役たちを蹂躙していく様を描いたのが
この作品だった。
それに対し、本作「ダークナイト」で
描かれたのは、
「バッドマンの苦悩」だろう。
一作目で敵を一網打尽にしていることに
触発され、「ジョーカー」が生まれる。
そんな、新たな敵を次々と生み出す
バッドマンの存在自体に
疑問を投げかけるという、
新たなテーマの作品となった。
まさかまさかの展開「ヒロインの死」
前作の「バッドマンビギンズ」の
レビューでは、
数あるヒーローアクションモノの
映画の中でも、バットマンは
ダークな作品であることを述べた。
このダークさに拍車をかけるような
鬱展開として、新たに進行した物語が、
「ヒロインの死」だろう。
普段であれば確実に死ぬ事の無い、
(言い方を変えれば「フラグ」が立っていない)
キャラクターが突如として
死亡してしまう展開に、
鑑賞者は度肝を抜かれることとなるだろう。
そして、そのヒロインの死を選択するのが、
紛れもない「バットマン自身」なのである。
前作のレビューでは、
「人間らしいヒーロー」としても
バットマンを紹介したが、
ヒロイン「レイチェル」ではなく、
「デント」を選択したバッドマンの
判断には、非常に人間らしい要素が
含まれていた。
鑑賞者が予想していた結末の
盛大な「裏切り脚本」こそが、
クリストファー・ノーランたる
所以ともなっている脚本だった。