本記事は、映画「レザボア・ドッグス」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「レザボア・ドッグス」
1992年、クエンティン・タランティーノ監督によって制作されたクライム映画。
宝石強盗事件の経緯を様々な人物の視点から描く作品。
上映時間は100分。
あらすじ
舞台はアメリカ、走り去る車の中では「オレンジ」が血だらけで横たわっている。
運転手の「ホワイト」は瀕死のオレンジを倉庫に担ぎ込む。
そこでは仕事仲間の「ピンク」が待ち受けていた。
6人で挑んだ「宝石強盗」は成功したのか?
それぞれのここまでの経緯を語り始める…。
出演役者
本作のメインキャラクター、ホワイトを演じるのが「ハーヴェイ・カイテル」
ホワイトと倉庫で落ち合うピンクを演じるのが「スティーヴ・ブシェミ」
その他多数の有名俳優が出演する…。
配信コンテンツ
「レザボア・ドッグス」は今現在、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
タランティーノ監督の出世作!これぞアメリカンマフィア映画の金字塔!!
映画好きなのであればどこかで聞いたことがあるであろう本作の名前。
そんな作品「レザボア・ドッグス」であるが、そのタイトルは「レザボア(貯水池、貯蔵庫)」そして「ドッグス(犬)」の意味があり、そして「リザーバー(水冷エンジン、酒の貯蔵庫)」が訛り、酒の貯蔵庫に群がる犬(リザーバードッグス)をイメージして付けられたタイトルとなった。
本作は数々の映画雑誌で1位にランク付けされるほどの名作で、他の映画作品でも本作のタイトルが作中に登場する作品は少なくないだろう。
「タランティーノ節」を炸裂させた物語の脚本構成。
本作は1992年の映画であるが、当時ではあまり使われていなかった、物語が切り替わり切り替わり進行していくタランティーノ監督の特徴となる脚本構成がなされている。
今でこそ当たり前のように使われている、この物語の進め方は、当時はセンセーショナルに感じたのではないだろうか?
本作で進行する物語は大きな部分は一つの倉庫の中で繰り広げられる。
そしてそれぞれの登場人物のエピソードへとアクセスしていく。
「パルプ・フィクション」との比較。
ここで、「レザボア・ドッグス」の後にタランティーノ監督が書き上げた「パルプ・フィクション」と比べてみよう。
物語の大きな構成はタランティーノ節ではあるが、少しだけ違う部分がある。
それは「プラットフォームの置き方」という観点だと感じた。
2作目となる「パルプ・フィクション」では、大きな物語が5つに分かれ、まるで短編小説集かのような進み方をする。
一方で本作の「レザボア・ドッグス」では、物語の節目に「倉庫」というプラットフォームが指定され、「ホワイトとピンクの倉庫での出来事」という、ストーリーの大きな柱が存在する。
このテンプレとも言える構成の物語の後に作られた、「短編小説方式」の「パルプ・フィクション」…。
タランティーノ監督はこの作品のスマッシュヒットにより、映画界の中心人物ともなる存在になっていった…。
月並みではあるが、筆者の見解としてはこんなところだ…。
そして、彼の作品には様々な「作品間のリンク」が散りばめてあることも有名だ。
彼の作品は数多くあるが、別の作品の中でも同じ世界線で物語が進行しているのだ。
例えるなら、マーベル映画のヒーローたちが共存する世界観「アベンジャーズ」のような世界観である。
その中でも最も有名なものに、本作のレザボア・ドッグスとパルプ・フィクションの繋がりがある。
本作で登場する「ブロンド」という警察官を拷問するマフィアは、パルプ・フィクションの主人公である「ヴィンセント」と実の兄弟である…という設定が存在する。
タランティーノ監督の作品たちにはこんな「遊び」が数多く練りこまれ、一連のこの遊びが「タランティーノ・シネマティック・ユニバース」などと呼ばれることもあるようだ。
ちなみにこれは、マーベル作品での「マーベル・シネマティック・ユニバース」と表現される遊びからできた「造語」であり、本作品のリンク以外にも、たくさんの仕掛けが存在している。
タランティーノ監督の作品を見れば見るほど、この関連性によって作品が面白く感じることができるだろう。
お金が無かった!?監督とハーヴェイ・カイテルの関係性
本作を初めて見た時のジャンルの印象であるが、「犯罪映画」であると同時に「ワンシチュエーション」の作品でもあると感じた。
そして世のワンシチュエーション作品に共通して言える内容が、「低予算映画である」ということだった…。
そこの部分を調べていくと、なかなか面白い内容が顕になってくる。
まず注目したいのが、出演役者の部分。
本作の登場人物の中で「ブラウン」というキャラクターを演じているのが、タランティーノ監督自身なのだ。
細かく見ていくと、これも低予算ならではの努力なのかもしれない…。
そして「ホワイト」を演じた「ハーヴェイ・カイテル」という俳優である。
彼は本作の前身となる「Reservoir Dogs: Sundance Institute 1991 June Film Lab」を気に入り、本作の制作総指揮に名乗りを上げた。
当時28歳で映画監督としての評価もあまりされていなかったところに、当時からベテランの俳優だったハーヴェイの推しによって、初の長編映画として本作は制作された。
まさに無名のタランティーノを世界に送り出したハーヴェイの手無くしては、彼が有名になることもなかったのかもしれない…。
タランティーノ監督の作品で感じる「ワクワク」と「ドキドキ」
彼の監督作品では当たり前であるが、結構な「グロテスク描写」が存在する。
それはどんな作品も共通であり、「マフィア」や「銃」といった、物騒なモノがエピソードによく絡んでくることも関係しているだろう。
本作の「レザボア・ドッグス」でも、警察官を拷問するのに耳を切り落としたり、ガソリンをかけて放火しようとしたりする描写が存在する。
一見頭を使う脚本や、思わず笑ってしまうようなブラックコメディに、グロテスクな要素の比率が上手くマッチしたドキドキ感が感じられるのが、本作…基、タランティーノ監督の作品全てに言える面白い要素だろう。
そして彼の作品には「見えないお宝」が登場するのも面白い要素の一つだ。
本作でピンクが所持している、物語の中心にある「宝石が入ったバッグ」であるが、結局中身が明かされないまま終わることとなる…。
ピンクが持ち去ったあの箱の中身は一体…?
タランティーノ監督の作品にはちょくちょくこんな演出が織り込まれているのだ。
次回作となる「パルプ・フィクション」でも、箱の中身を開けたら「光り輝く何か」に目を奪われるシーンがある。
こんな「ワクワク」と「ドキドキ」を感じれるのも彼の作品の醍醐味なのだろう。