本記事は、映画「パルプ・フィクション」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
「パルプ・フィクション」
不良のカップル、マフィアの2人組、引退目前のボクサーなどの出来事を描く物語。
上映時間は154分。
あらすじ
舞台はアメリカ、とあるレストランにこれから「レストラン強盗」を目論む不良カップルが居た。
一方別の場所では、マフィアのボスの妻の面倒を押し付けられる一人のマフィアが居た…。
物語はどんどん交錯していく…。
出演役者
本作の主人公の一人、ヴィンセントを演じるのが「ジョン・トラボルタ」
ヴィンセントのパートで登場するマフィアの妻、ミアを演じるのが「ユマ・サーマン」
本作のもう一人の主人公、ボクサーのブッチを演じるのが「ブルース・ウィリス」
配信コンテンツ
今現在「パルプ・フィクション」は、U-NEXT、Hulu、等で配信されている。
ネタバレ感想と考察
これぞタランティーノ節!複数の物語が交錯していく物語。
今や超名作となった本作「パルプ・フィクション」であるが、なんと公開されたのは1994年、かなり昔の映画である。
今でこそ当たり前となった、別々の物語が交錯していく脚本の作り方は、当時はとても斬新なものとして感じ取れたことだろう。
本作では主に5つのストーリー、「ヴィンセントとミアの一夜」、「ジュールスとヴィンセントの取り立て」、「引退ボクサー、ブッチの八百長試合」、そして「レストラン強盗を目論む不良カップル」の物語が進行する。
時系列は全てバラバラ、そしてそれぞれの物語が少しづつ噛み合っていくのが、本作の一番の醍醐味だろう。
映画冒頭、二人の不良カップルのレストラン強盗から始まる物語は、最後、そのレストランに居合わせたジュールスとヴィンセントとの一幕で終わることとなる。
粋なオチの付け方に後味良く終われるのもクエンティン・タランティーノ監督の映画のいい部分でもある。
グロいのに「観れる」映画になる秘密。
本作に限らず、クエンティン・タランティーノ監督の作品には必ずあるのが少し「グロテスク」な描写である。
本作でもマフィアが銃で人を殺すのが当たり前、更には車の中で銃を暴発させてしまい、色々と厄介な死体を片付けるシーンも存在する。
無理な人には無理な描写ではあるが、彼の映画は何故か「観れる」演出となる。
それは本作が「コメディ映画」としての一面を持ち合わせていることが原因だろう。
思い返せば彼の作品はいつでもグロさの中に、ちょっと笑ってしまうような「コメディ要素」が入っている。
本作でもミアのオーバードーズ、そしてジュルースとヴィンセントの掛け合い、ブッチの逃亡劇など、血だらけとなるシーンは多いが、そのどれもが明るくコメディに、そしてダークな笑いを意識した「ブラックコメディ」として仕上げられているのが観れる一番の理由だろう。
タランティーノの作品の中でも、2015年に公開された「ヘイトフル・エイト」はコメディ、グロさ共に彼の色が全開となる作品の一つだろう。
気になる人は是非とも鑑賞してみるべきだろう。
レストラン「ジャック・ラビット・スリム」時代背景とミアの妖艶さ!
本作が今も尚語り継がれる作品となった理由として、巨匠クエンティン・タランティーノが描く名作である他に、彼の描く作品の時代背景が秀逸であることも理由になっているように思う。
彼が描くのはいつも「アメリカ映画」、そしてマフィア、拳銃、金、そしてエロス…。
本作でも全面に押し出されたその世界観が、とても彼の脚本にマッチしている。
本作で描かれるミアとヴィンセントのパート、映画のジャケットにもなっているミアの姿はとても妖艶であり、天真爛漫なミアにクールに着いていくヴィンセントの二人組は、今でも色褪せないキャラクター設定だ。
2人が食事をするレストラン「ジャック・ラビット・スリム」であるが、これに惹かれる人も多い。
このレストラン、実在しているものではなく、1950年代に流行りを見せたアメリカのレストラン形式である。
店内は当時のクラシック映画のポスターが張り巡らされ、ウェイトレスは映画スターのモノマネ姿で迎え入れてくれる。
クラシックカーの形をしたBOX席に座り、当時名を馳せた俳優や女優の名前が付いた飲み物や食べ物を注文する。
当時のアメリカンレストランを彷彿とさせる賑やかな雰囲気のレストランは、いい世界観を魅せてくれた。
こちらも有名なダンスシーンでミアとヴィンセントのダンスシーンは後世に語り継がれる名シーンとなっている。
ちなみにこの「パルプ・フィクション」作品を通して、グッズ化されるほどの人気を博している。
映画のジャケット、ダンスシーン、更には作中でジュルースとヴィンセントが着用したTシャツまでグッズとなっているのが微笑ましい。
タランティーノと日本の深い関係性!?
本作はタランティーノ監督のヒット2作目であり、コレの前に描かれた「レザボア・ドッグス」がスマッシュヒットを起こしたことで監督自身の名前を世に広めることとなる。
彼の「レザボア・ドッグス」は数々の映画祭で賞を取ったが、その中の一つに日本の「ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭」にも参加することとなった。
そして本作「パルプ・フィクション」は、そんな彼が北海道滞在中に書き上げた脚本が元となっている。
あのタランティーノ監督の名作が、まさか北海道の夕張に密接に関わっているのは驚きだ…。
更に言うなら、同じくタランティーノ監督の作品「キル・ビル」に栗山千明が演じる女子高生生の殺し屋が登場するが、彼女の名前はなんと「GOGO夕張」である…。
なんとも密接に関わっていたことか、タランティーノ監督と「夕張」…。
これを意識してか、夕張の街中には至る所に過去の名画の映画看板が掲げられていることも映画祭に関係しているのだろうか…。
「レザボア・ドッグス」との比較。
ここで、「パルプ・フィクション」の前にタランティーノ監督が書き上げた「レザボア・ドッグス」と比べてみよう。
物語の大きな構成はタランティーノ節ではあるが、少しだけ違う部分がある。
それは「プラットフォームの置き方」という観点だと感じた。
2作目となる「パルプ・フィクション」では、大きな物語が5つに分かれ、まるで短編小説集かのような進み方をする。
一方で本作の「レザボア・ドッグス」では、物語の節目に「倉庫」というプラットフォームが指定され、「ホワイトとピンクの倉庫での出来事」という、ストーリーの大きな柱が存在する。
このテンプレとも言える構成の物語の後に作られた、「短編小説方式」の「パルプ・フィクション」…。
タランティーノ監督はこの作品のスマッシュヒットにより、映画界の中心人物ともなる存在になっていった…。
月並みではあるが、筆者の見解としてはこんなところだ…。
そして、彼の作品には様々な「作品間のリンク」が散りばめてあることも有名だ。
彼の作品は数多くあるが、別の作品の中でも同じ世界線で物語が進行しているのだ。
例えるなら、マーベル映画のヒーローたちが共存する世界観「アベンジャーズ」のような世界観である。
その中でも最も有名なものに、本作のパルプ・フィクションとレザボア・ドッグスの繋がりがある。
本作で登場する主人公の「ヴィンセント」は、レザボア・ドッグスで登場する「ブロンド」という警察官を拷問するマフィアと実の兄弟である…という設定が存在する。
タランティーノ監督の作品たちにはこんな「遊び」が数多く練りこまれ、一連のこの遊びが「タランティーノ・シネマティック・ユニバース」などと呼ばれることもあるようだ。
ちなみにこれは、マーベル作品での「マーベル・シネマティック・ユニバース」と表現される遊びからできた「造語」であり、本作品のリンク以外にも、たくさんの仕掛けが存在している。
タランティーノ監督の作品を見れば見るほど、この関連性によって作品が面白く感じることができるだろう。