「暁に祈れ」のネタバレ感想と考察【最怖の刑務所で生き抜く術とは!?】

  • 2021年2月11日
  • 2021年3月13日
  • 映画
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本記事は、映画「暁に祈れ」の

ネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、

注意して読み進めてください。

暁に祈れ

2018年、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督によって

製作された作品。

ボクサーであるビリー・ムーアによる自伝、

「A Prayer Before Down」が原作となる。

上映時間は116分。

 

あらすじ

舞台はタイ、

ムエタイの栄えるこのタイで、

一人のボクサーが活躍していた。

アメリカの地を引く白人でありながら、

タイのボクサーとして稼ぎながらも

ビリーは自堕落な生活を送っていた。

 

完全なる麻薬中毒者となってしまっていた

ビリーであったが、

ある日、違法薬物によって

警察に連行されてしまう。

 

ビリーの刑務所生活が始まるが、

そこは言葉通りの「地獄」だった…。

 

出演役者

本作の主人公、ビリー・ムーアを

演じるのが、

「ジョー・コール」

2019年に海外ドラマを中心に、

数々の作品に出演する俳優で、

映画にも足を伸ばし始めている。

本作ではとても過酷でハードな撮影ながら、

ビリーとしての迫真の演技を魅せてくれた。

 

本作のヒロイン的立ち位置、

女囚人のレディボーイを演じるのが

「ポンチャノック・マーブグラン」

タイの女優であるが、

まだまだ出演する作品は少ないようだ。

本作では、どこか妖艶な

数少ない女性キャラクターとして登場している。

 

ビリーと行動を共にするタトゥーの囚人を

演じるのが、

「パンヤ・イムアンパイ」

なんと本物の「元」囚人である。

顔面のタトゥーも本物で、

自身の服役中に入れたものである。

 

ネタバレ感想と考察

実際に存在した「ビリー・ムーア」すべてが事実の物語

本作の物語、最後まで鑑賞した人なら

わかるであろうが、

なんと事実に基づき、制作された映画である。

 

本作の主人公である「ビリー・ムーア」は、

もれなく実在し、映画の最後に、

監獄の向こうに立っている人物こそ、

本物のビリー自身である。

 

物語の脚本を紐解いてみると、

とんでもなく悲惨で危険な

刑務所の環境であることがよくわかるが、

これもすべて自伝に記されている「リアル」である。

 

何十人も囚人は皆がタトゥーだらけ、

「薬の密売」「強姦」「殺人」までもが

日常茶飯事という環境も、

自伝に詳細的に記されている。

 

本作を前情報ナシで鑑賞し始めた鑑賞者にとっては、

ラストの自伝であったことが語られることが、

一番の衝撃を覚えるシーンだろう。

 

極限のリアリティショー!すべてが「ホンモノ」で撮影

ストーリーも本物であることだけでも

恐ろしいが、

本作最大の見どころは、

もっと別の場所にある。

 

本作で登場するセットとなった刑務所、

そこに収容される入れ墨だらけの囚人たち

ひいては「主要キャスト」以外の人物すべてが、

本物の囚人である。

 

本映画の撮影はリアルの刑務所で撮影され、

台本も渡されないままに、

本物の囚人たちがそのままキャスティング

されたことが衝撃であり、見どころでもあるだろう。

 

「台本も渡されないままに」と記述したが、

本作の囚人たちの口から、

「○人殺して刑務所に入った」といった

旨の発言が出る。

もちろんこれも本物。

細かなセルフ等は決められず、

囚人たちは「自分役」としての

演技を指示されていた。

 

また、囚人たちが入れている入れ墨は、

「ソクヤン」と呼ばれ、

宗教的な意味合いを持つようだ。

 

極限まで「リアリティ」を突き詰めた今作、

監督のソヴェールの拘りが随所に感じられる

完成度となっているが、

本映画のロケハンにあたり

刑務所を訪れると、

囚人服切り刻まれた手紙

ナイフのように鋭利なスプーンなどが

散らばっているほどであったらしい。

 

また、本作品の脚本には、

囚人たちから聞いたエピソードなども、

たくさん脚本に練りこまれている。

どこまでもが「ホンモノ」

純度100パーセントのリアルである。




本映画の「テーマ」とは?

本作品がビリー・ムーアによる

自伝であることがわかったが、

ビリー自身、そして監督は、

本作品にどんなテーマを詰め込んだのか?

 

その答えは、本作品の脚本においての

「希望」として描かれた、

「ムエタイ」の存在であった。

 

無慈悲な「暴力」が横行する中での、

ビリーが生きるための唯一の希望、

それが「ムエタイ」である描写は

映画内でも描かれていた。

 

元々「ボクサー」であったビリーであるが、

もちろん格闘技のジャンルとしては、

ボクシングとムエタイは似て非なるものである。

 

本作で描かれたのは、

そんなボクサーであるビリーが、

劣悪環境の中で

「ムエタイ」を志していく姿で、

そんな「競技としての違い」

大きく投影するシーンもあった。

 

ボクシングとは違い、

ムエタイでは体に入れ墨を施すことは

とある一種の「儀式」であり、

試合前に祈りを捧げてから試合に臨む。

 

周りが汚く、

心の荒んだ囚人たちの中で、

この「儀式」試合前の「祈り」

シーンだけが、

神秘的に映っていたと感じたのは、

自分だけではないだろう。

 

暴力の嵐のであるからこそ、

「生きることの神秘」

その美しさを感じることができる

描写ともなっている。

ムエタイにおける試合前の祈りは、

「師に捧げる感謝の舞」との意味があるようだ。

 

映画のもう一つのテーマ「薬物中毒」について

映画のもう一つのテーマとして

描かれているのが「薬物中毒」である。

ビリーが墜落の人生を辿る元凶ともなった

大変に恐ろしい薬物であるが、

物語の最後に、

「今現在も、ビリーは薬物を断ち続けている」

との描写もあるほどに、

映画のもう一つのテーマともなりえる

問題だろう。

 

作中を通して、

薬物中毒であったビリーが

いかに「狂っていたか」がわかるような描写が

随所に登場する。

 

映画冒頭、ビリーが捕まるシーンで、

お尻の穴に薬物を詰め込むシーンが展開されたが、

ここでもその異常さがわかるだろう。

 

その他も、薬物欲しさに

他の囚人を半殺しにしたり、

薬物の紛れこんだ衣類を他人のものとして

濡れ衣を着せたり、

ビリーのクズっぷりは

とどまることを知らなかった。

 

画面酔いしそうなほどに

手持ちカメラが使われた、

格闘シーンや、

その薬物接種の目まぐるしい展開に、

ダニー・ボイル監督の有名ヤク中映画、

「トレインスポッティング」を思い出すような

演出があったとも感じたほどだ。

トレインスポッティング【ネタバレありなし徹底考察】

 

そんな堕落したビリーが「ムエタイ」によって

更生していくことに物語は着地するが、

映画前半の「ヤク中生活」も

衝撃的ながら、魅力的な光を放つシーンだっただろう。