「ウィンチェスターハウス」ネタバレ感想と考察【実在する幽霊屋敷の物語】

  • 2021年2月8日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「ウィンチェスターハウス」の

ネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、

注意して読み進めてください。

ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷

2018年、スピリエッグ兄弟の二人が監督し、

製作された作品。

 

北アメリカに実在する幽霊屋敷

「ウィンチェスターハウス」の歴史をもとに

制作されたホラー作品。

上映時間は99分。

 

あらすじ

舞台は1906年の北アメリカ、

精神科医であるエリック・プライス

多額の借金を背負っていたが、

高額な報奨金を条件に、

銃製造会社である「ウィンチェスター社」

夫人であるサラ・ウィンチェスターの

精神鑑定を引き受けることとなる。

 

38年間もの間、

増築され続ける屋敷に住まう

サラの元へ赴くが

そこで数々の怪奇現象を体験するのであった。

 

出演役者

本作の主人公エリック・プライス

演じるのが、

「ジェイソン・クラーク」

オーストラリア出身の中年俳優であり、

ターミネーターシリーズにも出演する

俳優である。

 

本作のキーマンとなるキャラクター、

サラ・ウィンチェスターを演じるのが

「ヘレン・ミレン」

御年75歳を迎える女優でありながら、

ヒューマンドラマや、アクション作品など、

多数のジャンルに出演する女優である。

 

ネタバレ感想と考察

事実に基づく物語、実在する「ウィンチェスターハウス」

本作の冒頭、「事実に基づいた物語である」旨が

語られるが、

今回の舞台となった、

「異常な増築を続けていた屋敷」は、

北アメリカに実在していた。

 

世界的な観光地としても有名な物件であり

作中同様「幽霊屋敷」の異名を持つ物件であるが、

その「歴史」から「ウワサ」までもが

「物語」として脚本に組み込まれ、

実在したサラ・ウィンチェスターの歴史をも

そのまま映画に反映する、リアルな脚本となっていた。

 

どこまでが「リアル」でどこからが「フィクション」なのか?

「事実に基づく」とはいっても

やはりは映画作品、

鑑賞者を楽しますための脚本

作品を盛り上げていたが、

なかなか非現実な世界観が展開される

作風となり、

「どこまでがリアルなのか?」

気になった鑑賞者も多いだろう。

 

本作では、語り継がれる「歴史」の部分においては、

ほぼ100%の再限度になっていたのが事実だろう。

屋敷に大きく関係していた「ウィンチェスター社」

もちろん実在するものであり、

銃の製造はもちろん、

作中に設計図が登場した「ローラースケート」まで、

ウィンチェスター製のものが実在している。

 

屋敷自体の外装、内装、間取りもが

全てそのまま登場し、

屋敷が建てられるまでの逸話として、

「霊媒師に助言を受けた」

歴史には記されているが、

作中でも冒頭で、そのことを示唆する描写が描かれている。

 

本作における「フィクション」である要素であるが、

登場人物、そして「ホラー要素」全般であるといえるだろう。

 

「ホラー作品」としての色味が強い「サスペンス」

本作をジャンルで括ろうと思った時、

完全なる「ホラー作品」にはなり得ない作りとなっていた。

作中には随所に「亡霊」が登場し、

その度にビックリさせてくる演出は

ホラー作品としての在り方だった。

 

本映画の監督はあの「SAWシリーズ」の作品の

監督を務めた、スピリエッグ兄弟であり、

じわりじわりと恐怖を与えるような

ホラーの描かれ方ではなく、

音や映像を駆使した「衝撃」を与える

ホラーの描かれ方だった。

 

一方で、その割りにはしっかりと作られた脚本、

「悲しい過去」、そして「アクション要素」などが

脚本には練りこまれ、

一つのジャンルでは括れない作風となっていた

作品でもある。

本作のジャンルをあえて決めるのであれば、

ホラー要素の強い「サスペンス」といったところだろう。

 

そんな数々のジャンルが入り組んだ、

テーマの見えない作風のためか、

本作の映画を酷評する映画マニアも少なくはない。

世界的な映画批評サイト「Rotten Tomatos」では、

支持率10%という、ある意味驚異的な数字を叩き出している。




抜群の脚本力と、伏線の張り方

今もなお酷評を受け続ける作品ではあるが、

本作を「サスペンス映画」として鑑賞したとき、

その秀逸な脚本と伏線に圧倒される作品でもあるだろう。

 

ハッピーエンドでありながらも、

どことなく「悲しい」感覚も覚えてしまう脚本であり、

結末に関する伏線の張られ方も、

なかなかに面白いものだったので、

おさらいしてみよう。

・登場する数々の霊の正体は
「ウィンチェスター製」の銃で殺された人間達。
・声を伝えるパイプから出てきた指は、
 エリックの妻のものだった。
・マリアンの息子であるヘンリーが
 取りつかれた際に、布をかぶる行為の正体は、
 悪霊であるベンが、
 生前ウィンチェスター社に押し入ったときに
 布を被っていたことが原因。
・エリックをもてなしていた、
 若い召使いの正体が悪霊のベンであった。
・悪霊ベンとの闘いにおいて、建屋が崩壊してしまうのは
 1906年に起きた「サンフランシスコ大地震」のオマージュ。
 (実愛するウィンチェスターハウスはこの地震で建屋が半壊している)
・霊たちの望み通りの部屋を再現する中で、
 エリックの妻が愛した庭を模した部屋、
 そしてベンの事件現場を再現した部屋があった。

 (エリックは映画冒頭で
 「庭」の部屋に入りたがるが、
 これは妻と過ごした部屋に似ていたことから
 興味を抱いていた。)

 

数々の伏線を経て物語のラスト、

他の霊たちの力を借りて

ベンとの対決に挑むエリックとサラ、

このシーンでは、

今まで「敵」と認識していた

霊たちが「味方」であったと解釈できる

感動的なシーンともなっていた。

 

本作が「ウィンチェスターハウス」を

モチーフとすることにより

「映画脚本」として成り立たせるのに

一役買った描写でもあり、

物語の後半では、

ホラー映画らしい要素は一切出てこず、

アクションとサスペンスのストーリー展開が

印象的となっただろう。

 

なぜこんなにも酷評を嵐を受けたのか?

前述したとおり、

本作は映画マニアからも酷評の嵐となったが、

それではなぜ

本作がこんな評価になってしまったのか?

実はこの理由、

数え切れないほど要因がある。

 

まず、作品のジャンルを

「ホラー」「スリラー」と謳ってしまったこと。

このようなジャンルで売り出せば、

映画鑑賞者はおのずと「ホラーマニア」になってくるが、

本作は「ホラー作品」と謳うには、

ホラー要素が弱い作りとなっていたことが挙げられる。

 

そして、ハッピーエンドであり、

作風がガラリと変わる「明るさ」を見せてしまったこと。

映画の前半では、

しっかりと驚かすホラー要素が描かれていたが、

後半で霊が大集合、

しっかりとしたハッピーエンドで終わったことに

異論を唱える人も多い。

ベンを倒す最後の一撃が、

主人公の持っていた弾丸というのも、

B級感を感じてしまうのも否めない。

 

また、物語最後の「アクションシーン」、

悪霊のベンが無数の銃を操り、

エリックとサラに向ける。

ここまでくると

「ポルターガイスト」の域を越えてしまう。

 

完全なる「超常現象」のようなCGは、

さながらSF作品のような印象を受けてしまった。

最後に、映画冒頭で流れる

「事実に基づく…」という表記であったり、

ラストには、

サラの実際の写真までもが引用され

歴史が語られる描写であったり、

「伝記映画」を匂わせるような

演出を施してしまったのも、

解せない演出であった。

あのバトルシーンを見せられた後に

「実際のサラのその後」が描かれてしまう演出には、

思うところがある…。

 

また、作中描かれていた、

「アヘン中毒者」としての

エリックのキャラクターが

回収されることがなく

終わってしまったのも気がかりである。

彼の体は大丈夫だったのだろうか…?

 

いずれにしてもであるが、

本作の評価は「どのジャンルの映画として視聴するか?」

全てが起因してくると言ってもいい。

本作品を「サスペンス作品」として鑑賞した時、

「アクション」「SF」として鑑賞した時、

そして何より、

「ウィンチェスターハウスをモチーフとした別物語」

として鑑賞すれば、

評価は180°変わってくるだろう。

 

そしてここからは、

「実在しているィンチェスターハウス」について、

解説していく。

ウィンチェスターハウスの歴史

実際に存在していたこの屋敷、

霊媒師からの

「ウィンチェスター製の銃が奪った命の呪い」

を言及され、

夫の死後、サラが建てたものだった。

 

階数はなんと7階建てであり、

38年間にも渡り、増築が続けられていた。

1906年の「サンフランシスコ大地震」によって、

建物が半壊してしまい、今現在は4階建てとなるようだ。

そんな4階建ての今現在すらも、

部屋の総数は160部屋にも上り、

47個の暖炉、1万枚の窓ガラス、

17の煙突が設置されるほどに巨大な屋敷である。

その数から、

いかに大きな屋敷かわかるだろう。

 

また、内装においても一線を凌駕する作りで、

金銀のシャンデリアなどの装飾品はもちろんのこと、

屋敷内のどこに通じてもないドアや階段、

渦巻き状の細長い階段など、

一風変わった造りの建物だった。

 

屋敷内にはエレベータが設置され、

エレベーターが使用される前では

屋敷の主であるサラの体を気遣い、

屋敷内のあらゆる場所にアクセスできる

「簡易蹴り上げ版」などが設置されていた。

 

また、霊魂の存在を信じたサラの計らいで、

銃で殺めた魂への対抗策として、

シャンデリアのろうそくが13本であったり

壁掛けフックの数が13個であったりと、

「13」という数字蜘蛛の巣のモチーフが、

屋敷内のいたるところで見られる。

 

シャンデリアやドア、階段、

簡易蹴り上げ版、

「13」にまつわるものや

蜘蛛の巣のモチーフも

作中に登場しているので

注目して鑑賞してみるのも面白い。

 

更に設備面では、エレベーター、

蒸気式の暖房や、近代的な室内トイレ

押しボタン式のガス灯など

当時のアメリカの最先端の技術も

取り入れられ、

アメリカ合衆国に一台しか存在しない、

「水圧式エレベーターピストン」

設置されている。

まさに建築マニアなら垂涎モノの物件である。

 

ハウス増築の真相とは!?

しかし、ウィンチェスターハウスは

38年間もの増築を続け、

大工も24時間365日体制

施工していたらしいが、

どこからそんな資金が出ていたのか?

 

建設工事費の総額として

550万ドルと見積もりが出されているが、

これにはウィンチェスター社の

資産だけではなく、

「税金」も絡んでいた。

 

夫の死後、サラは2千万ドルもの遺産を

相続することとなるが、

それとは別に、

会社の50%の所有権を得ていた。

 

一日でおよそ2万1千ドルもの

収益が得られ、

これに当時は税金がかけられていなかったため、

莫大な資金投資ができたと考えられている。

 

この逸話に繋がる話は映画の物語でも登場し、

エリックが精神科医として調査を依頼されたのは

「サラが筆頭時株主としてふさわしいかどうか?」

というもので、

作中でエリックは、

これに「問題なし」と回答している。

 

今現在のウィンチェスターハウスはどうなっている?

2021年の今現在でも、

アメリカ合衆国カリフォルニア州で、

「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」

観光地として存在している。

 

無料で入ることのできるエリアと、

入場料が仏ようなエリアに分かれ、

入場料は4000円相当かかるようだ…。

 

また「13日の金曜日」には、

幽霊屋敷にちなんで

「肝試しイベント」などもやっているらしく、

完全なる観光地としての姿がある。

 

生きているうちに、

いつか絶対行ってみたいと思う。