「ゲット・アウト」ネタバレ感想と考察【衝撃の展開!?黒人オークション開幕…】

  • 2021年3月12日
  • 2023年8月24日
  • 映画
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本記事は、映画「ゲット・アウト」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

ゲット・アウト

2017年、ジョーダン・ピール監督によって製作された作品。

人種差別問題に切り込んだ衝撃のサイコスリラー作品。

上映時間は103分。

あらすじ

舞台はアメリカ、生粋の黒人であるクリス・ワシントンは、白人であるローズと交際して5カ月目となる。

両親に紹介したいと連れられ、ローズの実家であるアーミーテージ家招待されるが、雇われていた使用人はなぜか皆「黒人」、クリスは妙な違和感を覚えるのだった。

出演役者

本作の主人公であるクリスを演じるのが、「ダニエル・カルーヤ」

イギリス出身の黒人俳優で、アメリカの有名映画等に多数出演している。

マーベルシリーズの「ブラックパンサー」や、「キックアス」「ジョニー・イングリッシュ」などのアクション作品へのキャスティングが目立つ俳優である。

クリスの恋人、ローズを演じるのが「アリソン・ウイリアムズ」

アメリカ出身の女優の一人で、映画作品よりも洋画ドラマ等への出演が目立つ女優である。

クリスの友人であるロッドを演じたのが「リル・レル・ハウリー」

アメリカ生まれの黒人俳優で、コメディアンとしての顔も持っている。

映画作品にも多数出演しているが、やはりコメディ作品根のキャスティングも多い。

 

ローズの父であり、アーミーテージ家の主であるディーンを演じるのがブラッドリー・ウィットフォード

アメリカ映画界を牽引するベテラン俳優の一人で、1980年代~今現在まで、数々の作品に出演している。

 

アーミーテージ家の妻であるミッシーを演じるのが、「キャサリン・キーナ」

こちらも御年61になるアメリカのベテラン女優の一人で、過去にも数々の映画作品に出演している。

主にヒューマンドラマや恋愛作品へのキャスティングが多い。

 

アーミーテージ家の長男であるジェレミーを演じるのが「ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ」

有名作「ノーカントリー」「X-MEN」シリーズなど、数々の映画に出演する、若き実力派俳優。

 

配信コンテンツ

「ゲット・アウト」は今現在、Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。

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ネタバレあらすじ

ネタバレあらすじを読む
舞台はアメリカ、とある地のどこかの通り、とある黒人男性が街を闊歩していたが謎の男に拉致されてしまう。

シーンは変わり、アパートで髭を剃る男性、カメラを生業とする彼は「クリス・ワシントン」黒人である彼であったが、白人女性であるローズと付き合って5か月目を迎えようとしていた。

ローズの計らいで、両親に紹介するため彼女の実家に旅行に行くことになったが、生粋の黒人である自分が、純正の白人家系に受け入れられるか不安に感じるのだった。

愛犬の世話を、親友であるロッドに任せて出発し、無事にローズの実家である「アーミーテージ家」到着する。

アーミーテージ家の人間は、全ての人が医学に携わった仕事をしていて、家も大豪邸だった。

快く受け入れられ安心感を覚えるも、使用人となる人物が全て「黒人」であることに妙な違和感を覚えるのだった。

クリスを受け入れるための「親睦会」も開催され、アーミーテージ家の人間と談笑するも、やはり「黒人」としての壁は感じてしまうクリスだった。




夜中、煙草を吸うために外に出るクリスであったが、そこで使用人たちの「奇怪な行動」を目の当たりにする。

慌てて部屋に帰るが、途中アーミーテージ家の妻であり精神科医のミッシーに諭され、「煙草をやめるための催眠術」を受けることとなる。

幼少期の記憶を掘り起こされるクリスであったが、ティーカップとスプーンの音に反応して潜在意識の中に落ちてしまう催眠をかけられてしまう。

アーミーテージ家では恒例となった、親しい人物を集めてのパーティに参加するローズとクリスであったが、そこでも奇妙な黒人男性ローガンに出会う。

彼自身とは初対面であったはずなのに、なぜか「どこかで会っている」感じてしまうクリスだった。

気になったクリスはローガンの写真を隠し撮りするも、その瞬間ローガンは鼻血を垂らし、「Get out! Get out!(出ていくんだ!出ていくんだ!)」と叫び、クリスに詰め寄る。

不安がぬぐい切れないクリスはローズにお願いし、アーミーテージ家を離れることを決意するのだった。

二人がパーティから離れる中、会場では、怪しげなオークション開かれている。

そこに掲げられるのは、紛れもないクリスの写真であった。

先ほど撮ったローガンの写真をロッドに送信すると、なんと全く別の人物であることが判明する。

ロッドはクリスの体験していることを警察に知らせに動くが、まともには相手にされることが無かった。

一方でアーミーテージ家、明朝帰る予定であったがクリスの衝動によって今すぐに帰ろうと動き出す。

アーミーテージ家の人間に囲まれるもローズは車のカギを渡さなかった。

クリスは単身、家から逃げ出そうとするもティーカップとスプーンの音に反応し、意識を失ってしまう。

目を覚ますと、地下室の椅子に全身が固定されていた。

そして、目の前のテレビが不気味に映りだす。

そこに映る老人はアーミーテージ家の豪邸の前で、「これから君を『凝固化』する」と語る。

そしてそこにはアーミーテージ家の人間全員が映りこむのだった。

そこでクリスは全てを理解する。

これから自分の体が「乗っ取られる」こと、そして黒人の使用人全てが「乗っ取られた」人間であること。

そして、意識を失うきっかけとなったティーカップとスプーンが映し出されるとまたまた意識を失ってしまう。

次に目を覚ますと、パーティで出会った盲目の老人とインカムで会話することとなる。

オークションでクリスを落札したのは彼であり、クリスの意識はこの老人に乗っ取られること告げられる。

画面にティーカップとスプーンが映し出されるが、クリスは椅子の綿がほつれていることに気が付く。

いよいよクリスの体への移植手術が行われる。

主治医はアーミーテージ家の主であるディーン、助手は長男のジェレミーである。

ジェレミーが意識を失ったクリスを運ぼうとしたその時、後ろから鈍器でジェレミーの頭を殴るクリス。

ほつれた綿を耳に詰めていたクリスはティーカップの音を聞かず、催眠に落ちてはいなかったのだった。

ディーンとジェレミー、そしてミッシーを退治し、屋敷から逃げ出すクリス、

その途中、使用人であったジョージナを轢いてしまう。

中身は違う人物であるとわかってはいるクリスであったが、情を捨てきれずジョージナを車に乗せる。

しかし車の中で目を覚ましたジョージナに襲撃され、気にぶつかり、事故をしてしまう。

事故の衝撃でジョージナは死に、歩いて逃げようとしたが、かつての恋人ローズがライフルを打ちながら追ってくる。

そして、もう一人の使用人であるウォルターに捕まってしまう。

とっさにカメラでフラッシュを炊くクリス。

立ち上がったウォルターは、ライフルを受け取るとそのままローザに発砲し、自死してしまうのだった。

ローザのは生きていて、そのまま殺そうと馬乗りになるが、その時一台のパトカーがやってくる。

状況を一見すれば、全てがクリスの犯行であると勘違いされてしまうが、パトカーから降りてきたのは親友のロッドであった。

ロッドはクリスに「だから行くなといったろ?」と語りかけられるが、返事をすることはできないのであった。

ネタバレ感想と考察

黒人差別を別の角度から切り取った衝撃作

主となるテーマはまさに「黒人差別」。

そんな問題を新たな手法でスリラー作品に仕立て上げた作品であったが、そんな「黒人」という人種をある意味「肯定的」に捉えている作品だと感じた。

本作で黒人の体の「乗っ取り」を考えた人物は、全てがその「身体能力」を考慮したうえでの「選別」となった。

そして作中の盲目の老人との会話のシーン、老人は「うらやましい」とさえ口にしている。

さらに、アーミーテージ家の長男であるジェレミーは、クリスの身体能力に対して異常なほどの興味を持っている描写も描かれた。

また、夜中の庭を疾走する使用人や、パソコンで黒人スポーツ選手に関して調べものをするローズなど、黒人の身体能力に対しては評価しているシーンも印象的だった。

本作はただの「人種差別映画」というよりは、黒人に対して「うらやましい」という気持ちを持つ目線で描かれた作品であったのが非常に興味深い脚本だろう。

数え切れないほどの伏線が大胆に回収されていくパート

本作では、一回見ただけでは気が付かないほどの大量の伏線が多数張られている。本項ではそんな多数の伏線について記述していこう。

・冒頭のクリスの部屋のシーン
 壁に掛けられた「黒いマスクを被る少女の写真」
 これは「黒人」の皮を被る「白人」を示している。

 

・鹿を跳ね飛ばし、免許証の提示を求められるクリス
 一見、ローズが「差別」に反発し、追い返したようにも見えるが、
 実際はクリスの失踪届が出された際、
 「クリスとローズが一緒に居た」証明となるのを避けるためである。

 

・アーミーテージ家で「陸上競技で黒人に勝てなかった祖父」が
 語られるが、祖父の中身は使用人のウォルター。
 黒人の体で、夜のランニングも欠かさない。

 

・同じシーンで「黒カビが酷い地下室」と発言するが、
 黒カビとはクリスのことで、
 また、「母が愛したキッチン」には、
 使用人ジョージナを乗っ取った母が居る。

 

・クリスが母親について話す際、
 ミッシーがグラスとスプーンで音を立てるが、
 これは催眠作業の下準備。

 

・アーミテージ家のリビングにある地球儀は
 アフリカ大陸が見えるようになっており、
 黒人への執着を意味している。

 

・パーティに来る来客は皆「黒い車」で来ている。
 これは「黒に乗る」=「黒人に乗り移る」と解釈できる。
 (日本ならではの解釈かもしれないが...)

 

・パーティの際、黒人のウォルターと来場者が
 熱い抱擁を交わすが、それもそのはず、
 中身はアーミーテージ家の主なのだから。

 

・クリスがイスの綿を発見できたのは、
 煙草を我慢していたストレスのおかげ。
 作中に我慢していたことによる手わすらの描写がある。

 

・逃げ出したクリスが見つけた兜は、
 冒頭で黒人が誘拐されるシーンで、
 誘拐犯が被っていたもの。

 また、この誘拐犯は長男のジェレミーだと思われる。
 クリスが捕まった際、「ジェレミーの誘拐は荒っぽい」と
 語るシーンがある。

 

・カメラのフラッシュで黒人は一時的に自我を取り戻す。
 ローガンが叫ぶ
 「Get out! Get out!(出ていくんだ!出ていくんだ!)」や
 ジョージナの「No No No...」は、クリスへの危機の警笛。

 

・乗っ取られた使用人は例外なく
 「帽子」を被っている。
 移植手術の時の頭の傷跡を隠すため。

 

・作中、ローズが食しているシリアルと牛乳、
 色とりどりのシリアルと
 牛乳に刺さった黒いストローは、
 「(白と黒は)混ざりあわない」ことを意味していた。

これでもほんの一部の伏線である。

ここからはもっとアメリカの差別問題に触れた伏線を

記述していく。




アメリカの歴史を紐解く、壮大な伏線たち

物語における映像的な伏線は前項でも記述したが、本作には、見ただけでは伝わらないようなアメリカにおける歴史を紐解くような伏線たくさんのものが張られていた。

ここからはアメリカの抱える「差別問題」についての歴史と一緒に伏線について解説していこう。

まずは旅行に向かう際の「鹿」の存在。

映画とはあまり関係が無いような鹿を轢くシーンであるが、これにも大きな伏線が張られていた。

このシーンで死亡している鹿、実は種類まで明確に伏線に織り込まれている。

種類はブラックバックのメス英語では「Black Buck」であるが、「Token Black」という黒人男性を皮肉るスラングだったのだ。

また、鹿は英語で「Deer」これは「彼女を作ろうとして失敗する男」の意味を持ち、これを「鹿狩り」と揶揄した伏線となっていた。

映画後半の椅子の綿を摘むシーンでは、19世紀初頭、大規模なプランテーション農業によって酷使された黒人たちの綿花摘みの歴史を表している。

更に、ミッシーの催眠道具である銀のスプーンが表す「上流階級の生まれ」に対するメタファーとして活用される伏線となった。

そして物語最後、逃走するクリスの車内に残された鉄兜、これが暗示するものは「白人至上主義団体 KKK」この団体が大きく絡んだ作品「國民の創生」ポスターには、まったく同じような兜が描かれている。

日本人ではわからないようなアメリカの歴史に切り込んだ伏線として、とても興味深い演出の一つとなっていた。

また、本作の監督ジョーダン・ピールが脚本を務める「ブラック・クランズマン」は、「白人至上主義団体 KKK」をプロットした物語である。

後半のB級感とどんでん返しが心地良い!

物語の中盤まで、なかなかにシリアスな人間的恐怖描かれたサイコスリラーが展開されるが、終盤で一気にアクションスリラーへと変貌を遂げる。

一見すると、展開の移り変わり方に「B級感」覚えるような作風となっているが、これがまた絶妙なバランスの脚本となっていた。

シリアスなヒューマンストーリーに「スピード感」を与えるのはいつでも「血」「アクション」主人公クリスを演じる「ダニエル・カルーヤ」が普段からヒーロー作品やアクション映画に抜擢されているのも頷けるような演技となっていた。

また、物語の最後で使用人であるウォルターが目覚め、ローズに発砲するシーンは感動を覚えてしまうほどのシーンであった。

作中でも言及されているが、体を乗っ取られた黒人たちの意識は「うっすらと残っている」のだ。

ジョージナの涙や、ローガンの「出ていけ!」のセリフ、そしてウォルターのローズへの発砲や、自死の行為には心を揺さぶられてしまう。

ローガンと対面するシーンでもクリスの口からは「よう、兄弟」という言葉も見え、黒人特有の拳を突き合わせる挨拶のシーンもある。

映画作品における、黒人同士の信頼関係はいつも純粋で綺麗な感覚を覚えてしまう。