本記事は、映画「デッド・オア・リベンジ」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。
鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。
デッド・オア・リベンジ
2015年、レヴァン・バキア監督によって制作された作品。
その名の通り「リベンジ」を中心とした人間模様を描く物語。
上映時間は105分。
あらすじ
舞台はジョージア、仲良し三人組でキャンプを趣味とするダニエル、アリシア、クリスが本日もキャンプを楽しんでいた。
恋人同士のダニエルとアリシアが仲を深める中、クリスがなんと「地雷」を踏んで身動きが取れなくなってしまう…。
出演役者
本作の主演の一人、ダニエルを演じるのが「ディーン・ガイヤー」
アリシアを演じるのが「スペンサー・ロック」
なんと彼女、バイオハザードシリーズにも出演する名女優であった。
クリスを演じるのが「スターリング・ナイト」
途中で登場する狩人、イリアを演じるのが「コート・トロルダヴァ」
ネタバレあらすじ
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- 舞台はロシア、若い3人のアメリカ人、ダニエル、アリシア、クリスが主人公。ある日、3人はロシアの山岳地帯へとキャンプに出かける。
3人とも仲のいい友達だったんだけどダニエルとアリシアは恋人関係だった。
そして、アリシアとクリスもまた、関係を持っていた。
クリスはアリシアのことが好きで何回も言いよるが、アリシアはこれを拒否して、「クリスと関係を持っていること」をダニエルには内緒にしておくようにクリスに言う。
3人が訪れたキャンプ地の大自然は、昔はロシアとの戦争地帯だった。
3人は和気あいあいとお喋りしながらハイキングをして、大きな岩の上でダニエルとアリシアの「結婚式」を行う。
一人、「式の仲人」をすることとなったクリスであったが、途中で「バカバカしい」と言って、一人でテントの設営に行ってしまう。
夜、火を囲んだ3人は腹を割って話し合う。
そしてクリスが折れて、2人を夫婦として認める。
お酒も飲んで3人は寝ようとするが、テントの中でダニエルとアリシアは営みを始める…。
そして朝、クリスが目覚めてテントから出ると、ダニエルとアリシアの荷物を漁っている怪しい男と遭遇する。
クリスは泥棒だと思って男に詰め寄るが、彼は「デビ」という名の2人の友達で、カメラを運ぶように頼まれた公園の管理人だった。
揉み合いになるクリスとデビの間に割って入るダニエル。
泥棒じゃないとわかったクリスはデビに謝るが、デビは怪訝そうな表情のままクリスと握手を交わす。
悪い空気を断ち切るように、デビは3人の写真を撮ると言い、一眼レフを構えて3人を誘導する。
前に一歩、写真を一枚。右に二歩、写真を一枚。
その時、デビは「そこに爆弾があるから動くな!」と言い放つ。
クリスの左足の下には、踏まれた状態の地雷が埋まっていた。
焦るクリスだったが、何とか落ち着かせる。
そしてデビが街へ助けを呼びに行く提案をする。
クリスが時間はどれくらいかかるかを質問すると、デビは「街までは4時間かかる」と言い返す。
それでもダビは、助けを呼ぶために街へ降りていく。
そしてダニエルはアリシアに「岩の裏に隠れて出てこないこと」を約束させる。
そして、ダニエルは何を言われても「クリスと一緒に居る」と譲らなかった。
一方でダビ、街へ助けを呼びに行ったはずが、なんと山の上から双眼鏡で3人を監視している。
そしてダニエルは携帯の電波が繋がることがわかると、アリシアに言われて、電話で助けを呼ぼうと試みる。
電話で助けを呼ぶダニエル、そしてそれを見守るアリシア、するとダニエルがアリシアに伝える。
「『アバズレは助けない』だってさ。」
ダニエルは浮気を知っていた。
地雷の一件が、ダニエルによる「仕込み」であることを知るのだった。
クリスの元に戻って、ことの経緯を伝えるアリシア、なんと、ダニエルに「浮気」のことを暴露したのは紛れもないクリス自身だった。
「本当ならもっと早く話すべきじゃ?」と、ダニエルは憤怒する。
何とかダニエルを説得したアリシアだったが、本当は電波はここまで届いていないことを話すダニエル。
電話をしている「フリ」をしてアリシアを騙していたのだった。
ダニエルはクリスに近づくと、スコップを地面に突き刺す。
そしてアリシアに「掘れよ、ビッチ」と言い放つ。
塹壕をアリシアに掘らせて、クリスの緊急避難場所を作らせようとしたのだった。
足が吹き飛んだクリスの避難場所となるか、それかクリスの墓となるか…。
「この地雷はハッタリだ!」と考えたクリスに対して、「確かめるか?」と余裕の表情を見せるダニエルは、地雷と繋がっていた鎖のピンを掘り返して、デビとグルでこの計画を立てたことを話す。
ダニエルの悪行を必死に説得するアリシアだったが、いくら言っても、謝っても、一向にやめる気は無いダニエル。
「お互いにやったことは戻せない。」
「オレの女とヤった時点で既に地雷を踏んでたんだよ!」
そう言ってピンの鎖を森の中に投げ入れる。
そして颯爽と歩き去ってしまう。
ダニエルはその後、「特等席」でダビと合流する。
「1時間楽しんだら助けよう」とダビは言うが、ダニエルが「ビールとストリッパー」を楽しむために街に降りる提案をすると、2人は街へ降りていく…。
森の中から地雷のピンを拾ってきたアリシアは、クリスを助けるためにピンを慎重に地雷にさし込んでいく。
無事にピンをさし込んだアリシアだったが、爆発しない確証は全く無い。
クリスは地雷から足を離せないままで、結局アリシアは塹壕を掘り始めることとなる。
刻々と時が過ぎたその時、山で狩猟をしていた男性、イリアと偶然出会う。
イリアにこれまでの経緯を教えて、一緒に穴を掘ってもらうようにお願いするが、これを嘲笑って、全く手伝ってもらえなかった。
銃を持ったイリア、そしてか弱いアリシアと動けないクリス。
次第に関係性はどんどんイリアが優勢になる…。
イリアは手伝う条件として、アリシアの生パンを欲しがったりもした。
生パンを貰ったイリアは2人をからかいながら穴を掘り始める。
その時、イリアの無線が鳴り響く。
アリシアとクリスはイリアが無線を持っていることに驚いて、そこに光明を見つける。
「無線を貸してほしい」と必死に懇願する2人だったが、それに対して次にイリアが言った条件は、アリシアに対して「さっきの生パンを投げて取ってくること」だった。
結局アリシアは犬のように口にくわえてパンツを取ってくる。
そして無線を貸してもらう。
一部始終を立って見てることしかできないクリスも「絶対にぶちのめしてやる」とイリアを睨みつける。
無線でイリアの仲間と連絡を取るが、ロシア語と英語で全く話が噛み合わない。
しかし、イリアはこれを黙って見ているだけ。
そして「とあるゲーム」を提案する。
それは、イリアが会話を一語訳す度に、アリシアが一枚服を脱ぐゲームだった。
結局、パンツとブラまでになってしまっても話はかみ合わず、そこで「ゲームオーバー」として、無線は諦める。
その後、少しの雑談を「訳した」として、そのブラかパンツを、イリアは脱がそうとする。
最後は持っていた猟銃で脅したりもした。
クリスが気を引いている間にアリシアを逃がして、その間に猟銃を奪ったクリス。
クリスが銃を構えると、アリシアを人質に取ったイリアがゆっくりと近づいてくる。
イリアは余裕の表情で「それは散弾銃だぞ」と教える。
ナイフでアリシアを脅しているイリアに対して、クリスは何もできなかった。
そして…アリシアをレイプする。
その時、イリアの愛犬、ビバがクリスめがけて突進してくる。
ビバに押し倒されるクリスだったが、地雷は爆発しなかったのだった。
しかし、突進の衝撃で散弾銃を発砲してしまったクリスは、アリシアを銃殺してしまう…。
目を覚ますと、クリスとイリアは2人で塹壕の中で眠っていた。
クリスの頭の中では「本物の地雷は踏んだ瞬間に爆発するんだ」と嘲笑うイリアの言葉がループしていた。
そして、横のアリシアは死亡していた…。
それからどれだけ時が経ったのか、ここはロシアのとある土地。
大自然の中で妻のターニャ、娘のリカが仲睦まじく話している。
そこに現れたのは元気になったクリスだった。
クリスは「ヒッチハイクの旅」をしているとターニャに告げて、そこら辺の土地のことを聞いたりする。
家の中に匿ってもらって、地図や暖かいスープを貰うクリス。
ターニャとリカはクリスを盛大に歓迎してくれる。
そこに一家の大黒柱が帰ってくる。
その大黒柱こそがイリアだった。
イリアは美しい妻と娘に囲まれて、一軒家に住んでいる、幸せな家族だった。
イリアは「お客さんか?」と家に帰ると、中ではクリスが歓迎されて食卓に座っている。
これを見て、イリアはフリーズしてしまう。
クリスを早々に家から追い出すイリア、意外なことにクリスはこれに飄々と応じる。
今度は完全に立場が逆転していた。
クリスの方はイリアの家を知り、妻や娘までと接触していた。
イリアは一人で悩む。
警察を呼ぼうにも、自分自身もアリシアを強姦している、しかもクリスの目の前で…。
イリアが頭を抱えているその時、家に犬のビバを抱えたクリスが駆け込んでくる。
クリスはいとも簡単にイリアへの家の侵入に成功してしまう。
ターニャとリカは犬のビバを介抱するが、イリアだけは「殺してやる!」と、猟銃を自室に取りに行く。
そして、振り返ると、クリスがサイレンサー付きのピストルでイリアの両膝を撃ち抜く。
クリスはイリアを家の中へ運びこませると、娘のリカにターニャの手足を縛ることを命令する。
イリアは「俺を殺して帰ってくれ」と懇願するが、「目的はお前じゃない」と一蹴するクリス。
妻と娘に酒を飲ませたり、リカのパンツを脱がせたりする。
そして、そのパンツを投げて、「犬のように取ってこい」とリカに命令する。
さらに、そのパンツをイリアの口の中に押し込む。
次にクリスは「とあるゲーム」をリカに持ちかける。
これはリカが服を一枚脱いだら、リカの頭へロシアンルーレット1回するというものだった。
服が無くなるまで死ななければクリアというルールだった。
そしてクリスは、興奮するイリアとターニャを前にして、リカへロシアンルーレットを行う。
一発、二発、三発…。
それでも銃は空砲だった。
そしてその恐怖から、とうとうリカはこのゲームをやることになる。
恐る恐る服を一枚脱ぐリカ、それと同時に引き金を引くクリス。
そして…リカの頭が吹き飛ぶ。
クリスもまさかそこで弾が出るとは思わず、リカの死体を目の前にして、その場で蹲ってしまう…。
ネタバレ感想と考察
二つの「リベンジ」を描いた斬新な作品。
本映画のプロット、「地雷を踏んで動けなくなった若者」という言い方をすれば、それは限りなく「ワンシュチュエーシスリラー」の映画を想像してしまう。
棺桶の中に閉じ込められたり、岩に手を挟まれたり、極限状態の中で人間がもがく姿は、いつでも映画界に旋風を巻き起こしてきた。
しかし今回の映画、「地雷を踏む」という極限状態を脚本としながら、二部構成となっていることが今までに見たことがない要素となっていた。
前半パートで描かれるのが、三角関係からのもつれから生じる「地雷からの脱出劇」、そして後半パートで描かれたのが「変態オヤジへの復讐劇」となっていた。
本映画のタイトルにも「リベンジ」と入っているだけあり、この前後半パートに二つの「リベンジ」が含まれている構成がとても面白かった。
前半で描かれるのは「浮気した男への、婚約者からのリベンジ」
後半で描かれるのが「友達(好きな女性)をレイプ殺人された男のリベンジ」である。
本作ではあくまでも「復讐劇」というプロットで二種類の物語が展開されていくが、全く色の違う二種類の脚本を一本の映画に纏めた作品で、1987年にスタンリー・キューブリック監督によって制作された「フルメタル・ジャケット」がある。
こちらも前半パートの「訓練時代」そして後半の「戦争」の二種類にわけられる造りとなっていた。
「もどかしさ」と「勧善懲悪」
この作品を観た人なのであれば、まず初めに抱くであろう感情、それが「もどかしい」である。
前半パートで地雷を踏んだクリスは、アリシアが奴隷のような扱いを受け、レイプされ、殺されるまでも黙って立っているしかない。
鑑賞者の目線からはどうしても「〜すればいいのに…」と、もどかしい気持ちにもなってしまったのではないだろうか?
この部分に関しては「映画は映画」と割り切るとして、真のテーマは後半に隠されている。
後半で描かれるのが、アリシアをレイプ殺人されたクリスの復讐。
クリスは、イリアがアリシアにした仕打ちをそのままイリアの娘にすることとなる。
この構図、まさに「勧善懲悪」の構図そのままとなっている。
実際、映画サイト「Firmarks(フィルマークス)」のレビューコメントでは、「胸糞悪い」等のコメントに紛れ、「スッキリした」などのコメントも散見されることから、そう言う感想を持つ人がいることは間違いないだろう。
「胸糞映画」として名高い本作ではあるが、後半パートでは実にスッキリとさせてくれる仕掛けが用意されているのも、本作の特徴となっていた。
しかし、人によってはこれが「やりすぎ」と感じる人も多い。
それもそのはず、罪なき娘を銃殺してしまうことにこそ、本作のダークな部分が詰まっているからだ…。
「胸糞悪さ」の真の要因…
GoogleなどのWebサイトでこの映画を検索してみると、実に多くの「胸糞映画」としての評価が出てくる。
もちろん前半パートの胸糞悪さもさることながら、ラストシーンの「イリアの娘の銃殺すること」にこそ、映画の根本が詰まっている。
ロシアンルーレットによって娘を殺してしまうクリスであるが、その後の反応が完全に「予測していなかった」反応なのだ。
「まさか本当に当たるとは思わなかった…」表情の全てがそれを物語っている。
そしてそれに関連してくるのがクリスの「若さ故の過ち」である。
元々の引き金はアリシアとクリスの浮気が原因であり、その他のあらゆるシーンでも、クリスの若さが伝わってくるような描写は多かった。
中でもダニエルとアリシアの「結婚」を仲人を蹴るシーンは「もっと大人になれよ…」と鑑賞者の誰もが感じてしまっただろう…。笑
また、この映画では「全員がクズである」という、最高にブッ飛んだキャラクター設定も組まれている。
クリスはアリシアと不倫し、その上でイリアの家族を巻き込み、娘を射殺する。
アリシアはダニエルと結婚を前提に付き合いながらも、クリスと浮気する。
ダニエルはクリスとアリシアの浮気に腹を立て、「地雷の上に誘導する」という嘘をつくやりすぎとも取れる復讐。
そして言うまでもなく、イリアもレイプ殺人をするクズ野郎だった…。
物語中の誰もが過ちを犯し、そして「リベンジ」されていく構図はもはや「皮肉」にすら感じてしまう。
それでもやっぱり…詰めが甘い映画…。
最後に本作に対しての少し辛口な意見も書いておこう。
本映画のプロットとしてはとても面白いものであるが、やはり「脚本の詰め込みすぎ感」は否めないだろう。
映画の上映時間は105分…。
二時間も無い上映時間の中で、全く色の違う物語を順番に展開していく構成は少し勿体ないと感じた。
同じ「復讐」であり、繋がった脚本ではあっても、不思議と「無関係感」を感じてしまう…この感覚は一体…?
そしてツッコミ所の多さもそうだ。
冒頭で出てきたダニエルは、映画の序盤で「ビールもストリップ」を求めて消え去ってから一切の登場が無い。
むしろクリスからの「リベンジ」がダニエルに行われるまでがセットであってほしかった…。
言い出せばキリは無いが、本作を「B級」と枠組みするならば、大変な良作であるとも言える。
実は本映画、「低予算映画」としての一面も持ち合わせていて、「ワンシュチュエーション映画」の脚本力の高さをまざまざと見せつけてくれた作品だった。