「マジカル・ガール」ネタバレ感想と考察【日本アニメが大好きな少女の数奇な人生…】

  • 2021年10月27日
  • 映画
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本記事は、映画「マジカル・ガール」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

マジカル・ガール

2014年、カルロス・ベムルト監督によって製作されたスペイン映画。

白血病に侵される、アニメが大好きな一人の少女アリシアとその父、ルイスを描いた物語。

上映時間は127分。

あらすじ

舞台はスペイン、アニメが大好きなアリシアは日本のアニメ「魔法少女ユキコ」に魅了されるごく普通の女の子だった。

父、ルイスと二人で仲睦まじく暮らしていたが、アリシアは白血病に侵され、長くない命だった。

長くない娘の願いを叶えるため、ルイスは「魔法少女ユキコ」のグッズを集めるために動き出す。

そこで偶然出会ったのが、精神を病んだ人妻、バルバラであった…。

出演役者

本映画の主人公、ルイスを演じるのが「ルイス・ベルメホ」

スペインの中年俳優であるが、あまり有名な俳優ではないようだ。

本作以外の映画作品への出演は無いようだ。

 

ルイスの一人娘であるアリシアを演じるのが「ルシーア・ポリャン」

彼女もまた、本作以外の映画作品で目にすることはない子役だった。

 

本映画のもう一人の主人公、精神を病んだ女性バルバラを演じるのが「バルバラ・レニー」

本作の出演役者の中では一番夕寝委であるのが彼女だろう。

数々のスペイン映画に出演し、本作での演技でも「ゴヤ賞」の主演女優賞を獲得している。

 

本作のキーマンとなる男性ダミアンを演じるのが「ホセ・サクリスタン」

つかみどころない謎のキャラクターを本作で演じるとともに、スペインの映画作品への出演も多い。

また、映画監督としても活躍を見せている。

 

ネタバレ感想とあらすじ

観てビックリ!めっちゃ日本のアニメなんです…。

2014年に公開された本作、プロットとしては全く新しい「日本のアニメ」を脚本に組み込んだ作品であり、架空の日本アニメである「魔法少女ユキコ」は、「サスペンス匂」を漂わせる本作の脚本にはミスマッチのようにも見える…。

そんな作品世界観の違和感を感じながらも、やはり「斬新」に映っていたのも事実だろう。

陰鬱でダークなサスペンス作品ではまず描かれることのないファンタジーアニメの描写これを一切ネタに走ることなく昇華しているのがまたすごい。

世界各国の映画マニアが観てもその独特の空気感に引き込まれる魔力のある作品であるが、こと日本人に関しては、これまた特別な感情を抱いたに違いない。

スペイン映画でありながら冒頭でガッツリ日本語のアニメOPが流れ、人形のような端正な顔立ちのアシリアからは「ラーメン」「ユキコ」「サクラ」などの、違和感しか感じない発言が聞き取れる。

物語の脚本はスペイン映画の得意とする淡々としたサスペンス作品であるのに、時折現れる「魔法少女ユキコ」の爆発力はすさまじいものであり、このギャップこそが、良くも悪くも本作の独特すぎる空気感を引き出している。

また、本作の監督であるカルロス・ベムルトは「日本のアニメ、漫画、映画作品の大ファン」であることを公言しており、あの「ドラゴンボール」のオマージュコミックを出版するほどに好きなようだ。




止まらない…監督の日本好き!!

日本が好きな海外の著名人は数多くいるが、前述したとおりカルロス・ベムルト監督もその一人である。

ドラゴンボールをはじめとするあらゆる日本のカルチャーを愛したカルロス監督は、本映画にも様々な「日本要素」を組み込んでいるのだ。

まずはなんと言っても「魔法少女ユキコ」

もちろん架空の日本アニメであるが、「魔法少女系アニメ」を彷彿とさせるネーミングや、ネーミングが充てられている。

(セーラームーン、リリカルなのは、カードキャプターさくら、あたりが元ネタのように見える…。)

ちなみに、映画冒頭でアリシアが踊るシーンの曲は、日本の演歌歌手である長山洋子のデビュー曲「春はSA-RA SA-RA」であり、これはスペインの歌手によってもカバーされている楽曲である。

アニメ以外の要素でも、バルバラが「仕事」を請け負う際の「トカゲの部屋」では、ドア上に黒いトカゲのマークが映され、これはまさに江戸川乱歩「黒蜥蜴」へのオマージュとも受け取れる。

更にエンディング曲では美輪明宏が作詞作曲した、映画「黒蜥蜴」の主題歌である「黒蜥蜴の唄」が流れるなど、監督の日本通ぶりが伺える。

「日本は第二の故郷」と語るカルロス監督であるが、決してこれは嘘ではなく、一年のうちの4ヶ月ほどは日本に滞在するほどであり、実は本作品も「魔法少女まどか☆マギカ」にインスパイアを受けたとの声もあるのだ。

 

次々と移り変わる映画の本筋とテーマ

本作の物語の最初では、白血病の少女アシリアとその父であるルイスの葛藤を描いた物語のように映っているが、それだけでは終わらないのが本作の真骨頂だろう。

物語は次へ次へと新たな物語に移っていき、点と点が線で結ばれる複雑な描写もあった。

ルイスとアシリアの「魔法少女ユキコ」のグッズを巡る物語で始まる作品であるが、次に展開されたのが、バルバラとルイスのいびつな主従関係となった。

ルイスはバルバラの弱みを握ったことによって、「グッズ」を揃えるための資金調達にバルバラを利用する。

バルバラは資金を作るために「仕事」に乗り出すが、バルバラの仕事や境遇、そのキャラクターによって、物語は全く違った物語へと変貌を遂げる。

ここで本作は初めて「サスペンス映画」の顔を覗かせることになる。

そして物語は「最終章」へと進んでいく。

ここで描かれているのが刑務所から出てきたバルバラとダミアンの復讐劇となっていた。

謎の老人ダミアンはバルバラに思いを寄せる元教師であり、作中ではバルバラを生徒として迎え、教鞭をとっていた旨も言及されている。

謎が多いままにダミアンの復讐は遂行され、あっけなく物語の幕が閉じてしまうが、「一本の映画」を鑑賞したとは思えないほどの情報量からは、これくらいのドライなラストが妙に心地よく感じてしまう。

 

映画最大の謎…「仕事」とは?ダミアンはなぜ刑務所に居た?

本作を鑑賞した人達が一番興味を抱いているであろう謎であるが、やはり「バルバラの請け負った『仕事』」だろう。

この要素によって、本作は急激にダークサイドへと落ちていく印象を受けるが、「仕事」の真相は鑑賞者の想像に任される終わり方となっていた。

これを紐解くポイントとしては、一回目の仕事を請け負う際のバルバラの傷ついた体だろう。

切り傷が生々しく残るその体は、バルバラが過去にも同じ仕事を請け負ってできた生傷が、そのまま跡となって残っているものであると考えられる。

そして「トカゲの部屋」が登場する二回目の「仕事」、これによってバルバラは全身を包帯で巻かれるほどの重体となる。

考えれば考えるほど「どんな仕事!?」とツッコミを入れたくもなってしまうが、車椅子に座った大金持ちと思われる老人がキーマンであることはわかる。

彼は大金持ちで、世間には言えない「ゲーム」をすることで世暇を消化する日常を送っていた。

バルバラが請け負った「仕事」は彼を楽しませるためのものであり、彼からすればバルバラの仕事は「娯楽の一種」であったことが浮き出てくる。

これは、男のそばに居た女性が顔色を変えてバルバラを止めているにも関わらず、その男が電話一本で承諾してしまうシーンからも読み取れる。

 

また、物語の後半に登場したダミアン。

「一見優しそうな彼はなぜ刑務所に居たのだろうか?」という謎であるが、これも映画では語られることなく幕を閉じてしまう。

彼は過去にバルバラの教師として教鞭を執っていた、そして彼女に惹かれていた。

これは映画の冒頭で幼少期のバルバラと若い教師であったダミアンのやり取りからもわかる。

物語の最初でダミアンの悪口が書かれた「メモ」を持っていたバルバラであるが、これを「持っていない」と、ダミアンをからかうシーンがあった。

そして物語の最後、ダミアンは全く同じことを「携帯電話」でバルバラに仕返ししている。

ルイスの殺害が「バルバラへの愛」ゆえに行った復讐であることは明白であるが、刑務所に入った理由にもバルバラが絡んでいる説も有力だろう。

彼が刑務所を出た後に、バルバラに懺悔するような態度で接していることや、刑務所内の彼が「出たくない」と言い放ち、バルバラに会うことを拒絶していることからもこれは予測できる。

 

謎の多い物語は、考察して予測することにこそ本当の魅力がある。

複雑に絡んだダークなサスペンスストーリーに「日本の少女アニメ」が加わった、非常に斬新な楽しみ方ができる作品となった。

不思議ではあるが、そんな要素が本作の最大の武器でもある。

その証拠に、これを読んでいる皆さんも鑑賞に至ったきっかけは、この「日本アニメ」を練りこんだプロットに惹かれたのだから…。