TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ【ネタバレありなし徹底考察】

本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。

TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ

2016年、脚本、監督共に宮藤官九郎が務めた作品。
名だたる役者、アーティスト、芸人、著名人が集結し、制作された。
長瀬智也と神木隆之介のW主演作品である。
上映時間は125分。

あらすじ

17歳の「関大助」は通っていた高校で修学旅行を迎える。
クラスメイトの「手塚ひろ美」を好いていた大助は、
この修学旅行に全てを賭けていたが、道中バスは転落事故を起こしてしまう。

大助がふと目を覚ますと、そこは「天国」ではなく「地獄」だった…。

出演役者

今作の主人公、関大輔を演じるのが「神木隆之介」

 

地獄の鬼、キラーKを演じるのが「長瀬智也」である。

 

大助が好意を抱く女の子、手塚ひろ美を演じるのが「森川葵」

 

地獄のバンド、「地獄図」のベース、邪子を演じる「清野菜名」

 

ドラムのCOZYを演じるのが「桐谷健太」である。

見どころ①「ただの青春映画と思いきや、ロックに染まった音楽映画」

本作のストーリー、「現世」や「地獄」、「天国」などの世界観が絡む、
青春コメディ映画、という括りがされるが、本筋は全く違う。
脚本のすべてに絡んでくるバンドと音楽、そこにこそ最大の見どころがあるだろう。

出演役者も、俳優、女優だけではなく、
寧ろ「名だたるミュージシャン」の方が数多く出演する作品となっている。
バンドのボーカリストとしての「長瀬智也」、有名ドラマー「シシド・カフカ」
名ギタリストの「Char」「マーティ・フリードマン」をチョイ役として起用するほどに、
大胆な使い方をしている。

ロックファンなら必見の作品だろう。

見どころ②「音楽もさることながら感動要素も強い脚本」

映画を通して鑑賞してみると、なかなかに音楽要素が強い作品に見えるが、
感動要素もしっかり練られた脚本力も見事である。

コメディが主体となる演出にもストーリー性が持たされ、
最後はしっかり回収してくる映画の作り方はクドカン節が遺憾なく発揮されている作品だろう。

伏線回収の使い方がとても上手く、
ユーモア、音楽に混ざり合い、違和感なく鑑賞者を楽しませてくれる脚本である。

配信コンテンツ

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ネタバレあらすじ

17歳の「関大助」は冴えない高校生。
好意を抱いているクラスメイトの「手塚ひろ美」に好かれるために、
興味のない「軽音楽部」に入部したり、偶然を装って遭遇したり、
はっきりしない日常を送っていた。

そんな矢先、通っていた高校で修学旅行を迎える。
ひろ美を射抜くために、この修学旅行に全てを賭けていた大助だったが、
道中、バスは崖からの転落事故を起こしてしまう。

大助がふと目を覚ますと、そこは「天国」ではなく「地獄」だった…。

地獄では「地獄図(ヘルズ)」というバンドがあたり一帯を取り仕切り、
地獄に落ちた人間たちは現世に「人間」として転生するべく、
過酷な労働と拷問に耐えていた。
地獄には数々の犯罪行為を起こした悪党たちが集まっていたが、
ただの高校生である大助はなぜ自分が「地獄行き」になったのか疑問を抱いていた。

地獄行きになる条件として「五戒」を超越して破った者が地獄に落ちると謳われていた。

五戒
不殺生戒 - 生き物を故意に殺してはならない。
不偸盗戒 - 他人のものを盗んではいけない。
不邪婬戒 - 不道徳な性行為を行ってはならない。
不妄語戒 - 嘘をついてはいけない。
不飲酒戒 - 酒類を飲んではならない。

死因がもっと重い「自殺」として判断されていた大助は「自殺なんてしていない」とキラーKに食って掛かる。
バスの転落中にバナナを喉に詰まらせ死亡した大助は「自殺」とみなされ「地獄」に落ちたのだった。
そして、大助に対して当たりが強いキラーKもまた、大助と同じく誤って「自殺扱い」とされ、
地獄に落ちてきた者であった。

キラーKはかつて、大助の通う音楽スタジオでバイトをしていたが、
電車に轢かれそうになった子供を助けようとし地獄に落ちた。
生前から大助のモラルの無いスタジオの使用方法に喝を入れるキラーKであった。

転落事故の生存者がいるとわかった大助は、ひろ美が生きている可能性を信じて、
「人間」への転生を決意するのだった。
大助は地獄で過ごしながら、「インコ」や「ザリガニ」「カマキリ」など、
数多くの転生を繰り返すが、なかなか「人間」に生まれ変わることができない。
そんな中、地獄で開催される音楽大会で優勝すれば人間に転生することができると知り、
大助はギターの猛練習に励む。
地獄の数日は現世の7年と謳われる世界で、
何度も転生を繰り返す度に、現世で成長していくひろ美を目にする大助。

ひろ美の結婚、そして出産を目の当たりにした大助は「現世」を諦め、
「天国」に居るキラーKの恋人に、生前にキラーKが作った楽曲を聴かせに行くことを決意するのだった。
閻魔大王の前で行われる最後の音楽大会、
かつての同じクラスであった「和田じゅんこ」が目の前に立ちふさがる。
見事にこれを下した大助は、無事に「天国」へと案内される。
天国でキラーKの恋人に無事に歌を届けるが、ギターも弾けない退屈を感じた大助は、
自らの意志で「地獄」に戻ってくる。

閻魔大王に「最後のチャンス」として一時的に戻った現世で、ひろ美に自分の気持ちを伝える。
その気持ちは受け入れられ、二人はキスを交わす。

その後地獄では、「地獄図」のメンバーに「鬼化」した大助が加わり、
ギターをかき鳴らす姿があった。

ネタバレ徹底考察

本当にマニアックな音楽の出演、知る人ぞ知る描写が多数出現。

本作のキーワードとして「ロック」というものがあるが、
本作では本当にマニアックな音楽の知識や、芸人の登場など、
サブカルチャー要素に全力投球の演出が無数に出てくる。

・作中の楽曲は全て、有名バンドのフロントマン「向井秀徳」が手掛けている。
・主題歌はミュージシャン「KYONO」が手掛けている。
・音楽演出として「吉田一郎」がベースを演奏している。
・有名ドラマー「シシド・カフカ」が出演している。
・チョイ役としてギタリスト「Char」が出演している。
・チョイ役としてギタリスト「マーティ・フリードマン」が出演している。
・チョイ役としてギタリスト「ROLLY」が出演している。
・チョイ役としてギタリスト「野村義男」が出演している。
・チョイ役としてイラストレーターの「みうらじゅん」が出演している。
・チョイ役として芸人、ラーメンズの「片桐仁」が出演している。
・作中のイラスト制作に「片桐仁」の作品が使われている。
・チョイ役としてピン芸人「ゴンゾー」が出演している。
・映画楽曲中の歌詞で「ジミヘン」や「カート・コバーン」のワードが出てくる。
・チョイ役としてバンド「快速東京」が出演している。
・チョイ役として「中村獅童」が出演している。
・今作における特別協力として、ギターメーカー「ESP」が監修。

また、地獄図のドラマーとしてキャスティングされた「桐谷健太」は、
今作以外でも、バンド映画「BECK」でボーカル役を務めたり、
映画「ソラニン」でもドラマー役を務めたり、音楽を題材とする映画に引っ張りだこの俳優である。

これはオマージュと考えるべきなのだろうか…?

「現世」でも活動する「地獄図」のメンバー達

作中でも神木隆之介を含めた「地獄図」のメンバーはバンドサウンドを奏でているが、
今作の公開にあたって映画公開の前日に、
なんと「ミュージックステーション」に出演している。

更に毎年5月に行われるロックフェス「TOKYO METROPOLITAN ROCK FES TIVAL」
オープニングアクトを務めるなど、リアルのライブでもパフォーマンスを行っている。

クドカンの才能冴え渡る、秀逸な伏線回収。

今作が音楽やコメディに重きを置きながら、
しっかりとした脚本で「感動」が描けていることには1つの理由がある。

それは「伏線回収」が非常に上手いことである。
主人公の大介が何度も転生を繰り返すことや、
「地獄の数日は現世の7年」という設定があることにより、
この脚本が最大限に生かされている。

映画の冒頭で与えられる情報が、
作品の後半で違和感なく伏線として発揮され、その謎を明かしていく。
それにより与えられる「感動」こそが今作の真骨頂だろう。

そこに混ざり合う、長瀬が歌う楽曲たち。
計算し尽くされたユーモア、衝撃、感動、全ての感情を揺さぶる作品はそうそう多くは無いだろう。

「想像」を描き切る美術チームと想像力を駆り立てる描写がすごい!

「現世」や「天国」「地獄」など、様々な情報が入り組む今作、
人間が「想像」でしか描けなかった世界観が全て描かれていることが、
この作品の凄いところでもあるだろう。

今まででは「想像」でしか描かれなかった「天国」や「地獄」の世界観が違和感なく演出され、
今作を鑑賞するにあたって、最大限のワクワクを与えてくれた世界観でもある。
今作の演出を担った美術チームにこそ盛大な拍手を送りたい。

さらに、「想像力を駆り立てる描写」が非常に多いのも特徴である。
人間以外の生き物に転生し、
「自分であればどうするか?」や「どんな生き物になるか?」などのワクワクする想像など、
地獄の拷問での冷や汗のかきそうな想像もできてしまう。
映画内で世界観を作り上げた上で鑑賞者に想像させる映画の撮り方は、他の作品には無い特徴である。

「天国」での「SEX」のボタンが気になり想像した男性諸君も少なくはないだろう。