「告白」のネタバレ感想と考察【少年法で裁かれない生徒への復讐劇】

本記事は、映画「告白」のネタバレを含んだ、感想と考察記事です。

鑑賞したことが無い方は、注意して読み進めてください。

「告白」

2010年、中島哲也監督により制作された日本映画。

小説家の「湊かなえ」による同名小説が映画化したものである。

娘を殺された学校教師の復讐の物語。

上映時間は106分。

あらすじ

舞台は日本のとある中学校。

シングルマザーで中学校教師である「森口悠子」は、1年B組の担任であったが、クラスのまとまりは皆無だった。

とある日、学校を去ることとなった森口はホームルームで語り始める。

「わたしの娘は死にました。警察は、事故死と判断しました。でも事故死ではありません。このクラスの生徒に殺されたんです」

出演役者

学校の担任、森口悠子を演じるのが「松たか子」

 

森口の娘である森口愛美を演じるのが「芦田愛菜」

 

森口の後任である担任教師の寺田良輝を演じる「岡田将生」

配信コンテンツ

「告白」は今現在、Amazonプライム、U-NEXT、dTV、Hulu、等で配信されている。

ネタバレあらすじ

ネタバレあらすじを読む
とある中学校の1年B組、終業式後のホームルームで教壇に立つ担任の森口悠子。そして彼女は今月で教員を退職することを宣言し、静かに語り始めた。

「わたしは、シングルマザーです。わたしの娘は死にました。警察は事故死と判断しました。でも事故死ではありません。このクラスの生徒に殺されたんです」

森口の交際相手であった桜宮は日本でも有名な「世直し先生」であったが、若いころ世界中を放浪し、荒れた生活を送っていた。

森口と交際し、森口は妊娠するが妊娠後に桜宮のHIV感染が判明した。

それを理由にシングルマザーとして教員生活を送っていたが、子供の預け先が無くなったために母一人では間に合わず学校の保健室で一人娘を預かっていた。

そして娘は殺され、遺体は学校のプールに浮いていたことを森口は語る。

ザワザワするクラスであったが、構わず森口は語り続ける。

娘を殺した犯人は2人いるが名前は明かさず少年Aと少年Bとすることを述べ、少年Aが電気ショックによって娘を殺害したこと、居合わせた少年Bが娘をプールへ投げ入れたこと、少年Aと少年Bの生い立ちなどを語り始める森口、クラスの生徒達は少年A.Bを断定し始める。

名前は伏せられていたが、生徒達には少年Aは渡辺修哉少年Bは下村直樹であることは明らかだった。

・渡辺修哉

幼少時から頭脳明晰、化学や電気工学の分野において天才的な才能を持つ生徒。
学校では無口で本を読んでばかりいるが、
家では自身で開発した発明品をアップするwebサイトを運営し、
その発明品は無害なモノもあるが、「処刑マシーン」と称した
サイコパスな発明品まで、さまざまである。

工作で作った財布防犯用の電気ショック装置を担任の森口が認めてくれなかったことに
不満を持ち逆恨みしており、そのために森口の娘を標的としたこと、
そして母親に異常な愛情があり、
離婚し遠くへ行ってしまった科学者である母に知られるために、
これらの事件を起こした。

 

・下村直樹

内気で弱気ないじめられっ子の生徒。
学校のテニス部に属していたが、部内でのいじめに遭い、退部した。
母親の異常な愛情を受け、歪んだ性格に育っていた。
ノートに「死ね」と書き殴っていたところに、
渡辺修哉に一緒に何かをしようと誘われ、森口の娘の殺害を提案した。

街で不良に絡まれた際、交番に駆け込むが、
学校から迎えに来たのが担任の森口ではなく、
他の男性教師だったことで、それまで好感を持っていた森口を恨むようになっていた。
(森口が迎えにいかなかったのは、学校でかつて起こったトラブルが原因で、
 そのような場合には生徒と同性の教師が足を運ぶというルールがあった)

 

・森口愛美(森口の娘)の殺害までの経緯

小学校時代から、犬や猫を拾ってきては「処刑マシーン」を使って殺し、
自身のwebサイトにアップしていた渡辺修哉は、母親に認められるために、
これを行っていた。
母に存在を活躍を知られたいために「盗難防止用ビックリ財布」を
発明した修哉は、その作品が、全国大会中学生の部で優秀賞を受賞した。
この受賞は新聞に取り上げられたが、
同時期に起きた「ルナシー事件」と呼ばれた、
「ルナシー」と名乗る少女による家族を毒殺した事件の方が世間に注目される。
自身の受賞がルナシー事件により霞んでしまったと感じた修哉は、
「人を殺したほうが母の関心を惹ける」と考え、それが殺害計画の始まりだった。 
助手としていじめられていた下村直樹を仲間に引き込み、標的を森口の娘とする。
直樹は以前、森口を街で見かけた際、キャラクターのポーチを欲しがる娘に、
買ってあげない森口の姿を見たことがあった。
それを聞いた修哉は以前発明した「盗難防止用ビックリ財布」の装置を、
愛美が欲しがっていたキャラクターのポーチに仕込む。
母の仕事により、保健室に待機していた愛美は、
隣の家の犬にエサをあげることを日課としていて、
その日もエサをあげるために、学校のプールから隣の家を覗いていた。
装置が仕込まれポーチをプレゼントされた愛美はそれを受け取り、開けてみる。
装置が作動し、電気ショックを受けて、愛美は気絶してしまう。
死んだと勘違いし、証拠隠滅のために、直樹は愛美をプールに放り投げる。
直前、目を覚ました愛美だったが、
「修哉でもできなかった殺しをぼくはできる」と、考えた直樹は、
迷わず愛美をプールに放り投げた。

警察を「事故」として処理をしたが、事件性を嗅ぎつけた森口は二人に詰め寄る。
森口に真相を問われた修哉はあっさり犯行を認め、
窓から飛び降りる振りをしてから「なーんてね」と笑い、
悪びれない素振りを見せた。

そして家族と一緒に面談をした直樹は、
犯行を認めたが、「可哀そうに」と繰り返す母親の元で黙っているだけだった。




そして森口は語る。

「少年法」に守られ保護観察処分となるのは明白なので、その事実を警察へ通報する気はない。

そして先ほど犯人である2人の昼食の牛乳の中に、HIVである娘の父親の血液を混ぜた。

教室は騒然となった。

その日から、二人の「イジメ」が始まる。

クラス全員に「この事件のことを外に漏らした者は少年Cとみなす」と、メールが届き、二人へのいじめ行為を行うごとに各生徒のポイントが加算されていく。

修哉は学校へ来ていたが、直樹は引きこもりとなってしまう。

壮絶ないじめを受ける二人であったが、イジメの標的は飛び火する。

ずっとポイントが0であった北原美月が、HIVの疑いのある修哉と、無理やりキスをさせられる。

北原美月は以前から修哉に好意を抱いており、クラスで唯一、いじめに加担しなかった。

その夜、修哉は美月を呼び出す。

そしてHIVの検査結果が「陰性」であった証明書を見せる。

そこから修哉と美月の交際が始まったが、修哉は「ルナシー」を信奉している美月を内心では軽蔑し見下していた。

一方、直樹は牛乳の件によって精神に変調を来し引きこもってしまう。

家では、自分の触ったものは異常なほど磨き上げ、風呂に入らず、家族との接触も拒んだ。

新年度から森口に代わって担任となった熱血教師の寺田が、委員長の美月を引き連れて頻繁に直樹の自宅を訪問した。

その行為が一層直樹とその母を追い詰める。

母は直樹を溺愛しており、かつて森口が訪問して娘をプールへ投げ入れたのは直樹だと伝えた際にも、ひたすら直樹だけを憐れむ態度を見せていた。

森口の娘は電気ショックでは死んでおらず、目を覚ました後に自分がプールへ投げ入れ故意に殺害したことを話すと、母は直樹との心中を決意する。

母は包丁を直樹に突き立てるが傷は浅く、逆に直樹が包丁を奪い母を刺殺する。

直樹の事件で寺田とともに警察の事情聴取を受けた美月は、寺田が直樹を追い詰めた悪いのは寺田だと糾弾する。

ある日、寺田と森口がファミレスで同席しているのを偶然見かけた美月は、寺田が退店した後森口の席を訪れると、修哉は母に捨てられた哀れな境遇で母の気を惹きたくて必死であり、悪く思わないで欲しいと訴える。

森口は寺田が休職すること、相談を受けるふりをして意図的に寺田をけしかけ直樹とその母を追い詰めていたこと、修哉を許すつもりはないことを告げる。

ある日、修哉のサイトに母の名前で連絡先と研究室の所在が書き込まれ、修哉は嬉々として「発明品」の数々を抱えて大学を訪ねるが、母は新たな夫との新婚旅行中で不在で、さらには妊娠中であることを知る。

自暴自棄となった修哉は、唯一の理解者だった美月をも殺害しバラバラにする。

そして、今回賞をもらった「命」についての作文を発表することになっている終業式の日に、自身で発明した爆弾で自分もろとも爆破し、生徒や教師を道連れにすることを計画する。

前日の夜、教壇の上に爆弾を仕掛け、一連の犯行と終業式での犯行を予告する動画をサイトにアップする。

そして終業式当日、修哉は舞台上で作文を読み終え、拍手を浴びながら満足気な表情で爆弾を起爆するため携帯電話のボタンを押すが、何も起こらない。

慌てて演台の下を確認すると、前夜に設置したはずの爆弾がなくなっていた。

そこへ森口からの着信が入り、森口は語り始める。

爆弾は修哉の母の研究室に置いてきたという。

修哉のサイトに母の名前で書き込みをし、修哉が母の研究室を訪れるよう仕向けたのは森口だった。

自分が母を殺してしまったことに半狂乱となった修哉のもとに森口が現れ、涙を流しながら「ここからあなたの更正の第一歩が始まるんです」と声をかける。

そして最後に呟く。「なーんてね」

ネタバレ感想と考察

脚本に負けない演出と演技力!!

今作の作品は有名小説家、湊かなえの同名小説が原作であるが、小説のころから話題騒然となった作品だった。

そんな小説で語られるインパクトをどう映画に反映するかが今作のキーとなっていた。

そんなハードルを越えてくる作風演出、そして役者の演技力こそが、今作一番の見どころだろう。

独特なカメラワークや、挿入されるBGM、その演出のすべてが今作の脚本に負けないようなインパクトを放つ作品となっている。

 

本作の本筋こそが人気の秘訣!?

今作は娘を殺された教師の復讐物語として描かれる作品であるが、中学生達は「少年法」に守られている。

そんな彼らと教師はどうなっていくのか?という、誰もが気になる脚本こそが物語の本筋であり、人気となった秘訣だろう。

簡単なあらすじを聞くだけで観たくなるような作品であり、その期待を裏切らない脚本。

これから観ようと思っている人は、ここから先の「ネタバレ」を見るかどうか、今一度考えてみてほしい。




脚本を盛り上げる、トリッキーなストーリー構成

今作の映画、一番の特徴的な部分、それは何と言ってもその映画の構成だろう。

冒頭の30分で犯人を述べ、そしてそこからの1時間30分どんな事が起きるのか、期待に渦巻く雰囲気の中、飽きさせない展開で物語は進む。

そして各キャラクターのそれぞれの境遇が描かれるチャプターごとの進行。

これによりインパクト溢れる脚本の魅せ方がより一層強く感じている印象を受けた。

そのチャプターで描かれる「キャラクターの語り」という手法もなかなか新しく、映画ながら小説をリスペクトしているような書き方は新しいタイプの映画と言えるだろう。

今作の映画は小説としても話題となり練り込まれられた脚本が人気となったが、そんな人気小説の映画化ということもあり、期待と不安が高まっていた。

これを名監督、中島哲也監督は悠々と超えてきた。

過去にも「嫌われ松子の一生」や「下妻物語」などの、クセの強い独特な作品を作り上げてきた彼しか作ることのできない作品として仕上がった。

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「犯人捜し」ではどこか物足りない、本筋は「勧善懲悪」

「告白」の初見が小説ではなく「映画」の人は誰しもが思うことととして、冒頭の物語を観て、本筋が「犯人捜し」であると誰もが思うことだろう。

しかし、真実はそうではない。この物語は「復讐」の物語である。

「必殺仕事人」や「水戸黄門」で描かれる「勧善懲悪」こそが、本作のメインであり仕掛けられたトリックである。

冒頭だけを観れば、少年法に守られる犯罪者を描く「胸糞要素」が強いイメージだが、見進めると印象がだいぶ変わってくる。

HIV血液混入のくだりで、ある種の「快感」を感じた人も多いはずだ。

そんな、法で裁くことのできない人間に制裁を加えるストーリーを、序盤から描かないことも中島哲也監督独特の手法だろう。

しかしながら、最後に呟く森口の「なーんてね」の意味する言葉は、「更生の第一歩であること」に対しての言葉にも、そして「実際は爆弾を研究所に仕掛けていない」とも受け取れる。

真実は作中は描かれないが、「更生」もテーマの一つであることは間違いないだろう。

また、小説では真実と捉えて良い描写がある。(詳しくは最後に記述しよう)

現代の問題を独自の目線で取り上げる脚本

世の中の映画には、いくつもの社会問題を取り上げた映画がいくつもある。

そんな中今作でも取り上げられた社会問題は数多く、現代の日本映画ではトップクラスと言ってのいいほどの多くのテーマが練りこまれている。

・「少年犯罪」
これは誰もが気が付く内容であり言及するまでもないだろう。

・「少年法」
これも物語で描かれる重要なワードの一つである。

・「HIV」
性的接触を通して拡散されるこの病気も、現代では重大な社会問題である。

・「児童虐待」
幼少期の修哉はこれを受けて歪んだ性格となる、今でも蔓延る重大な社会問題である。

・「モンスターペアレント」
直樹の母は、殺人を犯したにも関わらず、直樹に対して「可哀そうに...」を繰り返す。
目の前に被害者がいるのも関わらずのこの発言はどう考えても異常。
こんな形でキャラクターを描いてることも、
問題意識として社会に対して投げかける内容の一つだろう。

・「マスコミ問題」
これに気がついた鑑賞者は少ないのではないだろうか。
事件の発端でもある新聞記事、これを受けて修哉は犯行に及ぶが、
いい記事より、悪くインパクトの大きい記事が取り上げられてしまう、
昨今のマスコミ事情も、隠れて問題として取り上げられているのも、
面白い取り上げ方だろう。

・「静岡女子高生母親殺害未遂事件」
作中にあった「ルナシー事件」、実はこれに、モデルとなった事件が存在する。
それが2005年に起きた静岡女子高生母親殺害未遂事件である。
静岡県の高校一年生(16歳)の女子生徒が逮捕されたこの事件は、
母親に劇薬タリウムを飲ませ、母親が弱っていく様子をブログにアップしていた。
という事件だった。
原作小説と映画の相違点について。

こんな社会問題やリアルの事件すらも取り入れられた今作品の小説版も、原作とは少しだけ違った内容となる。

例えば、原作ではもう少し森口の憎悪のモチベーションが高く描かれている。

そして、「なーんてね」は原作では描かれず、「爆弾を作ったのも、スイッチを押したのもあなた自身です。これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だと思いませんか?」とのセリフで終わる。

とどのつまり、この言葉は「爆弾は仕掛けた」と考えていいだろう。

そんな映画作品との違いも楽しめる小説も読んでみるといいだろう。