本記事では、
前半で、映画紹介&見どころレビュー
後半で、ネタバレ解説&徹底考察を行います。
「下妻物語」
2004年、中島哲也監督により制作された映画。
茨城県下妻市を舞台とした二人の女子高校生の青春映画である。
2002年に嶽本野ばらにより発行された同名小説が原作となる。
上映時間は102分。
あらすじ
舞台は茨城県下妻市。
見渡す限りの田園風景の中に一人の女子高生が住んでいた。
彼女の名は「竜ヶ崎桃子」
ロリータファッションをこよなく愛する彼女は定期的に東京の代官山まで、
洋服を買いに通っていた。
そんなある日、彼女は小遣い稼ぎのために父親が所有していた、
ファッションブランド「ベルサーチ」の偽物の洋服をフリーマーケットとして、
雑誌に出品する。
その雑誌を読み、売ってほしいと声をかけてきたのが、
近くに住む、同い年の高校生「白百合イチゴ」だった。
イチゴは高校生ながら、レディース(暴走族)に属しているヤンキー気質で、
桃子とは性格、趣味、生い立ち、全てが正反対だった。
二人はこの出会いをきっかけに友情で結ばれていく。
出演役者
主人公である竜ヶ崎桃子を演じるのは「深田恭子」
もう一人の主人公、白百合イチゴを演じるのが「土屋アンナ」
元ヤクザである桃子の父を演じるのが「宮迫博之」
桃子の母を演じる「篠原涼子」
桃子の祖母を演じるのが「樹木希林」
見どころ①「コミカルな作風とそうそうたる顔ぶれのキャスティング」
本作の作品、「嫌われ松子の一生」も手掛けた中島哲也監督の作品であることもあり、
コミカルに物語が描かれる。
正反対の二人の女子高生が友情を深めていく描写は万人に受け入れられるような構成であり、
少しブラックなギャグも差し込まれ、心地よいバランスがとれた映画であるだろう。
そして今作の登場役者、
そうそうたる顔ぶれの芸能人が多数出演し、
その幅は主役~チョイ役まで、全力でコミカルなギャグの演技に貢献する。
大物芸能人をこんな使い方をして映画を撮るのは中島監督ならではの演出だろう。
何より、
主役を演じる二人である「深田恭子」と「土屋アンナ」が可愛すぎる。
この二人の美貌にくぎ付けになる作品だろう。
見どころ②「茨城県民必見の映画、完全リアルな舞台設定」
今作はもちろん日本での作品となるが、舞台として設定されている下妻市との
連携がしっかりとれた作品となっている。
作中での、「牛久大仏」や「下妻、土浦ナンバーの車」、「ジャスコ」までもが
登場し、下妻市との連携がしっかり伝わってくる作品となるだろう。
また下妻で有名な「貴族の森」という喫茶店も今作には登場し、
作中の店舗そのままに実在している。
配信コンテンツ
今現在、「下妻物語」は、
Amazonプライム、U-NEXT、等で配信されている。
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※ここからネタバレ解説
物語は主人公である「竜ケ崎桃子」は兵庫県尼崎市で生まれた。
元ヤクザである父親と母親と暮らしていたが、小学校の時に
両親は離婚していた。
「面白そうだから」という理由だけで父親の元で暮らしていたが、
ブランド品の偽物を売りさばく仕事が版権元に目を付けられ、
父の故郷である茨城県下妻の実家に転がり込む。
高校生である桃子は家にあった偽ブランド品をきっかけに、
イチゴと知り合い、イチゴは竜ケ崎家に出入りするようになる。
ある日、イチゴは所属するレディースチームの総長が引退することを知り、
引退の際に「亜樹美さんありがとう」というメッセージを特攻服に刺繍し、
送り出そうと考えていた。
刺繍の資金集めのために桃子を無理やり誘いパチンコ店に行くが、
桃子だけがビギナーズラックで大勝ちし、店員に怪しまれるが、
龍二という下っ端の極道に助けられ、イチゴは隆二に恋をする。
後日、桃子に案内を頼み、代官山の伝説の刺繍店を探すが、なかなか見つからない。
同日、同じ代官山の桃子の通うロリータファッション店で、
自身でアレンジしたボンネット(帽子)をデザイナーである社長に褒められる。
結局、伝説の刺繍店は見つからず下妻に帰るが、
駅で「私に刺繍をさせてほしい!」とイチゴに頼み込む。
快諾してくれたイチゴは命同然に扱う特攻服を桃子に預けてくれる。
不眠不休で刺繍に勤しみ、ついに特攻服の刺繍を完成させる。
イチゴはこの上ないくらいに喜び、ここから二人の絆は深まった。
総長の引退の送り出しは成功するが、総長の引退の理由は、
イチゴが恋をしていた龍二との結婚のためだった。
河原で、初めての失恋に涙を流すイチゴに、桃子は寄り添っていた。
そんなある日、先日訪れた行きつけのロリータファッション店から一件のメールが来る。
桃子の刺繍の才能が見込まれ、新作ドレスの試作品への刺繍を頼まれる。
これを了承するも、緊張と迷いでなかなか刺繍が進められない。
迷いの中、桃子はどうしてもイチゴに会いたくなりイチゴを呼び出す。
チームの集会があったイチゴであったが、友を重んじて、
集会をバックレて桃子に会いに行く。
集会に参加しなかったイチゴは「ケジメ」としてリンチを受けることを
宣告される。
一方の桃子は「ケジメ」の意味を父から聞き出し、
イチゴの元へ駆けつけることを決意する。
新作ドレスの受け渡し日であったが、友を優先するべきと社長から言われ、
乗ったことのない原付に乗り、集会が開かれる「牛久大仏」へと向かう。
途中、軽トラにはねられるも奇跡的に無傷だった桃子は無事に牛久へとたどり着く。
チームのメンバーに取り囲まれたイチゴの元に駆けつける桃子。
桃子は今までに見せたことのない迫力の尼崎弁とハッタリにより、
リンチをくらうイチゴを救出する。
イチゴのバイクに二人で乗り、帰宅する二人は友情を確かめ合う。
その後、桃子は刺繍の仕事を請け負うようになり、
相変わらずロリータファッションを楽しみ続け、
イチゴはロリータファッションのモデルとして仕事の依頼が来るも、
それを嫌がり、土浦のモータースでバイクいじりと走りを楽しむのであった。
ネタバレ徹底考察
語り手によるわかりやすい進行と映画の構成
今作の下妻物語、ストーリーはやや難解な構成であるにもかかわらず、
とてもわかりやすく観れる作品となっている。
その正体は「語り手」の存在であろう。
今作の語り手を務めるのは主人公の桃子演じる「深田恭子」
物語のターニングポイントごとに挿入される彼女の語りは、
難解なストーリーを簡潔にまとめてくれるのに必要不可欠な存在と
なっただろう。
また今作ではCGやアニメの描写も多く登場し、
より「物語感」が増しているような作風になっているように感じる。
中島哲也の世界観溢れる、独特な作風
今作の監督、脚本両方を手掛けたのが「嫌われ松子の一生」も、
描いたことで有名な中島哲也監督である。
中島監督独特なコミカルに描かれるギャグシーンが、
映画として楽しめている大きな要因の一つだろう。
今作で注目してほしいのは「笑いのさりげなさ」である。
出演役者としても芸人も多く、それらの役者のさりげない言動に、
思わずクスッとしてしまう。
個人的に面白かったさりげない笑い ・多量の嘔吐物をマーライオンの如くぶちまける篠原涼子 ・宮迫の指を詰めるシーンでの「ピアノ弾けなくなってまう~」 ・皆ジャージを着ているという、尼崎に対するディス ・樹木希林の無言で虫を捕まえるくだり ・幼少期の桃子演じる福田麻由子による、母親への説教 ・桃子とイチゴのケンカをさりげなく覗くスピードワゴン
これ以外にも数多くの笑いを誘うポイントが登場するが、
これらのシーンにはツッコミが全く無く、何事もなかったかのように物語が進行してしまうことが、
面白さの要因なのかもしれない。
人気の秘訣は「百合要素」!?視聴者自身も気が付かない欲望
今作で描かれるのは二人の友情物語であるが、
人気の要因はその友情にこそあるだろう。
簡潔に言ってしまえば「百合要素」である。
女性同士の恋愛というのはとても美しいもので、
それは「恋愛」という枠に収まらず、友情でも成立してしまう。
主役の二人が容姿端麗な「深田恭子」と「土屋アンナ」であり、
正反対な性格のキャラクターを演じていることも影響し、
その、百合に近いようなディープな感情も満たしてくれることで、
視聴者が求める展開を作り上げ、心を掌握される。
それは自分自身すらも気が付かないままに、である。
また、原作となった嶽本野ばらによる小説版「下妻物語」では、
映画版と少し違うストーリーとなっている。