「ダークナイト ライジング」
2012年、クリストファー・ノーラン監督に
よって制作されたヒーロー作品。
DCコミックスのキャラクター
「バッドマン」が実写映画作品と
なったもので、
「ダークナイト三部作」の
最終章に当たる作品。
上映時間は164分。
あらすじ
宿敵「ジョーカー」との対決から8年、
バットマンの消えた世界で
ゴッサムシティは平和な日常を
取り戻していた。
地方検事の「ハービー・デント」が
英雄として称えられ、
バットマンがデントを殺した犯人であり、
「悪者」として認知されつつあった。
そんなある日、とある男「ベイン」が、
ゴッサムシティを破壊するために
悪事を再び働き始める。
そしてベインは、
バッドマンと同じ「影の同盟」の
出身だった…。
ネタバレ感想と考察
前作を観ることを前提とした作風。
映画において、新作が公開され
確実に安定した客足の期待できるスタイル、
それこそが「シリーズモノ」である。
かの有名な
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や
「ターミネーター」など、
1.2.3とシリーズを重ねてきた作品の中にも、
超人気のシリーズは数多く存在する。
そのどれもが前作を観ていなくても、
″それなりに″楽しめる作品ではある中で、
本作の「ダークナイト ライジング」は
前作を観ていることを前提として作られた、
ゴリゴリの続編映画となった。
物語の「起」における、
バットマンの状況や
ハービー・デントの死などの、
重要な情報が盛り込まれ、
「承」で起こされる「事件」や、
その主犯格「ベイン」の過去など、
1作目の「バットマン ビギンズ」
2作目の「ダークナイト」を周到した
作風に仕上がった。
本作がシリーズ初見の鑑賞者であれば、
本当に長く感じる160分間であっただろう…。
シリーズを跨ぐ「伏線」の数々に圧倒される。
前述した通り
シリーズ同士が深く根付いた本作、
そんなシリーズを跨ぐ伏線が
遺憾無く放出された作品でもあった。
ベインの正体が「影の同盟」であることは
正しく1作目の「バットマン ビギンズ」での
伏線であったり、
2作目「ダークナイト」で、
レイチェルからの手紙を燃やした
アルフレッドの行為の真相など、
なかなかに重大に張られた伏線達が
どんどんと回収されていく
集大成的作品となった。
中でも、今までバットマンの正体を
知らなかったゴードン本部長が、
バットマンの正体がブルースであるとわかり、
少年時代のブルースと接点があった点は
鳥肌が立つような伏線の楽しさを
与えてくれた。
「平和」がマイナスに描かれる不思議な冒頭。
物語の「起」に当たる部分であるが、
ヒーロー作品において求められる
「平和」という概念が
何故か「負」の作風で描かれているのが、
非常に面白い。
バットマンが
ゴッサムシティから居なくなり、
足を負傷し引きこもりになった
主人公「ブルース」が描かれ、
ここまでバットマンと共に戦ってきた、
刑事の「ゴードン」も
不必要な存在とされ、
家族とも別居している状況が描かれる。
ヒーロー映画の始まりとしては、
ここまでに踏み込んだ脚本は
ある意味冒険だっただろう。
「事件」や「悪人」の存在を
肯定し、そこでバットマン達が
動き出す事となるが、
バットマンシリーズらしい
物語の幕開けに、
これが楽しめた鑑賞者も多い。
コミックスの伏線も張られていた作品。
本作シリーズの原作に当たる、
DCコミックスのバットマン。
これにはバットマン以外にも
仲間キャラクターが存在するが、
本作では、そんな仲間キャラクターも、
漫画とは違う形で登場する事となる。
まずは本作の女スパイ
「キャットウーマン」、
そしてなんとも面白い形で登場したのが、
「ロビンマスク」である。
本作の映画の中で、
「ゴードン」の代わりとなり、
バットマンの右腕として動いていた
刑事であったが、
物語のラストにやっと本性が
明かされることとなる。
作中に名乗っていた名前が偽名であり、
本名が「ロビン」ということを明かされ、
ブルースに諭され、
「2代目バットマン」としての
活躍も匂わせつつ幕を閉じることとなる。
「ロビンマスク」としての活躍は
無かったものの、
本名が「ロビン」である設定は
確実に漫画版バットマンの
オマージュ要素であるだろう。
血なまぐさいアクションシーンが一番多いシリーズ
前作「ダークナイト」では、
肉体的には全く強くないキャラクター
「ジョーカー」が、最大のが悪役として
描かれていたが、
本作では逆に、
ゴリゴリの肉体派キャラクター、
「ベイン」がボスとして現れる。
結局バットマンがこのベインに
肉弾戦で勝てることは無かったが、
そんな血なまぐさいアクションが
多いようにも感じられた作品だろう。
ロープやワイヤー、
武器を用いたアクションではなく、
拳と拳のぶつかり合いが、
描かれた演出には、
不満を感じる鑑賞者も居たことも
事実だろう。
しかしながら、バットマンシリーズ特有の
最先端技術やバイク、車など、
様々なハイテク機器が登場する演出は
前回同様、期待を裏切らないワクワク感を
魅せてくれていた。
「衝撃の結末」感は期待を裏切らなかった。
ゴッサムシティの破壊を止めるべく、
ベインと戦うバットマンであったが、
その真の敵は「ベイン」ではなく、
ブルースの仕事仲間の「ミランダ」であった。
まさかまさかの
予想不能な黒幕の存在に、
期待を裏切らない「裏切り」を見せてくれた
脚本となった。
前作シリーズでも、
「ヒロインの死」が描かれ、
予想を裏切る圧倒的なバッドエンドを
見せつけてくれたが、
本作シリーズでは
シリーズ初の「完璧なハッピーエンド」が
描かれるのも新しく感じるほどの、
不思議なシリーズの幕引けとなった。
有名俳優に更に名俳優を重ねていく作品。
本作の登場する役者たち、
シリーズにひき続き
数々の有名役者が登場するが、
従来の作品に加え、
更なる有名役者たちが
登場する作品となった、
主役の「クリスチャン・ベール」を初め、
「モーガン・フリーマン」などの大御所役者、
中でも宿敵「ベイン」を演じた「トム・ハーディ」は
本人らしさを微塵も感じさせない
怪演をしてくれた。
余談ではあるが、
本作の「ジョン・ブレイク(ロビン)」を演じた、
「ジョセフ・ゴードン=レヴィット」は
同監督クリストファー・ノーランの作品、
「インセプション」でも出演し、
ブルースの執事役「アルフレッド」を演じた
「マイケル・ケイン」も
「インセプション」「インターステラー」や
「テネット」など、
ノーラン監督の数々の作品に
登場する。
彼の信頼のおける俳優たちを集め、
作り上げた作品でもあるようだ。
また、これも余談ではあるが、
本シリーズ、筋肉ムキムキの「バットマン」を
演じたクリスチャン・ベールは、
「マシニスト」という映画で
ガリガリの「摂食障害」の主人公も演じている。
「役者魂」というものは本当に凄い…。